第134鱗目:調理実習!龍娘!

「にんじん〜じゃがいもたま〜ねぎ〜♪」


「あら、上機嫌ね鈴。そんなに楽しみだったの?」


「うん!やっぱり料理は楽しいからね!それじゃあ始めようか!」


 僕は上機嫌でそんな歌を歌いながらエプロンに袖を通すと、キュッとリボン結びで後ろを留めて皆へと笑顔で振り向きそう言った。

 そう、今日は楽しみにしていた家庭科の調理実習なのである。


 ーーーーーーーーーーー


「ん、いい感じになった、後は煮込むだけ。それじゃ今のうちにデザートのプリンを作らねば!」


 あー忙しい!でも楽しい!


「天霧さん活き活きしてんなぁ」


「あいつよく料理作ってるんだよ、ほら得意なのってテンション上がるだろ?」


「なるほどなぁ……んで、どうしてそんな情報を知ってんのかねぇ〜隆継クゥーン?まさか天霧さんとリアが充してるような関係イィッタァッ!?」


「んなわけないでしょ、ほらあんたらも手を動かす。とりあえず今のうちにアタシが下準備を整えたハンバーグの種こねときなさい」


「「はーい」」


 ナイスさーちゃん、いい感じにチョップ入ってたし南くんだけ肉なしハヤシはやめといてあげよう。というかさーちゃん少し不機嫌そう?


 僕はさーちゃんにチョップを入れられた南くんを見てそう考えつつ、器用に片手で卵を割りながら同時並行で必要な量の牛乳を測り始める。


「それにしても天霧さんってやっぱりいいよなぁ」


「というと?」


「まず可愛い!すっげぇ可愛い!それに可愛い!」


「可愛いしかねぇじゃねぇか!というか本人に聞かれてるだろうによく堂々と言えるな京也」


「ふふふふふ、こう言っとけばもしかしたら付き合ってくれるかもしれないだろ?」


 とりあえず多分僕がそんなことになるなんて事は一生ないから安心したまえ南くん。まぁそれはそれとして…………


「次そんな調子に乗ったこと言ってるの聞こえたら南くんのプリンにだけ塩かけるからね?しかも少しじゃなくてどばーっと」


「す、すんませんした…………」


「よろしい」


 笑顔で圧をかけながらそう僕は南くんに言って釘を刺すと、南くんの返事を聞いて満足気に頷いて再びカシャカシャと卵をかき混ぜ始める。


「でも天霧さんってほんとスゲーよなぁー」


「そうか?」


「そうに決まってんだろ。こんなご時世に明らかに人じゃなくなったってのに、当の本人はあんなにも元気いっぱいに普通の生活を送ってんだ。それが凄くないわけが無いだろ?」


「ちょっ……南くんいきなり何を───────」


「あー、確かに言われてみれば。普段何気なく至って普通にしてるからかしらんけど、話してたり遊んだりしてる間は翼とか尻尾があるのが思考の外にあるんだよな」


「わかる、わかりみが深すぎてマリアナ海溝」


 あーもう、最後のはよくわかんなかったけどなんかすごい気恥かしい……とりあえず話が一段落したみたいだからいいものの、2人には勘弁して貰いたいものだよ…………


「でもまぁそういうの抜きにしても天霧さんを総括すると────」


 まだあるのっ!?


 もう大丈夫だと安心しきっていた僕は、南くんがまだ何か言うようなセリフを言ったのを聞き、勢いよくそっちに振り返る。


「すっげぇ可愛いってなるな!」


「─────っ!」


「あっ!あでっ!ちょっ!天霧さん何っ!?」


「うぅぅぅぅぅぅ!!」


 このっ!このーっ!


「ごめん!ごめんなさい!調子に乗りました!謝るから許してー!」


 顔を赤くして頬を膨らませながら僕はぽかぽかと南くんの背中を叩くのだった。

 その後、なんとか完成した料理はとても美味しく出来ていたが、南くんによそった分のハヤシライスが他より少し多かったのは皆には秘密だ。

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