第128鱗目:僕のご飯!龍娘!

「んんぅ…………んー…………後5分……」


 お、寝てる寝てる……それじゃあ………………


 カンカンカン!


「起きろー!」


「うわぁああぁぁ!?なっなにっ!?なんなんっ!?」


「朝だよー!起きてー!」


 充分に日も登り明るくなってきた朝の7時、胸の所ににゃんこうのパッチワークが施された青いエプロンを着た僕はフライパンをお玉で打ち鳴らしていた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやぁーびっくりしたで、ほんま、冗談抜きで」


「ごめんねとらちゃん。なかなか起きないからつい……」


 とらちゃんには悪かったけど……アレ、隆継の漫画で見てから1回やってみたかったんだよね〜!

 一応少し煩い程度に力加減はしたし大丈夫だよね?


「夕ご飯はとらちゃんが好きなの作ってあげるから、ね?」


「仕方ないなぁ、そこまで言うなら許すに決まっとるやん!というわけで唐揚げよろしく!」


「はいはい、それじゃあ丹精込めて作んなきゃね」


 朝ご飯を終え、僕達は雑談をしながらもそれぞれ片付けや勉強の準備に取り掛かっていた。

 そして僕達はそんな今朝の事を話しながら、カチャカチャと皿洗いをしていた。


「いよっしゃ!おーし、午前中で宿題終わらせるでー!」


「ふふっ、その調子その調子。さてもうお皿も洗いおわるしー──────────」


「鈴ちゃーん」


 ん?この声、というか呼び方はちー姉か。お弁当は作ってあげてるし……何か用かな?


「なーにー?」


「まだアレ残ってるー?」


「あー、アレねー。確かアレはー……」


 昨日食べた時に袋の半分くらい残ってたから〜……


「後多分30個くらいかな?追加頼んでていい?」


「もとよりそのつもりで聞いたから任せといて、それじゃあ行ってくるねー」


「ん、行ってらっしゃーい。今日も頑張ってね!」


「うん!頑張ってくる!いってきまーす!」


 ピッピッと手に着いた水を飛ばしてタオルで手を拭いた僕は、そう言って今日も今日とて日医会の本部へと出勤するちー姉を送り出す。


 僕のせいとはいえちー姉が休日に日医会に出ないといけないのは申し訳ないなぁ…………いや、申し訳ないじゃなくて、ここはありがとうって思うべきだな。


「いつもありがとうございます……」


「千紗さんも大変やけど、こんなに感謝されてるなら働いてるかいがあるってもんやろうなぁ」


「う、うるさいなぁもー……ほら、皿洗い終わったしもう勉強始めるよ」


「はーい。所ですずやん」


「まだ何か?」


「さっき千紗さんがアレって言ってたけど、アレってなんなん?」


「おっといけない忘れてた、ありがとうとらちゃん。それでアレって言うのはねぇー……」


 とらちゃんにアレが何かを聞かれ、僕は忘れかけていたアレをついでに見せてあげようと、いつも置いてある場所から袋を取り出す。


「アレって言うのはこれの事だよー」


「これって……水晶?」


「そそ、天然の水晶ー。美味しそうでしょ」


「うん、とっても綺麗で──────ん?美味しそう?」


「棚から出したし今日の分は食べちゃおう、頂きまーす」


「えっ、ちょっ、すずやんっ!?」


 お、今日のはいつものより歯ごたえがある。

 そんでもって味わいはクリーミーで後を引かないあっさりとした甘さと共にすーっと鼻を抜ける清涼感が─────


「すずやんな、なにっ!何食べてっ!食べたぁ!?」


 うおぉ……びっくりしたぁ……というかなんかとらちゃんすっごい驚いてるんだけど……


「とらちゃんも食べる?」


「食べる?じゃなーい!」


 ごっくんと口の中にある水晶を飲み込んだ僕は、とらちゃんが何故こんなに驚いてるのかが分からず、少しの間首を傾げていた。

 そして一連の自分の行動を思い返し、何にとらちゃんが驚いたのかをようやく理解した僕は、プチパニックになっていたとらちゃんを約30分かけて納得させたのだった。


 それにしても気付かない内に水晶食べる事が普通になってたとは…………流石に人としてやばい気がする。

 いや厳密には人では無いけどさ…………とりあえず──────────


「今度1回自分の認識を見直そう」


「ん、すずやんなんか言った?」


「ううん!なんでもないよ!さっ、座敷に行って勉強始めるよー」


「はーい」


 僕は1度今の自分自身の認識を見直すと心のメモに書き、とらちゃんと一緒に皆のいる座敷へと向かうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る