第127鱗目:ガールズトーク?龍娘!
「なぁすずやん」
「んー?」
「そのちょっとオシャレなベルトみたいなのなんなん?」
「あーこれ?拘束具」
「拘束具かぁ……え?拘束具?」
あ、しまった。
布団を引き終え、そんな質問をしてきたとらちゃんにそう答えた所で、僕はとらちゃんがびっくりしたようにこちらを振り返ってきたのを見て説明が足りてないことに気がつく。
「そんなんじゃないからね!?寝てる間に翼が広がらないようにするためだからね!」
「そ、そうだったんやね!いやー良かった良かった!てっきりすずやんにはあっちな趣味があるのかと…………」
「それ以上いうならまた吊るす」
「まぁまぁ、虎白ちゃんも悪気があった訳じゃないんだから、鈴も許してあげて」
「仕方ないにゃー」
さーちゃんがそういうのならばー。
「なんか理不尽…………それはそうと、すずやんって家だとだいぶん雰囲気変わるんやね。パジャマとかもふわふわした感じのかわいいやつやし」
「そうかなぁ……女物のパジャマってみんなこんなものかと…………」
そう言ってから僕はパチンと拘束具で翼を固定した後、自分のパジャマを見てみる。
そのパジャマは縁が白のふわふわで縁取られている水色の生地で、見た感じは少し可愛い感じのやつだ。
ちなみにこれもちー姉が買ってきてくれたものである。
「確かに女物は可愛いの多いけどそこまで可愛いのはあんまりないなぁ…………でもすずやんはすっごい似合ってるで!ぎゅーっとしたいくらいっ!」
「してるしてる!言動と行動が同時!」
苦しいとか暑いとか以前に抱きつかれるのはなんか恥ずかしいから勘弁してー!
「あら、せっかくだしアタシも混ぜて貰おうかしら」
「さーちゃんまで!?尻尾はダメだからね!?」
「ほらすずやん!ぎゅーっ!」
「ぎゅーっと」
「んむぅ!」
そんな風に僕より大きい2人に抱きつかれ、僕はまんぞくに息が出来ないのも忘れ、頭から湯気が出そうな程赤面してしまったのだった。
ーーーーーーーー
「という訳で!女の子だけになった事やし、いよいよガールズトーク開幕や!」
「おやすみー」
さっ、寝よう寝よう。いつもより1時間は遅く起きてるんだから。
「ちょっ!すずやん寝ないで寝ないで!布団にウチが誕生日プレゼントで渡した特大ぬいぐるみ抱っこして潜っていかないで!」
元気よく興奮した様子でそう言ってくるとらちゃんを他所に、僕は一言そう返すと身長より大きいにゃんこうのぬいぐるみ兼抱き枕を持って布団へ潜り出す。
「えーやだー」
「そう言わないで鈴も少しくらいお喋りしない?それにいつもはびっくりするくらい早く寝てるんだから、今日くらい、ね?」
「仕方ないなぁ」
「あ、すずやん出てきた。なんかいつもとは違ったかわいさが……」
「うっさ〜い、それで何話すの〜?ガールズトークって言うくらいだから女の子らしいやつなんでしょ?例えばー……料理のコツとか?」
というか少なくとも僕の心は女の子じゃないし、ガールズトークなんて……でもまぁ、料理の話くらいなら僕でもできるし………
「確かにそれはすごく女子力の高い女の子らしいやつやけど!ほらあるやん!こう……好きな人はいるのー!とか、実は告白されててーとか!そんな恋バナみたいなの!」
「ないよ」
「ないわ」
「即答っ!ってすずやんはラブレター貰ってたやん!」
ちっ、覚えてたか。
僕とさーちゃんにバッサリと即答されたとらちゃんは悔しげにぽふんと布団を叩き、その後思い出したかのように僕を指差しながらそう言ってくる。
「あれは何かの間違いだよ」
「いや実際に────」
「とらちゃんの明日の朝ご飯はもやしかな」
「すいませんでした」
「よろしい」
「…………正直もうちょいほわほわきゃっきゃっな感じを想像しとったんやけどなぁ………………」
「相手が悪かったわね」
相手が悪かったって…………
「ホンマにな…………とりあえず恋バナがダメとなると、女の子らしい会話はー………何があると思う?」
「そうねぇ……女の子らしい会話ねぇ…………」
女の子らしい会話かぁ……………んー…………………ねむい。
とらちゃんに話題を求められ、お布団の中でさーちゃんと同じように僕は首を捻っていたが、だんだんとお布団が温まって来たことで眠くなってくる。
もしかして今この家にいる女の子って…………僕も含めてノーマルな女の子って居ないんじゃない?
「すずやんどしたん?」
「なんでもふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………ない」
「あらあら、すっごい大きな欠伸だこと。もう鈴はおねむかしら?」
「うんー…………」
「ならうちらもすずやんの布団の隣にー」
「翼とか尻尾で叩かれたりされて大怪我する覚悟があるならおいでー」
「えっあ、そっ、そやね……えーっと…………今回は見送りで………」
「ん、けんめー」
もう瞼を開けれない程眠くなっていた僕は、最後の力を振り絞ってとらちゃんが近くに来ないよう警告を出すと、とらちゃんの返事に一言返してもぞもぞと布団へ潜っていく。
「なぁさなっち、すずやんていつもああなん?」
「眠いと機嫌が悪くなりやすくなって言葉が短くなるのは確かね」
全く、失礼な……
「そうだったんやね……まぁそれなら仕方ないか、そういやさなっちは化粧品とか──」
「それなら────────」
そして布団に潜った僕はそのままなんだか心地の良い2人の会話を聴きながら、ゆっくりと重い瞼に身を任せ眠りへと落ちていったのだった。
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