第121鱗目:靴箱ハプニング!龍娘!

「すっずやーん!一緒に帰ろー!」


「あ、とらちゃん!いいよー!もちろんだよー!」


 6限後のSHRが終わり終業のチャイムが鳴る中、ガラリと勢いよく扉を開けてそう言うとらちゃんを見て、僕は尻尾をひゅんと振ってそう返事をする。


「朱雀峯さんってここに来る時いつもすげぇハイテンションだよなぁ」


「すまんな、うちの朱雀峯が迷惑をかけて」


「虎白ちゃんはアンタのじゃ無いわよ隆継ー」


「そうだぞ隆継ー」


 それに雅紀さんとむーさんからとらちゃんを取るのは難易度高そうだ。


「冗談なんだから鈴香まで便乗してくるな、こほん…………とりあえずそれじゃあ俺らは先に帰るから」


「おーう、また明日」


「南君また明日」


「じゃあ南君また明日ね」


「ん、柊さんに天霧さんもまた明日」


 新たに仲良くなった僕の左前の席に居る南君に僕達は手を振りながら教室を出ると、とらちゃん達と雑談をしながら帰る為に廊下を歩いて行く。


「それでなー、りゅーくん階段で足踏み外して持ってた牛乳のパック握りつぶしてね」


「おおぅ……むーさん大丈夫だった?服とかも」


「うん、ガクッとはなったけどなんとかね。まぁ服はともかく、掃除をすることにはなったけどね」


「あはははは……」


 それはまぁ災難だったとしか…………


「知り合いにそれで靭帯切った奴いるから本当に気をつけろよ?」


「うへぇ、まじか。ありがとう気をつけるよ隆継」


「気をつけておくだけ損は無いし、それがいいわ」


「だな、っと話してたら着いたな。んじゃ俺の靴箱あっちだから」


「ウチもー」


「はーい、2人とも行ってらっしゃーい」


「俺は先に出て自販機の所いるから」


「了解隆継ー、僕午前の紅茶ねー」


「仕方ねぇなぁ……」


 さて、それじゃあ僕も靴履き変えなきゃ。

 いやーでも本当、怪我には気をつけないと。怪我しちゃった後、僕みたいに気を失ってる間に翼とか尻尾が生えたりするかもだしね〜って、ん?


「なんだこれ?」


 とらちゃんとむーさんが向こうの靴箱へ行った後僕がいつも通り自分の靴箱を開けると、何か青いのがひらひらと落ちて僕はそれを尻尾で取る。


 手紙?呼び出しか何かかな?わざわざそんな回りくどい事せずとも、普通に会って要件話せばいいだろうに。


「どうしたの鈴?何かあった?」


「あ、さーちゃん。ちょっと靴箱の中になんか入ってたみたいでさ、多分手紙だとは思うんだけど……」


「えっ!?鈴それって!」


「でもあれだよねー、わざわざ呼び出すなら普通に話しかけてくればいいのにー…………ってさーちゃん?」


 なんか気まずそうにしてるけどどうかしたのかな?


「あーうん、そのー、多分、多分だけどね鈴。それってそういう鈴が思ってるのじゃなくて……」


「思ってるのじゃ無くて?」


「えーっと、えーっとね鈴、鈴にはショックかもしれないけどそれは多分ラブ───」


「すずやん達どうしたんー?何かあったんかー?」


「わっ!」


「あ、とらちゃん。ちょっとこんなのが靴箱に入ってて。反射的に尻尾で取ったからクシャッとなったけど」


「ちょっ!鈴まっ────」


「えっ!それってラブレターやないの!?」


 ラブレター?ラブレターって確か……好きな人に送るやつだよね?という事はこれを靴箱に入れた人は僕の事が好きな人で…………………僕の事が好きな人!?


 ひょこっと横の靴箱の列から顔を出して来たとらちゃんに僕が手紙を見せると、とらちゃんは興奮したようにそう言って来て、それを聞いた僕は驚きの余り目をぎょっと開く。


「あぁぁ……虎白ちゃん言っちゃった…………」


「えっ、なんか言ったら不味かったん!?」


「いや、まぁちょっとね、鈴にそういうのは……」


「でもラブレターって凄いやん?」


「まぁそれはそうなんだけど…………とりあえず鈴大丈夫?」


 ラ、ラブ、ラブレッ!好きっ!?僕を!?僕にラブレター!?んな馬鹿な!僕は男だぞ!?

 あ、でも性別は女か、なら別にラブレター貰ってもってそんな事は関係なくて!


「ふにゃらっせいっ!」


「「あっ!」」


 ラブレターと聞いた僕は久しぶりにプチパニックを起こしてしまい、心配そうにさーちゃんから声をかけられたタイミングで、僕は掛け声と共にラブレターを勢いよく引き裂く。


「さっ!それじゃあ帰ろっか!」


「えっ!?でもすずやんラブレターどうす───」


「そうね!途中でどこかお店にも寄りましょうか!」


「いいね!僕ケーキ食べたい!とらちゃんもいこっ!」


「おぉぉ!?わっ!わかったからすずやん全力で引っ張るのはやめてー!」


「ごーごー!」


 とらちゃんに有無を言わせぬような勢いで僕は靴を履きながらそう話すと、この話題を終わらせるべくちょっと強引にとらちゃんの手を引っ張って歩いて行くのだった。

 ちなみにさーちゃんが言いにくそうにしてたの理由が僕が元男だったからなのは、言うまてまもあるまい。

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