第4章:二学期編

第118鱗目:新学期!龍娘!

「皆お疲れー、どうだったー?」


「アタシはまぁまぁね、いつもより少しいいかもってくらい」


「俺もそれくらいだな、特に可もなく不可もなくって感じ。天霧さんはどうだった?」


「僕もそんな所ー、んでそこの2人は…………まぁ言うまでもなさそうだね」


「ちょっ!すずやん酷ない!?いやまぁほんの、ほんのちょこーっと悪かったかもなぁっちゅーのはあるんやけど!なぁたかくん!」


「そうだそうだ!確かに解答用紙の半分くらいは適当に書いたけど、40点を超えさえすれば赤点は免れるんだから大丈夫だ!」


「せやせや!」


 とらちゃん…隆継…それは最低ラインというもので大丈夫とは言わないんだよ……


 夏休みも終わりいよいよ二学期が始まった今日、始業式と共に実力テスト初日を終えた僕達はSHRが終わった後、そんな話をしていた。


「それはともかく、すずやん朝から大変やったなぁ。あんな転校初日の二の舞みたいにもみくちゃにされて」


「あはははは、まぁうん、そんなことになる気はしてたから。それに今日は皆にも助けてもらったお陰でなんともなかったし」


 やはり30時間テレビに僕が出た事は皆の話題になるには充分だったようで、朝から隆継達と登校してきた僕は、まるで初日の時の様にもみくちゃにされたのだった。

 ちなみに僕が出た後から視聴率が爆上がりしたそうで、とらちゃんによると歴代最高視聴率である73.2%を叩き出したらしい。


 概ね三浦先生の企み通りになったって所かな?

 …………まぁ睨むような目で見られたりもしたし、三浦先生の悪い予感も当たっちゃったみたいだけど。


「それより天霧さん、この後時間とかある?」


「うん、時間はあるけど……何か用?」


「あぁ、ちょっと手伝って欲しいことがあってね。頼めるかな?」


 むーさんが僕に頼み事とは珍しい。結構大変な事なのかな?


「もちろんだよ。それで手伝うのはいいけど、何をすればいいの?」


「本来は図書委員の仕事なんだけど、修復に出す古い本を詰めたダンボール箱を運んで貰いたくてね」


 むーさんは最後に「女の子に頼むような事じゃないけどね」と付け加えると、苦笑いを浮かべながら僕にそう頼んでくる。

 僕はそんなむーさんに任せてと張り切って言うと翼を少し動かし、腕を回しながら立ち上がる。


「頼りになるよ、それじゃあお願いするね。報酬は今度とっておきの甘い物でも」


「わーい甘い物やったー!」


 しかもむーさんのとっておき!どんな物なんだろ!


「甘い物で尻尾ぶんぶん振って喜ぶすずやんかわいいなぁ…………でもまぁ、甘い物で女の子を釣るなんて、りゅーくん悪い人やー」


「あーっと、天霧さん以外に手伝ってくた奴にもご馳走してやろうと思ってたんだがなぁ」


「すずやん!ウチもすずやんのお手伝いするで!」


「あはははは……ほどほどでいいからね」


「ほなはよ図書室いこっ!」


 とらちゃん、甘い物に釣られたのは貴女ですわよ……


 僕の手を引っ張って図書室へ向かおうとするとらちゃんに、僕はしかたないなぁと苦笑いを浮かべながらそう思うのだった。


「さてそれじゃあ僕は行ってくるけど……」


「アタシ達も勿論ついて行くわよ、アタシも包装くらいなら手伝えるかもだし」


「俺も力には自信あるからな、鈴香程じゃないにしても少しは手伝えるはずだ」


「二人共…………目的は甘い物でしょ?」


「あ、バレてたか」


「バレてたわね」


 やっぱりそんな気がしたもん。でもまぁ……


「ありがとね!」


 僕は予想通りの動機だった2人に笑いかけながらそう言うと、早く早くとてを振っているとらちゃんの所へと歩いて行くのだった。

 この後、隆継がヒーヒー言ってダンボール箱を運んでる横で、僕がダンボール箱を翼に乗せたりして平然と5つ6つ同時に運んでたのは気にしては行けない。

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