第116鱗目:舞台袖!龍娘!

「それでは天霧さんが出るタイミングでこんな合図を出しますので、そしたらそこの舞台袖から出て来てください」


 なるほど、そのびっ!って感じの合図が出たら出ればいいんだね。


「その後は先程説明したように質問に答えて頂く形になりますが、他は右から2番目のカンペを読んでください」


「了解しました!」


「それじゃあよろしくお願いしますね」


 合図を見て僕がコクコクと頷くのを見た角水ADは満足気に頷くと、僕にどうすればいいか説明をして忙しそうにトタトタと持ち場へと去っていく。


「はぁー……緊張するなぁ…………」


 やっぱりいざ出るとなると緊張が…………というかここからたった数メートル前に出るだけでテレビに………うおあぁぁぁ……なんか怖いっ!緊張してきたぁーっ!


「鈴ちゃん鈴ちゃん」


「ち、ちー姉?何?」


「大丈夫?すっごい緊張してるみたいだけど……ほら、尻尾カクカクになってる」


 うわっ!本当だ!なんかカクカクってなってる!もどれーもどれー!


「ふぅ……もどった…………」


「よかったよかった。それにしても鈴ちゃん、今までにないくらい緊張してるね」


「あはははははは……いざ本番となるとやっぱりねー…………」


 というか改めて見ると、何も無いよりはって尻尾にリボン付けられてるのなんか恥ずかしいんだけど!


 尻尾をふるふると動かしながら僕がそう考えて居ると、何か盛り上がりでもあったのだろうか会場の方から大きい拍手が聞こえて来て、僕は緊張を紛らわす為にもそちらへと意識を向ける。


「さてそれでは次のコーナー、全国の子供達に元気を─────ふむふむ…なんとここで!急遽会場へ特別ゲストの方が来て下さったとの事です!」


 ちょうどコーナーが終わった所だったのか!って事はいよいよ僕の出番!?


「特別ゲストですか?一体誰なんでしょう」


「えーっとですね、その方は今なお話題になっている方で、今回何度もお願いして特別に出演する事をOKして下さったそうです」


「ほぉ!そんな方が!一体どんな方なのでしょうか。我々も誰が来るか何も知らないので少しドキドキしております!」


 あーやばい!なんか逆にすっごい緊張してきたぁ!


「鈴ちゃん、ちょっとおいで」


「な、なに?ちー姉、もう僕出ないと────」


 会場の方で少しはぐらかした僕の紹介がいよいよ始まり緊張で僕がその場で足踏みしていると、ちー姉はそう言って近づいていった僕をぎゅっと抱きしめてくる。


 んむっ!?ち、ちー姉なにをっ!?


「大丈夫、鈴ちゃんならやれるよ。落ち着いてやれば大丈夫」


 ちー姉……………………


「嬉しいし励まされたけどちょっと顔が胸で埋もれて息が出来ない、苦しい。離して」


「え〜〜っ!もっとぎゅーってさせて〜」


「もー、僕今から出なきゃなんだけど……………言ってくれたら好きなだけさせてあげるのに……」


「鈴ちゃん何か言った?」


「ううん!なんでもない!」


 抱きしめられたままちー姉に頭を撫でて貰いさっきまでの緊張が嘘のように消えた僕は、小声でぼそっと言ったのをなんでもないと誤魔化してちー姉の肩をひと押しして離れる。


「さて!特別ゲストは一体どのような方なのでしょうか!」


「既にこちらまで来てくださっているようです!それでは登場して頂きましょう!特別ゲストの方です!どうぞ!」


 さて!それじゃあいっちょやりますか!


「行ってらっしゃい!鈴ちゃん!」


「うん!行ってきます!」


 角水ADの合図を見た僕はちー姉にそう返事を返すと、悠々と胸を張り会場へと出ていったのだった。

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