第115鱗目:理由、龍娘
「んで、どうして僕の預かり知らぬ所で勝手に僕がテレビに出る事になったんですか」
「え、えーっと…………それはやな……………」
「とっ、とりあえず………鈴香、せめて朱雀峯さんは椅子に………」
「きちんと、僕が納得出来る説明、してくださいね?」
「「は、はい……」」
蔑むような目で床に正座させた大の男二人、三浦先生と雅紀さんを僕は見つつ、そう言って威圧感のある笑みを浮かべゆっくりと尻尾を波打たせていた。
「それで、一体全体どうしてそんな事になったんですか」
「んまぁ、全部説明すると長くなるんやけど………一言で言うなら、そうせざるを得なかったんや」
そうせざるを得なかった?
「どういう事なんです?」
「とりあえずそれは俺から説明させて貰うぞ」
「あ、三浦先生」
思わず正座させてしまった二人に椅子に座り直して貰った僕は、改めて二人にお茶を出してなぜ僕がテレビに出る事になってしまったのかを聞く。
「まず鈴香への取材とかそんな類のが無くなったのは俺と朱雀峯さんで色々やってるからってのは聞いたんだよな?」
「はい、それは聞きました。確か法的なとか権力を行使して結構無理やりって」
「そうだ、分かってるならこっちは説明しなくていいな。それじゃあ今の鈴香のネットとかの認識というか、話題の具合はどれくらいか知ってるか?」
「いえ、そっちは……」
スマホも検索出来るらしいけど訳わかんないから連絡用としてしか使ってないし、ネットでどんな感じかとかは全く知らないんだよねぇ。
「じゃあこっちは説明しよう。学会や業界を除いて話を進めるが、まず今の世間話的な方は全くと言ってもいい程鈴香の話題は無い」
なんだ、話題になってないならそれこそ気にする必要ないじゃん。
三浦先生から世間一般で僕がどれ程話題になっているか聞いた僕は、そこまで話題になってないならよかったとホッと息を着く。
しかし三浦先生の表情はあまり優れているとは言えない表情で、僕はそれの何か不味いのだろうかと首を傾げる。
「何が不味いのか分からんって顔をしてるな」
「は、はい。話題になってないのならゴタゴタも減るしいい事なんじゃないかなーって……」
「まぁ普通ならな、だがお前はそうはいかない。今だからこそ言うが鈴香、お前はいつ命を狙われ始められるか分からないんだ」
い、命を?あはははは……
「んな馬鹿な」
「それが割と馬鹿な話じゃないんよ天霧ちゃん」
「雅紀さんそれってどういう……」
「まぁ鈴香が業界を大きく乱した事でお前の事を快く思わない組織や人が少なからず存在するってことだ、それが日医会が嫌いでかお前本人が嫌いでかは分からんがな」
つ、つまりは僕の鱗とかのせいで失敗とか大損した人やら組織が、僕を殺しに来るかもって事……?
それなら逆に常に話題に上がるくらい人目があれば……
僕はそこまで考えが至ったところで、なぜ三浦先生がそうせざるを得なかったと言ったかを理解し、顔をはっとさせる。
「相変わらず鈴香は理解が早いな。そうだ、今はネットの1部がとても盛り上がっているお陰で大丈夫だが、このままネットの盛り上がりも落ち着いてしまえば確実に狙われるだろう」
「だから行動を起こされる前に大体的にテレビ番組に出て一気に僕の話題を盛り返そうと?」
「そういう事だ、今までより遥かに大勢の人の前に出る事になるからそっちで生まれるリスクもあるが、このまま誰の目にも止まらなくなる方がリスキーだからな。それと……」
「そろそろ各局を抑えるのにも限界が来かかってたんよね、だからここらでガス抜き代わりも兼ねてという事や」
だからテレビにか……それなら………仕方なしか。
「わかりました。出ましょう、30時間テレビ」
そうして僕はため息を着くようにして30時間テレビに特別ゲストとして出る事になったのだった。
ーーーーーーーーーーーー
そして今に至るという訳だ。
「よしっ!出来たよ鈴ちゃん!」
「お!ありがとうちー姉!これで着れるよー!」
あのままだと翼が通せないでシャツ着ることが出来ないからね〜っと…………ん、ちゃんと着れるね。だいじょーぶ。
僕はちー姉が手を加えてくれたシャツを着ると、この日の為に作った翼カバーで覆われた翼を動かし、先の方にリボンを付けた尻尾を揺らす。
「どうどう?似合ってる?」
「うんうん!似合ってるよ〜!」
よかったー、折角なら似合ってる方が良いからねー………さて……そろそろかな?
「お待たせしました、それでは天霧さんスタジオの方へご案内しますね。お姉さんも舞台袖までは着いてきて下さっても構いませんので」
お、やっぱりだった。
僕がニコニコ笑顔のちー姉と盛り上がってお喋りしながらそんな事を考えて居ると、僕の予想通り角水ADが僕を呼びに部屋へと入ってくる。
「はーい」
さてそれじゃあ────
「いっちょやりますか!」
僕はやる気充分と言うようにパシンとスカートに空けた穴から出している尻尾で床を叩き、ちー姉と一緒に会場へと向かうのだった。
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