ドラゴンガール！？〜現代社会に龍娘！？〜

第95鱗目:作戦！龍娘！

「…………ふーん、何か考えがあるみたいね」

「ちょっと頼りになる先生から御教授して貰ったので」

　僕はそう言うと翼を1度羽ばたかせ、すぐにでも体を動かせるように体のあちこちを入念に動かす。

「三浦くんからいいアイデア貰えたようね、楽しみだわ。さてそれじゃあ……かかってらっしゃい」

「ではお言葉に甘えてっ！」

　僕は金城さんにそう言い終わると同時に、強く床を蹴って一気に金城さんとの距離を詰め、まずは思いっきり右手を振り抜く。

　でも多分避けられるから……！

「よっ…と！へぇ、考えたじゃない」

「馬鹿みたいに突っ込んで殴られて投げられるだけなんて事は……もうしませんよ！」

　右手を振り抜いた所で金城さんが反撃してくると踏んでいた僕は、そのまま追撃を貰わないようもう一度床を蹴って直ぐに金城さんから距離を取る。

　そう、これが僕の思いついた作戦、馬鹿みたいに高い身体能力にものを言わせて瞬時に近づき、一撃を入れてまた瞬時に離脱する、言ってしまうならただの一撃離脱戦法である。

　触る事を目的とするならば下手に小難しい事をして逆手に取られるよりは、単純だがこの作戦が遥かに成功率は高いはずだ。

　でもそう何回も通じるとは思えないんだよねっ！とっ！ひえぇぇ……こわっ。

　3度目の一撃離脱で金城さんの手が尻尾をかすったのを感じ、僕は冷や汗を流す。

　もうちょっと行けると思ったけど…………慣れるの早い！なんならやっぱり金城さんも人間じゃないんじゃなかろうか。

「なんだか失礼な事かんがえてないかしらー？」

「そんな事ありませんよっ！」

　流石にもうただの一撃離脱はカウンター入れられるだろうから………

　そう思いながら真っ直ぐに金城さんへと突っ込んだ僕は、離脱する方向をさっきまでやってたように直線的ではなく、金城さんが避けた方へ床を蹴って体当たりをするようにして離脱する。

「ちぃっ！これも避けるのか！」

「今のは危なかったわぁ、もう少し離脱する角度が下なら当たってたわよー。それと姫ちゃん？女の子がそんな言葉遣いダメよー？」

　危なかったって余裕綽々じゃんかぁ！というかそうなったらなったで絶対殴って直撃避けたりとかしてきそう、というか金城さんなら出来そう。

　もはや人間かどうか疑わしいという目で僕は金城さんを見つつも、ここらで決めないとと内心焦りが生まれて来ていた。

　使うか……？いやでも大怪我させるかも…………でもそろそろというよりもう速度に慣れて来てるし、このまま出し渋ってやられるよりは………それにれならリーチも補えるし……………よし。

　僕はジリジリと金城さんと距離を取りつつ、出さないよりはと決心し、一瞬瞳を金色に光らせたかと思うと床を砕かない程度に床を蹴り、猛スピードで金城さんへと突っ込む。

　そして半秒程もかからず金城さんの元へ1歩で来た僕は、右手に持った突っ込むタイミングで瞬時に作った2m半程の水晶の棒を左下から右上へと振り切る。

　しかしそれは虚しくも金城さんの髪にかするだけで、僕は即座に離脱しようと床に触れた足に力を込めるが─────

「にゅいっ！？」

　金城さんに尻尾を掴まれたのか、僕は背中やお腹の下辺りにビリッとよく分からない感覚が走り、上手く力むことが出来ず離脱に失敗する。

　そして僕はそのまま尻尾を引っ張られ…………

「よーいーしょーーっ！」

「えっ！ちょっ！うそ！まっまわっ！あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！」

「行くわよー！」

　いっ、行くってまさかっなげっ─────

「ジャイアントスイングー！」

「うにゃあぁぁぁァァァァァァァァァァァ！！！」

　ぐるんぐるんと振り回され、ぽーんと放り投げられたのだった。

　ーーーーーーーーーーーー

「きゅう…………」

「空中できりもみ回転し出して運良く翼をクッションに横滑りで地面に落ちたから良かったものの、ジャイアントスイングは流石にやりすぎです金城先輩！もし鈴香が背骨やったらどうするんです！」

「ちょっとした茶目っ気だったのだけどまさかあんなに見事に飛んでいくなんて思ってなくて……ごめんなさい」

　茶目っ気で人を放り投げるって……

　壁に寄りかかって目を回して居る僕に、三浦先生に怒られた金城さんが本当に申し訳なさそうに謝ってくる。

「鈴香、大丈夫か？」

「うぅぅぅ……寿命が50年縮んだ…………」

　まさか昨日テレビで見たジャイアントスイングされるなんて思ってなかったよ…………というか300キロ弱はある僕を振り回すって金城さん本当に人間？

　というかあれ避けるってますます人間なのか疑わしいんだけど。この人本当に人間？

「せめて5年にしてくれ。金城先輩、流石に今日はここで終わりでいいですよね？」

　ぽんぽんと三浦先生に肩を叩かれて顔をふるふるとした僕は、さっき投げられた時の恐怖を思い出して尻尾を抱きしめる。

　ちなみに投げられた時ほんの少しチビったような気もするが……それはきっと気の所為である。

　…………気の所為である。

「そうね、棒が髪に掠るだけだったとはいえ私を触った事には変わりないし、今日はおしまいにしましょう。それと姫ちゃん」

「はい？」

「あそこで悟られない様に瞬時に棒を作ったのはいい選択だったわ。そしてその後棒を左下から斜めに切り上げる様に振るのもいい判断よ。これからも頑張りなさい」

　僕は金城さんに頭を撫でられながらそう言われ、胸の内にジーンと来るものを感じる。

「──っ！はいっ！ありがとうございました！」

　僕は去っていく金城さんに頭をさげ、これからも頑張ろうと心に決めたのだった。

　そしてこの後、家へと戻った僕はちー姉ちゃんに三浦先生と金城さん共々どこに居たのかとこってり叱られたのだった。