第93鱗目:スマホ!龍娘!
「なんか久しぶりだなぁ、こうやって姫を乗せて運転するの」
「鈴ちゃん直ぐに夏休みになっちゃったからねー」
「ねー。でも陣内さんがいいなら時間がある時はいつでも来ていいんですからね?」
遊んでくれる人増えるし。
「ははっ、それじゃあ今度お邪魔しようかな。そして到着だ、車停めたら後ろ開けるから少し待っててくれよ」
久々の陣内さんが運転する車、と言っても今日は大型トラックではなくワゴン車だが…それの荷台に僕は乗せて貰い、今日はちー姉ちゃんと一緒に買い物へと来ていた。
車停めてから陣内さんが後ろを開けてくれるのを待ち、天井に翼爪を刺さないよう気を付けながら僕は車を降り、少し翼を動かして体をほぐす。
「それじゃあ俺は休憩コーナー的な場所で待ってるから、どんなの買ったか後で見せてくれよ」
「はい!陣内さんありがとうございました!」
「それじゃあ陣内くんまた後でよろしくね」
そう言って近くにあるカフェへと向かう陣内さんを手を振って見送り、僕はちー姉ちゃんへ振り向く。
「それじゃあ、鈴ちゃんに似合うの見つけなきゃね!」
「うん!」
笑顔でちー姉ちゃんにそう言われ、僕は尻尾を振りながら元気よく返事をすると、今日の目的である僕のスマホを買いに向かうのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
スマホが沢山ある…………しかもこれが全部数万円くらい……ひえぇぇぇ………………
「ですから龍娘さん……いえ、妹様にはこのタイプがいいかと、それに最新式ですし」
「なるほど、鈴ちゃんはどう?これなんだけど?」
「うぇ!?なっ、なにっ!!?」
というか妹様って僕の事!?
僕の身長よりほんの少し低いくらいの机の上に乗せられた沢山のスマホに戦々恐々していた僕は、いきなり話を振られてビクッとなりながらちー姉ちゃんの方へ振り向く。
「これなんだけどね、鈴ちゃんなら大きさこれくらいがいいかなぁって」
「どれどれー」
僕はそう言うと、ちー姉ちゃんが掌の上に置いてくれたちょっと小さめのスマホを見やすい場所まで持ってきて、掌に乗せたままちょいちょいと指で突っつく。
「い、いいんじゃない?」
「いいんじゃないって………乗せて突っついただけでしょ鈴ちゃん。ちゃんとこうぎゅって持たないと!」
スマホを突っついてた僕にちー姉ちゃんがスマホの持ち方を見せてくれるが、家を出る前に隆継にスマホは壊れやすいと教えてもらっていた僕は。
「スマホって壊れやすいって聞いたよ?だからそんな風に僕が持ったら壊しちゃうと思うよ?」
そう隆継が言ってたもん!
そう言いながら「知ってるよ?」という顔で僕が2人を見ると、それを見た店員さんとちー姉ちゃんは顔を見合わせ、ぷッと吹き出してくすくすと笑い始める。
「ど、どしたの?僕……何かおかしいこと言った?」
「おかしいも何も……ふふっ!」
「そんなちょっと握りしめたくらいでスマホは壊れませんよ」
「ほ、ほんとに?」
店員さんがそう言うなら……でも隆継は壊れやすいって……
そう言う店員さんに大丈夫と言わんばかりに頭を撫でられた僕は、まだ少し不安でちー姉ちゃんの方を向く。
「そうよ鈴ちゃん、隆継くんにでも吹き込まれてたんでしょうけど、鈴ちゃんが全力で握りしめたりしない限り壊れたりしないわ。それに……」
「それに?」
「お箸よりかは遥かに丈夫よ」
ニコッと笑いながらそうちー姉ちゃんが言ってくれる。
それを聞いた僕はそれならと掌に乗せていたスマホを恐る恐ると両手で持つ、するとスマホはペキッと音を立てて壊れる……
なんてことは無く、僕の小さい掌にちょうど収まるようにスマホはしっかりとそこにあった。
おぉぉぉぉ……!ちゃんと壊れない!
「鈴ちゃん横のボタン押してみて」
「これ?」
「そうそう」
「ポチッ……と、おぉお!着いた!画面着いたよ!ちー姉ちゃん!」
「そうね〜」
凄い!!ここを押せば画面着くのか!はいてくだぁ!
「ほはぁー!」
尻尾の先をピコピコと動かしながら僕は感動と興奮の余り、目をキラキラさせて何度も画面を点けたり消したりして見ていた。
「「やばい、可愛い」」
「2人とも何か言った?」
なんかぼそっと聞こえた気がしたけど……
「何も言ってないわよ〜。それで鈴ちゃんどうする?それにする?」
「んー…………」
ちょうど掌に収まるから……大きさはこれでよし、デザインも端っこが丸っこくなってて悪くない……うん。
「これがいい!」
僕はひとつ頷くと両手で持っていたスマホをちー姉ちゃんへと渡す、するとちー姉ちゃんは満足そうにひとつ頷くと、店員さんにこれをと言ってそのスマホを渡す。
これで僕もとうとうスマホデビューか………なんか感慨深いなぁ…………ん?さっき……ちー姉ちゃん店員さんにこれをって…………
うむうむと頷いていた僕はさっき渡されていたスマホの色が確かピンクだった事を思い出し……
このままじゃ初スマホがピンクになってしまう!
「いっ!色は!色はせめて水色に!」
パタパタと歩いていく店員さんを僕は慌てて追いかけるのであった。
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