第92鱗目:8/3第2回報告会

「それじゃあ報告会を始めます。といっても今回も前回と変わらず鈴香に関する事ですが」


「はっはっはっ!まーた堅苦しくなってるぞ三浦ー」


「ほら、お茶でも飲んでもっと気を抜きなさい」


「なんなら茶菓子もあるぞ、食うか?」


「皆さんはもう少し緊張感を持ってくださいよ……」


 鈴香達が夏祭りの話でで盛り上がっている時と同時刻、日医会の下層にあるとある一室には幹部達が集まっていた。

 そしてそんな茶菓子を勧めてくる緊張感の無い他の幹部に、三浦はため息をつきながらも報告を始める。


「とりあえず今回報告する事は主に3つです」


「意外と少ないのね」


「まぁこの頃は研究してる所じゃなかったしそんな所か」


 鈴香が日医会を出ていった後、鈴香本人もだがそれ以上に日医会の方もてんてこ舞いになっており、三浦達はまともに研究する時間が殆どなかったのだ。


「それじゃあまず1つ目。彼女の鱗や抜け殻、その他細かい物での収益に関する事だ」


「あ、ラフになってる」


「別にいいじゃないですか金城先輩、それにさっき気をぬけって言ったのは貴女でしょうに」


 ニヤニヤとした顔でそう言ってくる金城へ三浦はそう言うと、厳武に促されて続きを話し始める。


「今現在の収益だけ先に言ってしまうと10兆を越した、これは皆さんも御存知の通りかと」


「この時点で昨年度の年商の半分言ってるからなぁ……俺ら財務担当の去年までの苦労よ」


 はははと財務の総管理者である柊は苦笑いを浮かべながら、グンッと伸びた収益表を見てそう言う。


「そこはもう仕方ねぇさ、確か今抜け殻50g辺りのレートが470億くらいだったか?」


「今はもう少し上がって510億です、鱗は1枚で1000億越しましたね」


「抜け殻も相当だけどやっぱり鱗の方が凄いわよねぇ、研究や建築には勿論、軍事利用すれば絶対壊れない戦車なんて作れちゃうものね」


 厳武の値段を三浦が訂正すると、金城がそれの使用先の例を上げる。


「しかも50g、鱗2枚分の粉があれば高層ビル1件のコンクリに充分な耐久性をもたせられると来たもんだ。そらレートもぶっ壊れるよな」


「次いつ手に入るかは分からないが、もし半年に1度手に入るとするのなら日医会の去年の年商を軽く越す収入源になるぞ」


「だからといって強要だけは絶対にしない事、これが彼女と俺らが円満な関係でいるために必要不可欠な事だ。それでは2つ目に─────」


 そう話している厳武と柊に三浦はあくまで鈴香とは友好的にと言い、次の報告を始める。


「鈴香の生え変わりで手に入った水晶の角の事だ」


「お、研究結果出たのか」


「研究してる所じゃ無かったって言うのによくやるわよ……」


「ははっ、これは大分簡単に結果出たんだよ。な、三浦」


 驚いた様子の2人に柊はそう言うと話を振られた三浦は大きく頷いてその事を話し始める。


「あぁ、結論から言うとあの角はエネルギーを吸収する」


「エネルギー?」


「そうだ、メジャーな熱エネルギーだけじゃなく光エネルギー、音エネルギー、電気エネルギー、そして放射線ですら吸収していることが判明した」


 三浦がそう言った途端先程まで和やかだった雰囲気は一変し、緊張感のある雰囲気に部屋が包まれる。


「…………それはもしかしてエネルギーというエネルギー全てをということか?」


「そうです。幸いにも効果範囲はとても狭いものであの角の表面から10cm程ですが、確かにエネルギーが吸収され減衰してるのを確認しました」


「キャパは?」


「1ヶ月間ずっと電気を1メガワット流し込んでは居ますが未だに吸収を続けてます」


「放出はされてるの?」


「いえ、されてません」


 厳武や金城の質問に三浦と柊が次々と即答すると、2人は腕を組んだり顎に手を当てたりして考え始める。


「なら何かに変換されてると考えるのが妥当か……」


「はい、俺らもそう考えてます。そしてこれは俺の憶測ですが、変換先は未知のエネルギー、以前にも話した魔力へと変換されてるものだと考えてます」


「魔力…ね、そういや自由に水晶を作れるようになったって報告あったわね。あながち本当に魔力が存在してたりして」


「するのかもしれんなぁ…………とりあえずこの事は」


「はい、勿論これは隠し通します。記録も残しません」


 厳武がそう言って三浦に目線をやると、三浦は分かってるというようにひとつ頷いて、この事は隠すと言う事を報告する。


「血液が1番やばいと思ってたけどそれ以上のが出るとはなぁ」


「全くよ、それで最後は?」


「これは火急の案件でもあるんだが、鈴香の馬鹿力が世間にバレたという事だ」


 さっきのがバレるよりはマシだとでも言うようにラフな口調に戻った三浦がそう言うと、金城は悔しそうな顔をする。


「本当に申し訳ないわ、ド素人相手に……いえ、ド素人だったからこそ出し抜かれたのかしらね」


「仕方ないさ、それに鈴香本人は無事だったんだし。なんなら犯人もその場で思いついてやったって言ってたんだから、対策立てる方が無理さ」


 先日の一件のことを悔しそうに言う金城を、柊は実際に犯人が言ってたという言葉を元に励ます。


「それで、どうするんだ?」


「こればかりはもう隠し通せないだろうからな、対策は今まで以上に警備の強化なんかをするのと一緒に……金城先輩」


 三浦はそう言うとじっと金城の目を見る、すると金城は申し訳なさそうに肩を竦めて反応を返す。


「私にも落ち度があるし、出来ることならなんでもするわよ。それで何をすればいいのかしら?」


「鈴香を、鍛えてあげてください。彼女には身を守る力が必要だ」


 三浦は金城へと真剣な眼差しで金城へとそういったのだった。

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