第88鱗目:お昼!龍娘!

 いやぁー、ほんと翼があって良かった。うん。

 ここまで翼があって良かったと思ったのは初めてだったよ。


 フードコートの端にあるテーブル席に座っている僕は、尻尾が床につかないよう横の椅子に乗せながら料理を持って戻ってくる2人に手を振る。


「2人ともおかえりー。なに頼んだ?」


「ウチはざる蕎麦〜」


「アタシはオムライス、それと席取ってくれててありがとね鈴」


「こんなのお安い御用だよー」


 ざる蕎麦にオムライスかぁ……なんか2人らしい料理だなぁ。


「いやいや、ほんま助かるわぁ。でもなぁ……」


「うん?」


 2人が僕の前の椅子に料理を置いて座ると、とらちゃんはそう言ってじっと僕を見てから大きくため息をつく。


「すずやんが着れる服が無かったのはホンマに残念やったわー……」


「あはははは、それは仕方ないよー。背中が全部空いてる服なんて普通ないからねー」


 そう、翼があるせいで普通の服が着れない僕は、その翼のおかげでとらちゃんに着せ替え人形にされずに済んだのだった。


 ほんと翼があって良かったよ、うん。

 女物の服を着て人前に出るのもやっと慣れてきたくらいなのに、その上着せ替え人形とか冗談抜きで勘弁願いたいからね。

 いやー本当に助かった。


 2人とそんな話をしながら少し先に料理を取っていた僕はパクパクと料理を食べ初める。


「なぁさなっち、夏休み前からすずやんのお弁当とか見る度にもしかしてとは思ってたんやけど………」


「思ってたんだけど?」


「すずやんって結構大食い?」


 パクパクと大盛りのラーメンとチャーハンを食べる僕を見て、とらちゃんはさーちゃんに思わずそう聞く。

 ちなみにラーメンもチャーハンもどっちも1人前の特盛りサイズである。


「えぇそうよ、家でも毎日沢山食べてるわ。この大食いっぷりはアタシも慣れるまで時間かかったわ」


「ウチらより小さいあの体のどこにそんな……いやそれよりもあんだけ食べてるのにあの体型…………やっぱ翼とか尻尾にエネルギー使っとるんやろうか…」


「かしらねぇ……でもまぁ」


「ん〜♪美味しい!」


「「可愛いなぁ」」


 ほっぺたをリスみたいにして夢中になって食べる僕に2人は笑顔でそういうのだった。


 ーーーーーーーーーー


 ふー、食べた食べた。

 やっぱりラーメンみたいなガッツリとした料理はいいねぇ。お腹に溜まる〜大満足〜。


「すずやん大満足みたいやなぁ。それで次はどこ行こうか」


 ご飯を食べ終えフードコートを出た僕達は、次はどこに行こうかと話しながらショッピングモールの中をウロウロとしていた。


「そうねぇ、鈴も楽しめるような場所……小物店とかどう?」


 お腹に手を当てながら満足そうにニコーっとして2人の後について行ってた僕に、さーちゃんがそう聞いてくる。


「小物店?」


「手帳とかストラップ、ブレスレットみたいな小さい物を扱ってるお店やね。可愛いものも多いし、すずやんも楽しめると思うで!」


 かっ、可愛いものかぁ…………うーん………………


「髪留めとか結構実用的なのもあるし、鈴も何か気に入るの見つかると思うけど。どう?」


 髪留めかぁ、僕はちー姉ちゃんがくれたこのヘアピンだけで充分なんだけど………まぁ…せっかくだし。


「うん、そこに行ってみようか」


「よっし!そうと決まればレッツゴーや!」


 こうして次に僕達が行く場所は小物店となったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る