第87鱗目:ショッピングモール!龍娘!

「それじゃあ3時頃に迎えに来るで」


「うん、ありがと父ちゃん」


「雅紀さんありがとうございました」


「おう、何かあったらすぐ連絡してな」


 僕達をショッピングモールに下ろした雅紀さんはそう言うと、車を走らせて去っていく。


 なんやかんやで雅紀さんいい人だったなぁ。

 見た目は完全に極め道の人だけど。


「さて、じゃあ父ちゃんも行った事だし女子だけのお買い物、スタートやー!」


 ばっとグーにした手を突き上げてとらちゃんが楽しそうにそう言ったのを合図に、僕達のショッピングが幕を開けた。


 ーーーーーーーーーー


 うおぉぉぉぉ……!おしゃれな………おしゃれなお店がいっぱいある……!


 大型ショッピングモールへと入った僕は、全体的に白と淡いピンク色のなんだかキラキラしてる店内に圧倒されていた。


 でもなんかちょっと違和感が…………あっ、もしかして……


「ここにいるお客さんって殆ど女の人?」


「おっ!流石すずやん、よー気づいたな!そうなんよ!ここは女性をターゲットにしてる女性向けのショッピングモールなんよ!」


 なるほど、だから女の人が多かったのか。

 というかそんなスタンス?っていうか経営方針?を取るなんて、このショッピングモール思い切ってるなぁ……


 納得したような、そんでもって呆れたような微妙な表情をしつつ、改めてモール内を見てみると確かに女性ウケしそうなお店ばっかりだった。


「噂には聞いてたけど……うん、これなら確かに私達だけでも大丈夫そうね」


 大丈夫そう?


「せやろー?ここならまず男の人は少ないし、居るとしても彼女さんの付き添いやろうから安心や!」


 安心?どういうことなんだろう?


「鈴、鈴」


 安心したようにそう言うさーちゃんにとらちゃんが説明するのを見て僕が首を傾げていると、それを見たさーちゃんが小声で僕に話かけてくる。


 なるほど、女の子だけだとナンパとか誘拐とか襲われたりとかそういった心配もあるのか。

 またひとつためになった。


 とらちゃんがこちらに背を向けている隙にヒソヒソと耳元でさーちゃんに教えてもらい、僕はなるほどと腕を組んで頷くのだった。


 僕は力なら並の人よりもあるし、何かあったら僕が守らなきゃ。それに女の子を守るのは男の義務みたいなものだしね。


 こちらを振り向いて早く行こうと楽しそうに笑顔で急かしてくるとらちゃんを見て、僕はそう思うのだった。


 ーーーーーーーーーー


「それで先ずは何処から行く?」


 立ち並ぶお店の中、いつも通り沢山の人に見られながらも僕は歩きつつ2人にそう聞く。


「せやなぁ、ここはやっぱり定番通り服から見に行くのがええと思うんやけど…………さなっちはどう?」


「アタシもそれでいいと思うわ、鈴もそれでいい?」


「えっ!あっぼ、僕!?」


 いっ、いきなり振ってこられても!

 えーっとえーっと!

 とっ、とりあえずここは合わせて……


「う、うん!僕もそれでいいと思う……け…ど………」


「ん?すずやん?」


「鈴?」


 とらちゃん達の後をついて行ってた僕は突然足を止めて、お店の中をじーっと見つめる。

 そして僕が足を止めたのに気がついた2人はどうしたのかとこちらへ戻ってきて、僕の見ている方を2人も見る。


「すずやんなんか気になるのがあったん?どれどれ〜って……宝石店?すずやんって意外と……」


「……おいしそう…………」


「………え?…すずやん今……なんて?」


 ニヤニヤっとした顔でからかってこようとしたとらちゃんなど目もくれず、僕はお店の中にある宝石を見てボソリとそう呟く。


「あの真ん中のやつがっ!?いっ、いたいっ!さーちゃん!?」


「ほら、先ずは洋服見に行くんでしょ。さっさと行くわよー」


「分かった!分かったから引っ張らないでー!」


 ゴチンッ!という音がしそうな程の威力でさーちゃんにゲンコツを貰い、僕はそのままさーちゃんに手を引っ張られ宝石店の前を通り過ぎる。


「あっ、ちょっ!二人共まってーな!」


 そしてさーちゃんに洋服店へと連行されていかれる僕の後ろを、とらちゃんがトタトタと追いかけるのだった。

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