第86鱗目:意外な事実、龍娘!
「すいません大声出しちゃって……」
「はっはっはっ!気にせんでええ、ええ!おべっかで似とる言うてくる奴よりよっぽど好感持てるわ!」
びっくりしたぁ……まさかこの人がとらちゃんのお父さんなんて…………でも良かった、思ったよりも怖い人じゃなさそうで。
見た目はともかく。
とらちゃんの横に座っている見た目完璧にヤクザなとらちゃんのお父さんは、頭を下げる僕達を前に心底楽しそうに腹を抱えて笑いながらそう言ってくる。
「それじゃあ改めて、俺は虎白の父の朱雀峯雅紀ちゅーモンや、いつも娘に優しくしてくれてありがとうな。虎白も昨日の夜もどれ着ようどれ着よういうくらい皆が────」
「わー!わー!わー!そや、父ちゃん!すずやんになんか用があるんやなかったっけ!?」
えっ。僕に用!?
僕なんかとらちゃんのお父さんにやらかしてた!?
「おっと、そうだった」
可愛いなぁだなんて油断してとらちゃんを見ていた僕はいきなりこちらに話があると言われ、なんだろうとビクビクしそうになるが。
次の瞬間、僕は、いや僕だけでなくさーちゃんもまた固まってしまう。
なぜなら……
「この度は君、そして君の親族へ大変な迷惑をかけた事をHSK会長として心より謝罪する」
雅紀さんが僕へと深く頭を下げ、そう言ってきたからだ。
ーーーーーーーーーー
本州総合放送協会、略してHSKは本州における放送局の総締めであり、本州にある放送局へ絶大な権力と影響力を持っていると言われている。
そんなHSKの会長という雅紀さんが何故僕へ頭を下げたのかというと、それは僕が日医会から出た頃の出来事が原因である。
今ではもう殆ど無くなったが、あの頃僕が散々迷惑をかけられた放送局の大半がこのHSKが上部にある放送局だったのだ。
「なるほど、そういう事だったんですね」
「あぁ、君には本当に沢山迷惑をかけた。謝って許される事じゃないが……本当にすまなかった」
雅紀さんに頭を上げてもらい色々と聞かせてもらった僕は、三浦先生が雅紀さんの力を借りて僕をメディアから守ってくれていたことを知った。
「まさかあの三浦さんと虎白ちゃんのお父さんが裏でそんな事やってたなんてね…………てっきり虎白ちゃんのお父さんってやばい仕事してるのかと」
あ、さーちゃんそっちなのね。
確かに僕も名刺とか貰うまで信じられなかったけどさ。
「いやそっちなんかい!というかウチはさなっちとたかくんがすずやんの家に住んでる事の方がびっくりや!」
「まぁできるだけ秘密にーって事だったし、そもそも聞かれてなかったからねー」
ぺっちんぺっちんと机を叩きながらそう言ってくるとらちゃんを見て、僕はとらちゃんの頭をなでながらそう言う。
さっきの雅紀さんの話を聞いた後、ここまで関係があるならと言うことで僕とさーちゃんは少し話し合い、2人が僕の家に住んでいることとその理由を伝えた。
勿論、僕が元男という所は伏せたままだが。
「それじゃ父ちゃん、そろそろお願いできる?」
「あぁ、でもその前に最後にひとつ天霧さんにお願いが……」
お願い?なんだろ。
「1枚でいいから一緒に写真撮らせてくれんか?」
「へ?」
写真?写真ってあのパシャってやるやつだよね?お願いってそんな事?
「ウチの父ちゃんなぁ、有名人と一緒に写真撮るのが夢でな?その為だけに頑張って会長にまでなったんよー」
「ちょっ!?虎白!余計な事言わんでええ!」
「あっはっはっはっ、ゆるひてほおひゃん」
なんか雅紀さんって…………ちょっと意外だったけど、思ってたよりも可愛いというお茶目というか……
逃げようとしたとらちゃんをとっ捕まえて顔をムニムニとする雅紀さんを見て、僕はほのぼのとそう思うのだった。
ーーーーーーーーーー
あの後雅紀さんと写真を撮って案の定翼を触られたりしてから、僕達は今日とらちゃんの家に来た目的である買い物へ行く為車へと乗り込んでいた。
「本当に大丈夫なんか?翼ぐにょんってなっとるが……」
「大丈夫です大丈夫ですー、僕の翼って意外と可動域広いんですよー」
椅子を出せば最大6人は乗れるであろうワゴン車の1番奥で床に直座りしている僕は、翼爪を膝の上に持ってきて翼が天井に当たらないようにしていた。
「初めて見た時は驚くわよねぇあれ、あんなに翼動くなんて思わないもの」
「ウチも最初見た時は驚いたわ、というかすずやん床に座らせて悪いなぁ」
「いいよいいよー、僕が椅子に座ったら天井に翼当たっちゃうし」
というか乗る時当てちゃったし。
「それじゃあ雅紀さん、今日はよろしくお願いしますね」
「あいよ、それじゃあ行こうか」
「しゅっぱーつ!」
クゥアーカッカッカッカッと言うようなエンジンのかかったた音が聞こえると、車はゆっくりと僕達をのせて動き出す。
さて、もうなんか色々あったけど今日の目的はお買い物!おしゃれに言うならショッピング!
楽しむぞー!
僕は心地よく揺れる車の中でそう張り切るのだった。
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