第85鱗目:待ち合わせ!龍娘!
「お、きたきた!さなっちー!こっちやこっちー!」
学校の近くにある公園で待ち合わせ相手であるさーちゃんの姿を見つけたとらちゃんは、そう言ってさーちゃんに向かって元気よく手を振る。
そしてそんなとらちゃんにさーちゃんも手を振り返す。
「さなっち早かったなぁ、それで肝心のすずやんは?」
「鈴?ふふっ、鈴はね、あっちよ、あっち」
さーちゃんが手を上にあげたのを見て僕は翼を窄め、ロングスカートの裾をバタバタ言わせながら急降下を開始する。
「あっちって……うぉぉ!?なんや!?」
急降下していた僕はとらちゃんが上を見上げた所で翼を激しく羽ばたかせて減速し、とらちゃんとさーちゃんから少し離れた場所に降り立って笑顔で手を振る。
「とらちゃんきたよー!」
ーーーーーーーーーー
「こんなに髪の毛ボサボサにしちゃって……これでよしっと」
「えへへ、ありがとさーちゃん。それじゃあとらちゃん、改めてよろしくね!」
「うむ!任しとき!」
僕は空を飛んでる時に風でボサボサになってしまった髪をさーちゃんに整えてもらい、改めて集合した僕達はとらちゃんに案内されて歩き始める。
今日僕達が集まったのは、先日とらちゃんからさーちゃんへ「明日いつもの5人の女子だけで買い物行かへん?」という提案が来たからだ。
最初は行く気無かったんだけどね……これでも中身は男なんだし、でも「虎白ちゃんがっかりするでしょうねー」なんて言われたら断れないじゃないか……
そして今はとらちゃんのお父さんが今日の送迎を受け持ってくれるという事で、僕達はとらちゃんの家へと向かっているのだった。
「それにしてもえらい驚いたで!まさかほんまに空飛べるなんて思ってもおらへんかったからなぁ」
「まぁ実際に見るまでは信じられないわよね、アタシもこの目で見るまで信じてなかったし」
飛べると思われてなかったのか…………いやまぁ自分の目で見ないとやっぱり信じられないか。
「でもやっぱり飛んできた方が色々と楽だったわね」
「うん、すっごい楽だった」
さーちゃんにそう言われて僕もコクコクと心底そう思っている様に頷き、早速集まってきている人達を見てはぁとため息をつく。
そう、僕がわざわざ皆と別れて空を飛んで来た理由は至極簡単で、少しでも僕が外を歩き回るとこんな風に人が集まってくるからだ。
ほんと、いつでも僕が外に出る度に出来上がるもんなぁこの人の山…………暇人が多い事多い事。
集まってきている人が近づいて来ないよう、僕は定期的に翼を大きく広げて威嚇のような事をしつつ、とらちゃん達と楽しくお喋りしながら歩く。
そうして暫く歩いていると、畔に柳が生えている川の向こうに長い白壁がある道へと僕達は出る。
そういやとらちゃんの家ってお金持ちだったよね、この白壁のお家がとらちゃんの家だったりー…なんてね。
「ここいいわね、柳がいい感じの雰囲気出してるわ」
「そうだね、風流があるというかなんというか。とりあえずいい感じ」
「ウチも好きなんよここー。さっ、着いたでー!ここがウチの家や!」
僕がそんな事を話したり考えたりしながら歩いていると、とらちゃんが橋の前で足を止めてそう言う。
僕はもしかしてと思いながらとらちゃんの指さす橋の先を見る、するとそこには先程の白壁に挟まれた立派な門があった。
ーーーーーーーーーー
…………庭も凄かったけど……それ以上に家もでかい!凄い!
とらちゃんに連れられて門をくぐった先にあったとても綺麗な庭を通り過ぎた僕は、さーちゃんと一緒にこれまた大きな玄関の前でぽかーんと立ち尽くしていた。
「ただいまやでー!ほら2人もぼーっとしとらんではよ入り!」
「え、えぇ……わかったわ…」
「おじゃましまーす……」
とらちゃんに手招きされて立ち尽くしていた僕達は恐る恐ると家に上がり、とらちゃんに連れられて客間のような場所へ通される。
「なんというか…………凄いね…とらちゃんの家……」
「そうね……お金持ちっていうのは知ってたけど…………まさかここまでとは」
そんなお上品な書院造りの部屋で僕達は座布団に座ってとらちゃんを待ちながらも、想像より遥かに豪華な家にソワソワしていた。
「鈴、絶対物とか触るんじゃないわよ。もし壊したりなんてしたらいくら払う事になるか……」
「壊さないよ!?それにまず触らないからね!!全くもう……」
隆継じゃないんだからそんな事しないよ……
「なんや賑やかにやっとんなぁ、はいお茶」
襖を開けて入ってきたとらちゃんがそう言って僕達の前にお盆からお茶を置いていく中、僕とさーちゃんはガッチガチに固まってしまう。
なぜなら……
「あ、ありが虎白ちゃん。それでー……後ろのその方は……?」
浴衣のような服を着て髪の毛をオールバックにし、黒サングラスをかけた細マッチョなTheヤクザ風の人がとらちゃんの後ろに居たのだ。
そしてその人が誰かととらちゃんへさーちゃんが聞くと、とらちゃんはあっはっはと笑って。
「こん人はなー、ウチの父ちゃんなんやでー」
「虎白の父の朱雀峯雅紀や、いつもウチの娘によーしてくれてありがとな」
そう言うとらちゃんと余りにも似てないこの人がとらちゃんのお父さんということに、僕達は思わず。
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
そう叫ばずには居られなかった。
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