第81鱗目:飛翔!龍娘!
空へと飛ぶ事ができた僕は、飛ぶ事が出来たという達成感と共に、今まで自分を縛り付けていた全てから解放されたような解放感を味わっていた。
しかしその解放感は徐々に興奮へと変わって行き……
すごい…………すごい!すごいすごいすごいすごいすごい!飛んでる!飛んでるよ僕!すっごい!いまならどこまででも………!
『鈴ちゃんストップ!!止まって!』
『鈴香、止まれ!Haltu!』
「!……うわっととと!おちるおちるおちる!」
通信機から聞こえた三浦先生の言葉を聞き、高度をグングンと上げていた僕は本当に一瞬だけだが、ビタッと全ての動きを止める。
一瞬だけとはいえ空中で止まってしまい危うく落ちそうになるものの、僕はなんとか体勢を立て直してふぅと息を吐く。
危ない危ない…………というか一体僕は何をして……
しかしどうやらその一瞬が効いたようで、僕は落ち着く事が出来たが。
『鈴香、落ち着いたか?』
「あ、三浦先生。大丈夫です、なんとか体勢立て直せました。というかなんかすっごい高い所まで来ちゃってます!うひゃあー!たっかーい!」
おーおーおー、車がゴマ粒みたいに小さーい!
落ち着いても違うことでテンションが上がり、その場でホバリングしながら僕は辺りをキョロキョロと見回していた。
『そうじゃないんだが……まぁいい、とりあえず高度を下げながら自由に無理せず飛び回ってみてくれ、範囲は山の裾までだ』
「わかりましたー!よーし、飛ぶぞー!」
最初に怖がっていたのが嘘のように三浦先生の言葉へ元気に返事を返し、僕は山の上空を飛び回り始めたのだった。
ーーーーーーーーーー
───でね鈴ちゃんったら───────鈴らしいです──────だいぶ────だな───ふふふっ─────ははは─────────
なんか…………賑やか…………?
────翼が───尻尾───かわいい───お───ぞしだした────きるかな?──起きるで────────
「んむぅ…………ぅあ?」
「お、やっぱり起きた」
「鈴ちゃんおはよ、よく寝れた?」
隆継に……ちー姉ちゃん?
「はいお水、ぐっすり寝てたわね」
さーちゃんも………えーっとたしか……………そうだ、パーティーの途中で僕寝ちゃったんだった。
飛行実験が終わり、最初落っこちた為一応精密検査を受けた僕が家に帰ると、さーちゃんと隆継が僕の初飛行のお祝いパーティを準備してくれていた。
そして一緒に来てた三浦先生や陣内さん達と共に座敷で皆とご馳走を食べている内に、僕は流石に一日中飛び回って疲れたのか寝てしまった。
「ぷはっ……三浦先生達は?」
「流石に時間も遅いからってさっき帰ったよ。さっ、鈴ちゃんお風呂入ってスッキリしておいで」
「ん……ふわぁぁぁ…………わかったぁ…………」
目をくしくしと手で擦りながら起き上がった僕は、体温でいい感じに温まった尻尾を抱っこしたままお風呂へと向かう。
脱衣場へとついた僕は尻尾を手放し、するするっと僕用に魔改造された服を手馴れた速さで脱ぎ、タオルを1枚持って風呂場へと入る。
今日は疲れたけど楽しかったなぁ…………久しぶりに皆とも会えたし、それに今日は空まで飛んじゃったんだから。
わしゃわしゃと髪の毛を洗いながら僕は今日あった事を思い返していた。
外に出てから会えなくなった皆と会えた事、空を飛べたこと、戻ってきたら記者が沢山いた事、記者の人達をすっごい驚かすことが出来た事。
そんな事を一つ一つ思い起こしながら髪の毛を洗い終えた僕は、洗いやすいよういつものように自分の横に持ってきていた翼を一撫でする。
ありがとう、これからもよろしくね。
あの商店街に縛られていた僕を先へと進ませてくれただけでなく、様々な人と出会わせてくれた翼へと僕は優しく微笑みかけるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます