第79鱗目:久々!龍娘!

「皆さんお久しぶりでーす!!」


「姫ちゃん久しぶり!元気にやってた?」


「元気そうッスね姫ちゃん!」


「久しぶりね姫ちゃん、学校生活楽しんでるー?」


「鈴香ちゃん会いたかったよー!!!」


 陣内さんの運転するトラックから降りた僕は、日医会でお世話になった馴染みの顔が並んでいるのを見て一目散に駆け寄り、皆と楽しげに色々話をし始める。


「─────でね、初めてカブトムシ捕まえたんだよ!」


「おぉ!凄いっスね姫ちゃん!今度見に行っていいっすか!?」


「いいっスよー!」


「姫ちゃん、楽しむのもいいけどちゃんと宿題もやってる?」


「大丈夫だよ大和さん!少しずつやってるから!」


 皆元気そうでよかった、久しぶりに会うからちょっとだけ不安だったんだよね。


 元気な皆を見てよかったと僕が心の底から思っていると、柊さんと花桜さんが別の車から出てくるのが見えた。

 僕は2人を見て皆に少し2人と話してくるといい、トタタタタと2人の元へ走っていく。


「柊さん!花桜さん!お久しぶりです!」


「やぁ姫ちゃん、元気にしてたかい?うちの姪と仲良くやれてるか?」


「私の息子もね、迷惑かけてない?」


「迷惑だなんてそんな!僕の方こそ色々助けてもらってますし、毎日とっても楽しいです!」


 頭を撫でてきながらさーちゃんと隆継のことを聞いてくる2人に、僕は両手を振りながら毎日楽しく過ごしていると伝える。


「それならよかった、それじゃあ今日の実験頑張ってね」


「おじちゃん達も全力でサポートするからな」


「はいっ!今日はよろしくお願いします!」


「お前ら集まれー」


 ぺこりと僕が2人にお辞儀をした所で、準備が整ったのか三浦先生が手を叩いてこの場にいる人全員に招集をかける。


 さて、それじゃあやりますか!


 僕は気合十分でこれからやるお仕事、つまりは実験に向かうのだった。


 ーーーーーーーーーー


「ねぇ三浦先生、これ本当に着とかないとダメですか?すっごい蒸し暑いんですけど……」


「一応念の為、そんで各種報道機関も後で来るからそれへの「ちゃんと身の安全を確保してます」というアピールだ」


 だからってこんな真夏日にこんな……こんな分厚い軍隊の戦闘服みたいなの着せなくても……これなら女の子ーって格好させられる方が………いや、それよりはこっちがいいや。


 トラックの中で実験用に用意された濃ゆい黒緑色のまるで戦闘服のような、隙間ひとつない厚手の服へと着替えた僕は尻尾をだらーんとさせていた。


「それに初めての野外飛行実験だからな、鈴香が着地に失敗してもいいようにだ」


「むっ!絶対失敗なんてしませんよーだっ!」


「はははははっ、そうしてくれ。さて、それじゃあ通信機とサンバイザーを装備してくれ、いよいよ実験開始だ」


 ニヤッと意地悪く笑う三浦先生に、僕はべーっと舌を出しながら抗議する。すると三浦先生は愉快そうに笑い、僕へ次の指示を出してきた。

 そう、今日の実験は以前1度やった飛行実験、それを今度は今朝僕達がカブトムシなんかを取った山の一角にある野外の実験場で行うのだ。


「まいくてす、まいくてす、こちら天霧鈴香、通信聞こえてますでしょうか、どうぞー」


『こちら天霧千紗、感度良好、鈴ちゃんの可愛らしい声がきちんと聞こえます、どうぞ』


 かっ、可愛らしいって……ちー姉ちゃん恥ずかしいこと言うなぁ………まぁさーちゃんとかとらちゃんより声高いけどさ。


『報道陣が山中手前まで来たと報告があった、少し早いが鈴香はそろそろ飛行準備をしてくれ、あいつらが来る前に1度試してみろ』


「わかりました。それじゃあ……」


 僕はカチャリと飛行機乗りのようなもこもこの帽子に着いているサンバイザーを下ろし、きゅっと帽子の紐を止める。

 そして。


「天霧鈴香、飛行実験開始します!」


 その言葉の後、成功させるという強い意志と共に、僕は大きく翼を広げた。

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