第77鱗目:荷解き!龍娘!

「いやー、疲れた疲れた。なんとか終わってよかったよー」


「だな、あー疲れた。鈴香は手伝ってくれてありがとうな」


「鈴が居なかったらこれの3倍は時間かかってたわね。すっごく助かったわ、ありがとね鈴」


「えへへ〜♪どういたしまして〜」


 お昼前、業者さんの持ってきた2人の荷物を部屋へと運び終えた僕達3人は、先程まで荷物で埋まっていた座敷で寝っ転がってたり座っていたりと、思い思いの格好で縁側から入ってくる風を浴びて涼んでいた。


 いやー、思ったよりも量が多くて意外と大変だったよ。

 というかさーちゃんの荷物は多い割に比較的軽いの多かったのに、隆継の荷物は少ないのに重たいのが多かったなぁ。


 ころんとうつ伏せに寝転がってる僕は、さーちゃんに頭を撫でられて心地よさそうに頬を緩め、尻尾の先をゆらゆらと動かしていた。


「皆お疲れ様ー、お昼ご飯にそうめん用意しといたよー」


「おぉ!ありがとうございますお姉さん!」


「そうめんだー!ちー姉ちゃんありがとー!」


「働いて暑かったですし、丁度いいわね。ありがとうございます」


 ぱすんと襖を開けて座敷に入ってきたちー姉ちゃんに僕達がそう返事をすると、ちー姉ちゃんはニコッと笑顔になる。


「いいよいいよー、せっかくだしこっちで食べようか。鈴ちゃん机出してくれる?」


「はーい!」


 僕達の返事を聞いたちー姉ちゃんは笑顔で隣の座敷にある机を指さしながら僕にそう頼むと廊下へと戻って行き、残された僕は机を片手で持ち上げて持ってきたのだった。


 ーーーーーーーーー


『─────ので、ニホンヤマネは生きた化石という貴重な生き物なんですねぇ。それでは今日はここまで、また次回お会い致しましょう』


 ふぅ…………ニホンヤマネ可愛かったなぁー、ちっちゃくてふわふわしてそうで。この山にも居たりしないかな?


 ちゃーららーと軽快な音楽で締められた動物番組を、お昼ご飯を食べ終えてゆっくりしていた僕はそんな事を考えながらリビングで見ていた。


 僕の尻尾ももふもふしてたら…………いや、抜け毛とかで掃除がヤバそう。さて、2人は荷解きしてるし、ちー姉ちゃんは日医会行ってるし……

 僕は何をしようかなぁ……


 ソファーにちょこんと座っているまま、僕は自分の尻尾を横から前に持ってきて抱き抱え、ゆらゆらと体を揺らしながら何をするか考えていた。


 あっ、いいこと思いついた。


 ーーーーーーーーー


「手伝いに来たよ!」


「来るのはいいけどノックくらいしなさい?」


「ごめんなさーい」


 何もやることがなければ手伝いという名目で遊びに行けばいいじゃない、そう思いついた僕はとりあえずリビングから近いさーちゃんの部屋へと来ていた。


「それで、荷解き手伝ってくれるの?」


「うん、僕でいいなら手伝えるのは手伝うよー」


「ありがとう鈴、助かるわ。それじゃあ……そうね、そっちの箱を開けてくれる?」


「はーい」


 僕は返事をするとナイフを作り、さーちゃんの指さしたダンボール箱のガムテープを切っていく。すると中から出てきたのは。


「…………洋服?」


「そっ、部屋着として着る服よー」


「おぉー…………なんというか………なんだこれ?」


「ふふっ♪ツッコミたくなるでしょ?」


 さーちゃんが部屋着という広げさせて貰った1枚のシャツには、でかでかと無駄に上手い達筆で「あめりかーんどっぐ」と平仮名で書いてあった。


 確かにツッコミたくなるけど…………それ以上にさーちゃんらしくない服で驚いてるというか……


「鈴、アタシらしくないって思ったでしょ?」


「何故バレた」


「顔に出てたのよっ」


「あでっ、でもさーちゃん自分で自分らしくないって思ってるならなんで買ったの?」


 くすくすと笑うさーちゃんにデコピンされた僕は、おでこを抑えながら首を傾げてさーちゃんになんでかを聞いてみる。


「買ったんじゃなくて送られて来たのよ、アタシの親からね」


「親?」


「そっ、親。仕事先が海外なの。だから色々なお土産とか送ってくるんだけど、その1つがこのツッコミどころ満載のTシャツ達よ。お土産のセンスが壊滅的なのよねー」


「なっ……なるほど…………」


「せっかく送って貰ったんだから着てあげたいじゃない?それに着てれば少しはお父さん達の気持ちも味わえるかもだし」


 少し寂しそうにフッと笑うさーちゃんの横顔を見て、僕はさーちゃんを翼で包み込み、少し背伸びをして頭を撫でてあげる。


「あら鈴、慰めてくれてるのかしら?」


「なんかちょっと寂しそうだったから、ごめん勝手に頭撫でて」


 背伸びをやめてバサッと翼を元に戻し、翼で包み込むようにしていた状態からさーちゃんを解放する。


「別に嫌じゃないわ、でも…………そうね、鈴」


「なに?」


「今日の晩御飯は一緒に作りましょうか」


 さーちゃんは笑顔でそう言うと僕の頭を押さえつけていた手で、よしよしと僕の頭を撫でてくる。


「うん!もちろん!」


 僕とさーちゃんはこうしてまた少し仲良くなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る