第75鱗目:最終日!龍娘!
「では皆さん、高校生になって初めての夏休みだからといって羽目を外し過ぎないよう、夏休みを満喫してくださいね!それじゃあ解散!」
終業式が終わった後、そう言って代永先生がSHRを終え教室を出ていくと、教室の中はさっきまでの静かさが嘘のように賑やかになる。
ある人はこの後どうするとクラスメイトと話し始め、ある人は友達と共に教室を出ていき、ある人は1人で黙々とやりたい事を始める。
クラスメイトが様々な行動を始める中そんなクラスメイト達の例に漏れず、僕の周りにもいつものメンバーが集まっていた。
「すずやんすずやん!いよいよ夏休みやでー!何する?何する!?」
「うーんそうだなぁ……宿題してー……お手伝いしてー……………………」
んー…………こんな感じかな?
僕は腕を組みながら目を閉じ、例年通り手伝いで学費なんかを貯めていた夏休みを思い出して、こんなものかとそこで言葉を止めて1つ頷く。
「…………え?天霧さんもしかしてそれだけ?」
「嘘やろすずやん?」
「遊んだりとか……好きな事したりとか…………」
「鈴…………流石に嘘よね?」
「えっ?何が?」
暫くの無言の後、僕が目を開けると皆は絶句したような顔をしていて、それを見た僕が首を傾げると4人は僕に背を向けて顔を近づけひそひそと話し始める。
「ねぇ薄々気づいてはいたけど、すずやんって今まで一体どんな生活してたん!?普通の学生生活送ってたん!?」
「知らねぇよ!ていうか俺だって驚いてるよ!なぁサナ!」
「えぇ、流石に鈴でも夏休みくらいはって……」
「とりあえずあれだ、皆分かってるな?」
「もち!」「おう!」「うん」
な…なんか皆すっごい深刻そうだけど…………そこまでなの?
「えーっと、皆ー?」
こそこそと話をしている4人の会話を聞き取れてしまっていた僕がおずおずと4人へと声をかけると、4人はぐるんと僕の方に振り向いてきて。
「すずやん!」「鈴香!」「鈴!」「天霧さん!」
「ひゃいっ!?」
「「「「夏休みは色々やろうな!」」ね!」」
「はっ、はいぃぃ!!」
僕は皆に肩を掴まれてそう言われたのだった。
ーーーーーーーーーーー
「といっても今日はやる事あるし、さっさと帰ったんだけどね」
「鈴ちゃんどうしたの?」
「なんか言っておかないといけない気がした」
「そ、そうなんだ……とりあえず私は飾り付けしてくるね」
そういうちー姉ちゃんに僕はお願いと言うと、いい感じに湯だったお湯へと薄い豚肉を1枚1枚入れる。
やっぱり夏だから冷たいのがいいよね、でも冷たいのばっかりだと体冷やしちゃうから暖かいのも一緒に作らないと。
ササッと湯に通した豚肉を湯切りし、豚肉の入った網を用意しておいた氷水へと漬ける。
さて、今のうちに準備を……っと。
さっきまで豚肉を通した鍋があったコンロの場所へと、次は油の入った揚げ物用の鍋を置いて火にかけ、油を温め始める。
そしてその横でトトトトトと手早く野菜を切り、お皿の上へと盛り付ける。
こんな感じかな?よしっ、それじゃあ冷やしてた豚肉を上げてっと。うひゃー!冷たーいっ!
さてさて!今のうちに寝かせといた奴を取り出しときましょうかね。
充分冷えた冷しゃぶ用の豚肉を野菜を盛り付けた皿に盛り付け、僕は冷蔵庫から寝かせておいた唐揚げ用の鶏肉を取り出す。
うーむ、我ながらやっぱりいい出来だ。
「鈴ちゃーん、会心の出来なのは知ってるけど見惚れてる暇ないでしょー」
「おっとそうだった。ありがとちー姉ちゃん」
僕はちー姉ちゃんにお礼を言うと、冷蔵庫の中にある僕お手製の手作りケーキから目を離し、次の料理の用意を始める。
とりあえず油が温まるまでにサラダを作らないと!んー!忙しいっ!でも楽しいっ!
両手だけでは足りず、時には尻尾でお玉を持って他の料理をかき混ぜたりしながら、忙しくも楽しんで僕は笑顔で料理をしていた。
そして時間はあっという間に過ぎ去り……
「ふぅ、こんなもんかな?」
「すごいすごい!鈴ちゃん凄いよー!ご馳走だねー!」
「こんな豪華なのを用意したのは初めてだよー。うむ、我ながら会心の出来」
机の上に並べられた色々な料理を前に僕とちー姉ちゃんがはしゃいでいると、玄関のチャイムが鳴らされる。
「はいはーい!今行きまーす!」
僕はそのチャイムに返事しながらトタタタとリビングを出て玄関へと向かう、そして玄関を開けるとそこには人が2人立っていて。
「いらっしゃい!そして今日からよろしくね!隆継!さーちゃん!」
「あぁ、よろしくな鈴香」
「よろしくね、鈴」
「うん!」
僕は今日からこの家に住む事になるさーちゃんと隆継の2人を迎え入れたのだった。
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