第67鱗目:初外出!龍娘!
大丈夫かな?大丈夫だよね?夏にお店のお手伝いで見たお姉さん方もこんな感じだったし、多分これで大丈夫なはず………………だよね?
何故か最初から部屋にあった姿見の前で僕はスカートをひらりひらりとさせながら、服装が変じゃないかどうか確認していた。
そんな僕の今の格好はスカートに薄いベージュのロングスカート、上は胸元に猫のワンポイントがある白の袖無しTシャツという格好だった。
うん、大丈夫だと思うけど…………一応ちー姉ちゃんにも確認してもらおうかな?
それがいいと僕は頷き、部屋を出ようとドアの方へ振り向くと丁度振り向いた時に外行きに着替えたちー姉ちゃんがドアを開けてきた。
「Good timing!」
「んおっ?なんか鈴ちゃんが可愛いことやって来た」
「こほんっ、それはともかくどう?変じゃないとは思うけど」
「んー………………確かあったかな?」
テンション高めの顔でビシッと体を前のめりにしながらちー姉ちゃんを両手で指さした後、僕は一つ咳をしてひらりと軽く一回転してみる。
するとちー姉ちゃんは少し顎に手を当てて考えた後、僕のクローゼットから少し向こうが透けて見える程薄手の薄灰色の服を取り出して、それを僕に羽織らせる。
「一応、腕の鱗とかも隠しといた方がいいかもだしね」
なるほどそういう事だったのか、確かに気味悪がられたりとかはしなさそうだ。
学校に登校した初日に一部女子生徒に嫌そうな顔をされていたのを思い出して、僕はちー姉ちゃんの言い分にうんうんと頷く。
「それじゃあ、行こっか?」
「うん!」
僕は元気よく返事を返し、ちー姉ちゃんと一緒に部屋を後にした。
ーーーーーーーーーーー
外行きの服、とはいっても陣内さんが居ない為今日はトラックは使えないので、動きやすい服装の僕達は歩いてスーパーへと向かっていた。
「ちー姉ちゃんちー姉ちゃん」
「なぁに鈴ちゃん」
「なんか今いけないことしてる気分」
「あらあら」
この姿になって初めて自分の足でどこかに行くという事に、僕はやっちゃいけないことをしてるようなそんな背徳感を感じていた。
別に歩いてもいいんだけどね?もう三浦先生からの許可も出てるらしいし、なんの問題もないんだけど………やっぱりこう…初めてだからね?
ふふふと笑うちー姉ちゃんを横にカチコチと少し硬い動きで僕達が歩いていると、道の横にある畑で作業しているおじさんとおばさんが居た。
「こんにちはー」
「はいこんにちは。っておぉぉ!?」
「あんた何騒いでんの……あら?あらあらあらー!もしかして最近テレビでよく見るお嬢ちゃんかしら!?」
ぺこりと僕が挨拶をするとおじさん達は集中してたのか気がついてなかったらしく、おじさんは尻餅をつくくらい驚いていた。
そしておばさんは軍手を外しながら僕へと近づいて来る。
「本当に翼と尻尾が生えてるのねぇ、すごいわぁ。それはそうとお嬢ちゃん大変だったでしょ?あんなに人が押しかけてきてねぇ」
こ…このおばさんなんか押しが強い…………でも悪い人じゃなさそう。
「あはは、すいません迷惑かけて。今は何をしてるんですか?」
「なぁに、迷惑なんてかかってもないよ!今かい?今はきゅうりとか野菜の収穫をしようとしてた所だよ。ほらあんた、いつまでもこんな可愛い子の前で腰抜かしてないで立ちな!」
「お、おう」
僕はおばさんにそう言われて立ち上がろうとしたおじさんに手を差し伸べる。するとおじさんは少し驚いた様子だったが僕の手を取ってくれた。
「ありがとな嬢ちゃん、それに外行きの服だろうに手を汚して悪かった」
「あっ、そういやそんな服だった」
いかんいかんうっかりしてた。手汚れちゃったけど……どうしよう……
「はっはっはっ!ほら嬢ちゃん手ぬぐいだ、それとそこに居るお姉さんには悪いが少し待っててくれ」
どうしようどうしようとワタワタしていた僕におじさんは手ぬぐいを渡すと、そう言って畑の奥に行ってしまった。
それから暫くおばさんとお話したり翼触られたりしていると、おじさんが袋を持って戻ってきた。
「ほれ、嬢ちゃんにプレゼントだ!龍だから肉食なのかもしれんがその前に人間だからな、ちゃんと野菜も食わんとべっぴんさんになれないぞ?」
「はうあーっ!いいんですか!?こんなに貰って!」
「おう!嬢ちゃんがいい子だからな、特別だ!」
そう言って渡された袋にはトマトやきゅうり、ナスなんかの野菜が沢山入っていた。
「ありがとうございます!野菜大好きなので美味しく食べさせてもらいます!」
「良かったね鈴ちゃん!」
「うん!」
「喜んでもらえて嬉しいねぇ!あぁそうだ、嬢ちゃん達の家は最近建ったあの家かい?」
「?はい、そうですが」
「おじちゃん達の家は嬢ちゃん達の家の坂を降りてまーっすぐ行ったところにあるから、何か困った事があればいつでもおいで」
「はいっ!」
おじさんはニカッと笑いながらそう言って軍手を外した手で僕の頭を撫でてくれる、僕はおじさんに返事をしてそのゴツゴツとした手の感触を頭に感じつつ心地好さそうに目を閉じる。
「おっと、せっかくの外行きなのに長々と引き止めて悪かったね。楽しんでらっしゃい」
「はい!おじさんおばさんまたね!」
「またおいでー」
「楽しみにまってるわねー」
僕達は手を振るおじさんとおばさんに手を振り返し、またスーパーへと歩き始めたのだった。
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