第68鱗目:噂の!龍娘!
「えっ!あれって龍娘じゃない!?」「まじか!写真写真!」「すっげぇ…まじで尻尾動いてるじゃん」「ていうかなんか可愛くね?」「体ちっちゃーい、歳幾つなんだろ?」「翼でけぇ……」
わかってた、うん、わかってたよ…………
「うぉぉ!!翼動いた!」「尻尾すっげぇなげぇ」「隣にいる人家族かな?」「頭のあれって角だよな?」「どこか行くのかな?」「ここら辺に住んでるのか?」「目が緑だ」「尻尾めっちゃしなってる」
注目とか写真撮られるのはわかってたけどさ!そんな道行く人全員が僕見てこなくていいじゃん!しかもさっきから横を通る人全員が翼とか尻尾触ろうとしてくるんだけど!?
「勘弁して……」
「鈴ちゃん大丈夫?」
「もう、個人の尊厳とかないんだなぁって……」
「あぁ、写真とかね」
「うん……本当に勘弁してほしい」
そんな僕の言葉にしてしまった通りの心境を表すかのように、尻尾は元気なく垂れ、翼はほんの少しだがきちんと畳まれずに広がっていた。
「これは本当に何らかの形で手を打つべきね」
「ちー姉ちゃんぶつぶつ言ってないで早くスーパー行こ」
「そうだね、早い所買い物済ませて帰っちゃお」
僕達はそう話すと手を繋いで早歩きでスーパーへと向かった。
ーーーーーーーーーーー
「おかしが…………おかしがたくさん…………!!!」
口を開けて目をキラッキラさせながら僕は買い物の途中、スーパーのお菓子コーナーを前にて足を動かせずにいた。
おかしだ!おかしだー!ふわぁぁぁ……全部美味しそう……!…でも買い物の途中だし、でもおかし…買い物…おかし……
そんな葛藤がとうとう体に現れ、僕はその場で足踏みしながらぱたぱたと翼を動かしつつちー姉ちゃんの方とお菓子コーナーを交互に見だす。
そしてそんな僕を見ていたちー姉ちゃんは一言。
「いいよ鈴ちゃん、お菓子選んでおいでー」
「ほんと!?やったぁ!!」
あぁもう可愛いなぁ!
満場一致でちー姉ちゃんを含めたその場に居た全員がそう思ってた事など知らず、ちー姉ちゃんの一言を聞いて満面の笑みでお菓子を取りに行った僕は、数分迷った後一つだけお菓子を持ってくる。
「それでいいの?」
「うん。あっ、でも……」
あっちのバウムクーヘンの方がいいかも、でもこっちのチョコレートも……
両手で持ってるチョコレートを買い物カゴに入れようとしながら、僕は未だ手にあるチョコレートと棚にあるバウムクーヘンを交互に見ていた。
するとちー姉ちゃんは僕の頭を軽く一撫でし、近くのカゴ置き場からカゴをひとつ持ってきて、キョトンと首を傾げてる僕に向かって笑顔で一言。
「このカゴいっぱいにお菓子取っておいで」
その魅力的な言葉に僕はさっきの満面の笑みよりもいい笑顔で尻尾を大きく揺らしながら、沢山のお菓子をカゴへ入れて買ってもらったのだった。
それが三浦先生にバレて僕とちー姉ちゃんがこってり怒られたのはまた別のお話。
そしてこの僕の様子がネット上にアップされていたと僕が知るのはまだ先の事なのだった。
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