第65鱗目:実行!龍娘!

 カチャン!ガラガラガラガラピシャッ!


 最早壊れるくらい勢い良く僕は玄関の戸を音高く開ける、すると玄関の前に立っていた人達はいきなり戸が開いたからか少したじろぐ。

 僕はそのたじろいだ自分より背の高い人ばかりを前にニコリと笑顔を浮かべると、力任せに前にいる人達押しのけて人混みを突っ切るように歩き始める。

 すると僕が歩き始めたのを合図にしたかのように前、横、後ろ、全てから容赦なく質問とシャッターの光が飛んでくる。


「その翼や尻尾は本物なのですか!?」


「保護者の方や親類の方はどのように!?」


「貴女は人間なのですか!?」


「異星人、新しい知的生命体との噂は!!」


「日医会に造られた人造人間というのは本当なのですか!?」


「日医会に囚われ実験材料にされていたという噂は!」


 聞くに耐えない自分達で作り上げた根も葉もない噂を僕は聞かされながら、作った笑顔を何とか崩すこと無く保ち、人混みから抜け出す。

 そしてぞろぞろと人を引き連れ、家の前の坂道を下り終えた僕はその場で立ち止まると追いかけてきた人たちの方へ振り向き、昨日作った看板を見せる。

 そしてその看板には大きくこう書いてあった。


 部外者の立ち入り、撮影を禁ずる。


 と。

 そしてそれを見た人達の内数名はしれっと僕の横を通って外へ出ようとするが…………


「昨日からあんなに迷惑かけてるのにいざ立場が弱くなると逃げようなんていい度胸してるじゃないですかー」


 僕は笑顔でそう言うと坂道にある柵を飛び越えて逃げたり、僕の横を通り過ぎて逃げたり出来ないように大きく大きく翼を広げた。


 ーーーーーーーーーーー


「クソッ!こんなことしてタダで済むと思うなよ!」


「不法侵入と無断撮影してた奴には言われたくないなぁ、とりあえず大人しくここで待っていてくださいねっ!と…ふぅ……これで全員ですよね?」


 最後まで悪態を着いていた男をちー姉ちゃんが用意してくれた部屋へ放り込み、パンパンと手をはたいて陣内さんへ聞いてみる。


「だな、ちゃんと全員入ったのを確認した。身分証とか名刺の提示もさせたし、それを拒否した奴は不法侵入者ってことで別部屋に放り込んだ」


「流石陣内兄貴、仕事完璧にこなしてる」


「そういうな、照れるだろ。それに鈴香こそ逃げようとしたやつ全員とっ捕まえてるからな、そっちが凄いぞ」


「この体の運動能力は化け物ですから」


 ふふんと胸を張って僕がそう言っていると、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴らされる。


 んう?三浦先生もう来たかな?


 そんな僕の予想は的中していて、玄関へ迎えに行くとそこには三浦先生が笑顔で書類の束をもって立っていた。


「久しぶりだな鈴香、少し背が伸びたか?」


「本当ですか!?って今はそうじゃなくて、あの部屋です。全員とっ捕まえました」


「お疲れ様……いや、本当にお疲れ様だったな、これからは俺らに任せろ。鈴香はそうだな奥でゆっくりしてろ」


 さっき男の人を放り込んだ部屋を僕が指さすと三浦先生は任せろと言って僕の頭を撫でてくれる、その瞬間僕の中で張り詰めていた緊張感がプツリと切れ。


「わかりましたっ!?」


「うおおっ!?大丈夫か?」


「えへへ……安心したからか足がかくんってなっちゃいました、あれ?なんか涙が……あはは、なんか…ひぐっ、止まんないです……えぐっ…ははは……」


 廊下に座り込んで泣き出してしまった。

 その後僕は陣内さん達に連れられてちー姉ちゃんのいる部屋へと行き、いつの間にか僕はちー姉ちゃんと一緒に寝てしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る