第60鱗目:お昼休み!龍娘!

「なるほど、流石サナ、いつも通りのナイスフォローだな。略してサナイスフォロー」


「あんたは細かい所に気が回らないからね、細かい所は私の仕事、それにあんたは朝皆を止めたじゃない。あんたにはそういう方面が向いてるのよ」


「そうそう、さーちゃんの言う通りだよ。朝のは本当に助かったもん」


 そして隆継よ、さーちゃんはクールにスルーしたけど僕はちゃんと聞いてたから突っ込むよ?

 サナイスフォローってなんだ。


「ははっ、違いねぇ!それに鈴香にそう言われると止めたかいがあったってもんだ!」


 4限目も終わったお昼休み、僕達はそんな会話をしながらお昼ご飯を食べようと机をひっつけるためにガタゴトと動かしていた。


「それはともかく、鈴は早い所女の子の当たり前を覚えなさい」


「仕方ないじゃんか、まだ女の子って意識して生活したことなかったんだから」


「とそれでもよ、早い所慣れて覚えなさい」


「はーい…………ってあれ?」


 あっれー…………確か朝ちゃんと弁当箱と一緒に突っ込んだと思ったんだけど……


「どうかしたのか?」


「いや、ちょっと…………あー、お箸忘れちゃったっぽい」


 僕は探しても無いやつだと割り切り、バックから手を引き抜いて「やっちゃった、えへへ」と言わんばかりに頭をかく。


 どうしようかなぁ……どこかで割り箸が貰えたりとかもしないだろうし…………あっそうだ。


「おっと、それはドンマイだな鈴香」


「仕方ないわね。えーっと確か割り箸は……鈴?」


 さーちゃんのそんな声が聞こえる中、一つ閃いた僕は目を閉じて右手の掌を上に向けて机の上に置いていた。


 長さはだいたい掌より少し長いくらい………太さは鉛筆くらいで先に行くほど細く………………よしっ!


 頭の中でイメージが完成した瞬間、パチッと目を開けると僕の瞳はいつもの若葉色から金色へと変わっていた。

 そして同時に僕が意識を集中している掌の上では水に氷が張るようにして、空中に水晶が生み出され……1秒後にはお箸のような細長い形の水晶が2本、掌の上に出来た。


「ふぅ……でーきたっと。さっ、2人ともご飯たべよっ!」


「ほぉー……水晶で箸を作ったのね…………は?」


「ちょっ!鈴香!お前今何を──あっ…」


「なんだなんだ?」「何かあったのか?」「もしかしてあのお弁当天霧さんの手作り?」「美味そー」


「…………こほん……鈴、とりあえず説明して貰えるかしら?」


「えーっと、水晶でお箸を作ったんだよ?」


 隆継の大声を誤魔化すかのように咳をひとつしたさーちゃんが僕に小声でそう聞いてくるので、僕も小声で何をしたかを話す。

 実は日医会の本部から出て2日後の事、暴走していた時に水晶を生み出していたと聞いたのを思い出した僕は、いつぞやかのブレスみたく水晶が出せるかやってみた所、本当に水晶を生み出せてしまったのだ。


 長さとか大きさくらいの指定なら集中しなくてもできるけど、形の指定になると結構イメージしなきゃダメなんだよね。

 でも串とかも作れて便利だし、もっと練習しよう。


「まぁ説明にはなってるからいいけど…………それここでやっても大丈夫なの?」


「んー……多分大丈夫、多分」


「多分て……まぁ極力使わないようにしろよ?」


「あいさー、そういや2人はいつうちに来るの?」


 僕は2人にそう聞くと「いただきます」と手を合わせ、さっき作った水晶の箸で弁当箱にあるコロッケを1口取って口に運ぶ。


「夏休みになってからそっちに引っ越す予定だな、といってももう来週の土日から夏休みだけど。サナもそれくらいだったろ?」


「そうね、アタシも隆継と一緒よ」


「ん、りょうかーい」


 夏休みからかー…………うん楽しみ、すっごい楽しみ!

 みんなで海行ってー、山もいいなぁー、お祭りとかにも行ってみたい!

 そんでそんで!綿菓子とかりんご飴とかも食べてみたいなぁ!あれ作った事はあるけど食べた事は無いんだよね。うーん!楽しみ!


「鈴、鈴」


「さーちゃんなーに?」


「顔、なんかすっごいニヤニヤしてるわよ」


「ほんと?んー…………これでどうだ!」


 流石にニヤニヤ顔は恥ずかしいので、ほっぺをむにむにとしてさーちゃんに言われたニヤニヤ顔を治そうとしてみるが。


「まだニヤけてるわ」


 バッサリと治ってないと言われてしまった。


「うむぅ……なら──────」


「そのお箸ってもしかして水晶?凄いなぁ!」


「ふぇあっ!?」


 僕がそんな風になんとか表情を戻そうとしていた所、いきなり横からのほほんとした声がかけられて僕は驚いて変な声を出してしまう。

 そして僕が声の聞こえた場所へ顔を向けると、そこにはふわっとした短い栗毛のマイペースそうな女の子が立っていた。


ーーーーーーーーーーー


・花桜隆継


最初も今も隆継と鈴香に呼ばれている人物。

周りからは隆継、隆とよく呼ばれる。

鈴香に花桜さんと呼ばれる花桜美月の息子で、三浦に鈴香のフォローを任されている1人。

鈴香の簡単な護衛兼もう1つ

見た目は良くもなく悪くもない至って普通の一般男児、強いて言うなら少し体付きがゴツイ。

髪は黒髪で全体的に少し短い。身長は178センチ

性格は大雑把でそれでいて明るい。

父親はとある会社の支部長で単身赴任中、自宅住まいだが夏休みから鈴香の家に住むことになる。

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