第57鱗目:前にもあった?龍娘!

「ではそういうことで」


「はい、よろしくお願いします」


 緊張した面持ちのThe校長というてっぺんハゲの校長先生と陣内さんの話が終わり、僕も改めて校長先生と担任となる先生へ頭を下げる。


 この校長先生、僕が前に編入試験みたいな感じの受けに来た時と同じくらい緊張してるなぁ……

 そしてそれ以上僕の担任の先生が緊張してるっていうね。


 顔を上げた僕の目に映る表情どころか全身ガチガチにした先生方2人を前に、僕は笑顔を浮かべてそんな事を考えていたのだった。

 ちなみに僕の担任と紹介をうけた代永先生は校長先生とは違い、黒髪ロングのサラサラヘアーで高身長の美人先生だった。


「さて、それではお時間も良さそうですし…………また授業が終わる頃に来るから」


「はい、分かりました」


 ふっと僕に笑いかけながらそう言って立ち去っていく陣内さんに、僕は軽くお辞儀をしてありがとうございますと伝える。


「それでは天霧さん、体育館の方に」


「はい」


 校長先生に言われるがまま、僕は2人の先生と一緒に体育館へと向かって応接室から歩き始めたのだった。


 ーーーーーーーーーー


 はぁぁぁぁ……緊張してきたぁぁぁぁぁ………………


 体育館のステージにある袖幕の裏に待機している僕の耳に、ガヤガヤワイワイと賑やかな声が入って来てしまい、僕は否応なしに緊張していた。


 深呼吸……深呼吸…………


「あのっ…」


 そんな風にすーはーすーはーと気持ちを抑える為、深呼吸をしていた僕にいきなり後ろから声がかけられる。

 僕はそれにびっくりしてしまい、小さい悲鳴を上げてしまう。


「ぴゃいっっっっ!って代永先生?」


「すいません、そんなに驚かせるつもりは無かったのですが……その1つお願いが…………」


「あははっ。大丈夫ですよ、ちょっと驚いちゃっただけなので。それでお願いってなんです?」


「あっはい、その……大変失礼な事かもしれないんですが…………翼と尻尾を触ってみてもいいですか?」


 翼に尻尾……?あぁ、そっかもう日医会の人達には何も言われないから忘れてたけど、そりゃ触ってみたいよね。


「触るのは全然構いませんよー…あっでも根元と尻尾の先は触らないでくださいね?その……とっても敏感なので」


 僕はそう言うと代永先生が触りやすいように翼を広げ、尻尾は代永先生の手のある辺りに持ってくる。

 代永先生は恐る恐ると伸ばして来たその手が僕の翼膜へと触れる。

 僕は前にもこんなことあったような?と首を傾げながらも尻尾や翼から来るこそばゆい感覚に耐えていた。


「代永先生、もう始まりますのでそこら辺で」


「分かりました校長先生、ふぅ…………なんだかとっても不思議な触り心地のよさでした」


「そうでしたか…………」


 代永先生へストップをかけた校長先生が代永先生の感想に微妙な顔で返事を返した後、僕の方を見てきた事で僕はもしやと思い聞いてみる。


「…………校長先生も後で触ってみます?少しならいいですよ?」


「ほ、本当かい?それなら後で少しだけお願いしようかな?」


 なんかこの校長先生かわいいな。


 オドオドとしながらも期待いっぱいな校長先生の顔と態度を見て僕はそんな風に思ってしまった。

 そして校長先生は僕の返事を聞いてノリノリで壇上へと出ていった。


『生徒の皆さん、おはようございます。今日は皆さんに重要なお知らせがあり集まって貰いました。ではまず───────』


 その後、校長先生の話が終わり、僕が壇上に出た瞬間場の雰囲気が一気に変わり、次の瞬間今度は生徒の皆が大盛り上がりしていた事は語るまでもあるまい。

 ちなみにあの二人を探してる余裕は壇上に立って緊張していた僕には無かった。

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