第56鱗目:初登校!龍娘!

「鈴ちゃーん、ご飯出来たよー」


「んん………………あれ…?ちー姉ちゃんが起きてる……?」


 ちー姉ちゃんが僕より起きるの早いなんて…………もしかして寝坊した……?


「だいぶ失礼な事考えてない?……というか今日から学校だから早く寝なさいって言ったのに結局あの後も起きてたの?」


「えへへ……楽しみで眠れなくて……」


「ふふっ、だと思った。ほら、制服に着替えてからリビングにおいで」


「はーい」


 仕方ないなぁという様な仕草をしたちー姉ちゃんがパタンと音を立ててドアを閉めるのを見て、僕は眠たい目を擦りつつ起き上がって伸びをする。


 そっかぁ……今日から学校かぁ…


 ほわほわとした眠気の中で僕はそんな事を考えつつ、壁の方にかけてある僕が今日からほぼ毎日着ることになる制服を見ていた。


 僕、天霧鈴香はこの家に引っ越してきて1週間後の今日、とうとう学校へと通い始めるのだった。


 ーーーーーーーーーー


「着替えてきたよー」


「おっ!やっぱりよく似合ってるじゃない、翼とか尻尾の色と似た色なのがまたいいわね!」


「えへへ………」


 夏らしい白と薄い青色の制服に着替えてキッチンへと来た僕は、ちー姉ちゃんに褒められてその場で立ったままもじもじと照れてしまう。


「でも……もうちょっとスカートの丈はどうにかならなかったのかなぁ…………」


 これは流石に短過ぎない?前に着た膝丈少し上のより短いよ?

 それに短過ぎて足回りが不安というか太ももがすーすーして変な感じが…………世の女子生徒達は皆こんなスリリングな服を毎日着てるの?

 というか改めてこれで学校に行くとなるとなんか恥ずかしい!それもすっごく!


 膝上5センチくらいのスカートに僕は、さっきまでの褒められてもじもじしてたのとは違う意味でもじもじし始めた。


「でも女の子って皆そんなものよ?………………まぁ確かに少し上げすぎたかもだけど…」


「ほらやっぱり!はぁ……仕方ないから夏服はもうこれで諦めるけど冬服はせめて膝丈にしてよね?」


「はーい♪」


 ちー姉ちゃんとそんな話をした後僕はさっさと朝ごはんを食べてしまい、時間もないので昨日の余り物を適当に入れた弁当箱を弁当箱用の袋に入れる。

 そしてそれらの袋を学校指定のバッグへ入れ、忘れ物がないかを確認し終えた所で玄関のチャイムが鳴る。

 そのチャイムを聞いた僕とちー姉ちゃんは玄関へ出向き、玄関を空けてチャイムを鳴らした人へと挨拶をする。


「おはようございます陣内さん」


「ん、おはよう。それじゃあ行くとするか」


「はーい、それじゃあちー姉ちゃん。行ってきます!」


「うん、行ってらっしゃい」


 僕は少し緊張混じりで迎えに来た陣内さんに返事をするとちー姉ちゃんにそう言っていつものトラックの荷台へと乗り込み、ちー姉ちゃんへ今度は行ってきますと手を振る。

 そんな僕にちー姉ちゃんが笑顔で手を振り返してくれたのが荷台の閉まり始めている扉から見えた。


 ーーーーーーーーーー


 はうぁぁぁ……なんか緊張してきたぁ…………


 山道だからだろうかゴトゴトと揺れる荷台で僕はソワソワと歩き回っていた。


『どうした?何か忘れ物か?』


「いえ、ちょっと緊張して…………そういや皆さん元気にしてます?」


『はははっ、なるほど緊張ね。少なくとも外に出てた奴らは元気にやってるよ、中に居る奴らはどうか分からん。連絡とれないからな』


「そう……ですか…教えてくれてありがとうございます」


『いいってことよ』


 僕が日医会の本部から出たあの日以降、本部の周りにはずっと取り囲むように記者や人権保護団体を名乗る団体等が居座っていた。

 本部と迂闊に連絡が取れないのも通信が傍受され、僕達の居場所が突き止められないようにする為だ。

 そして陣内さんや柊さん、花桜さん等数名の職員さんがあの日の前日に街へと潜伏していた事により僕は移動手段と食料を手に入れる事が出来ていた。


「何が人権侵害だ、研究は僕が進んで手伝ったんだしそもそもこの姿になったのは誰のせいでもないのに」


『全くだ、昔っからマスコミとそういった団体は自分らの都合のいいようにしか情報を発しない』


「1回僕が出張って違うって大体的に言ってやりたいです」


『それこそ「操られてるに違いない」なんて言われるだろうからやめとけ、まだその時じゃないのさ。よし、着いたぞ』


 無意識に頬を膨らませていた僕に陣内さんがそう言ってくる、僕はそれを聞いて軽く身だしなみを整えると尻尾を軽くひと振りして「よし」という。

 僕のその言葉を合図にするように荷台の扉が開き、僕の視界に見るのは2度目の職員用の玄関が映る。


 今日からここに通うんだよね…………確かに緊張もあるけど……うん、楽しみだな!


「それじゃあ行くか」


「はいっ!」


 顔を上げて校舎を見上げるようにしていた僕はふんすと意気込み、陣内さんと共に校内へと入っていった。

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