第52鱗目:急展開!龍娘!
あの後、ちー姉ちゃんに抱きついたまま寝てしまい、1日ほどカレンダーの日付が飛んでいたのをおいておけば、いつも通り目が覚めた僕は…………
「本っっっ当に申し訳ございませんでした」
三浦先生の部屋にて事の顛末を聞かされ、すーっと流れるように土下座フォームへと移行していた。
うぅぅ……本当に何やってんだ僕は………………そんな暴れ回るなんて………あぅぅぅ……………………
「だから大丈夫だって、聞いた限りお前の自己防衛みたいな機能が暴走していたみたいだし、原因も逆鱗が触られたからって分かったし幸い死人も出てないんだ。だから顔上げてくれ」
BからD区画が「僕の作り出した」水晶により壊滅的な被害を出した事を除けば、幸いな事に三浦先生の言う通り死人は1人も出ていなかった。
そして僕の逆鱗を触ったあの人は現在、私兵団を作っていたとして警察へ引き渡す為に身柄を拘束しているとの事だ。
「あー……それでだ鈴香、もうお前に関しては驚いたりする事はないだろうと思ってたんだが…………なんでお前の周りはキラキラしてるんだ?」
渋々と三浦先生に従い顔を上げ、ちょこんと正座していた僕の周りに目をキラキラとさせてる人が居るわけでもなく、何かキラキラ光ってる物を持ってるという事でもなく…………
「さぁ……なんなんでしょう…これ」
本当にキラキラしていたのだった。
よく見ないと気が付かない程ではあるが、うっすらと雪のような薄い水色の落ち着いた光を纏っている当の本人たる僕も首を傾げていた。
「まぁそれもいつか解明したい所だが……今日お前を呼んだのは謝らせる為でも身柄を拘束する為でもない」
「え?そうなんですか?」
正直やらかしたことから怒られるか幽閉されるかしか考えつかないけど……
「まずさっき説明したお前が暴れてた事の報告、そして次にこれからの事だ」
これからの事…………?やっぱりこんな危険性があるならもう表社会には行かせられない的な……
「…………とりあえず説明したいからそんな捨てられた子犬みたいな顔をするな。ほらよしよし、いい子だから」
「あうううううぅぅぅ……」
外に行けないと考えてしまい、しゅーんとなっていた僕の頭を三浦先生はくしゃくしゃと少し乱暴に撫でて元気付けてくれる。
「具体的に何があったかは漏れてないが今回の件で中層や上層から説明を求められている、そして1番の問題が外部の者にお前の事がバレた事だ」
「はい……」
「だから準備もまだ万全とは言えないが…………鈴香、お前を表社会へ出す」
「……はい?」
三浦先生の言葉を聞いた僕は驚いて俯けていた顔を上げると、どこか楽しそうな表情の三浦先生がいた。
「こういうのはゲリラ的にやるのが1番だからな、鈴香がすーすー可愛い寝息立ててる間に取り掛かり出した所だ」
「えっ、え?はいっ!?ちょっと待ってください!?」
えっ……ええぇー!?何この急展開!?というか出てもいいの!?
それに三浦先生なんかすっごい楽しんでるように見えるんだけどこれ!
「というわけで鈴香、お前にはこれをやろう」
「うわっ!わわわっ!えと、なんです……?これ」
唐突な急展開にパニックになりかけ勢いよく三浦先生の手を掴んで立ち上がった僕に三浦先生はそう言いつつ両端に金具の着いた物を投げてくる。
なんとかキャッチしたそれは白い肉球のマークがいくつかある少し太めな薄水色の柔らかい布地で、これがなんなのか僕には分からなかった。
「それはチョーカーって言うやつだな」
ちょーかー?チョークを吹いたりするのに使うの?
「チョーカーが何か全く分かってなさそうだな……こうやって首に着けるアクセサリーみたいなもんだ」
首を傾げて「ナンダコレ」と言った顔になってる僕の手から三浦先生がチョーカーという物を取ると、三浦先生は自分の首に当てて見せてくる。
それを見た僕は普通に手渡されたチョーカーを三浦先生がやって見せたように首にあてる、それは丁度逆鱗を覆い隠すことが出来るサイズで…………
もしかして逆鱗を触られないように……?
………………三浦先生……
僕は言い表せないじーんした想いを胸に感じつつ、カチッと音を立ててサイズぴったりのチョーカーを着け三浦先生へニコッと笑顔を見せる。
すると三浦先生はニヤリと悪そうな笑みを浮かべて一言。
「着けたな?」
「え?」
まさかこのチョーカーになにか!?
「それじゃあ鈴香も了承したということで、明日の記者会見、一緒に頑張ろうな?」
キシャカイケン?
固まってる僕にニヤァとイタズラ成功とでも言うような顔のまま三浦先生はそう言うと、僕の肩をポンッと叩き、手を振って書斎を出ていった。
「はい?………………えっ、ちょっ待っ!記者会見ってどういう!あぁっ!三浦先生逃げやがった!」
三浦先生の言葉が理解出来ず硬直していた僕がやっと動き出した時には、書斎の前の部屋には三浦先生は居らず、遠くから高笑いが聞こえてくるのみだった。
その後、三浦先生と暫くの間全力で追いかけっこした事はまた別の話。
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