第51鱗目:夢での出会い、龍娘
閉じた瞼の隙間から白い灯りが差し込んで来る、その灯りに僕は閉じていた目を顰めてからゆっくりと開く。
いつ寝ちゃってたんだろ、確か僕は…………あれ……何してたんだっけ………………
何をしていたか思い出せないあやふやな記憶の中、何度か瞬きを繰り返すとそこには前に一度見た事のあるような天井が目に入る。
ここ…………確か……
どこか引っかかるその天井を見ながら僕は眠い目を擦ろうと手を動かし────
ガチャッ
あれ? なんかひっかかった?
ガチャガチャガチャッ
………前にもなんかこんな事が……………
ベキッ
どこか前に似たような事があったなぁとこの状況に僕は思いつつ、いつもより重い右腕を引っ張って拘束を引きちぎる。
そして少し時間はかかったが各所に設けられた拘束を全て引きちぎった。そして拘束台から床に降り立とうとして……
うおっ……………なんか力が入んないや………どうしてだろ……
自分の体重を支えられずカクンと膝から床に崩れ落ちて、僕は女の子座りで座り込んでしまった。
そのまま暫くどうしてだろうと首を傾げていると。
『全く……高濃度の睡眠薬打ち込まれといて1時間も経たずに起きるわ、筋弛緩剤打ち込んでるのに合金メッシュの拘束具破壊するわ……つくづく規格外だな鈴香は』
三浦先生………?
…………あ…ダメ………………
どこかにあるスピーカーから三浦先生の声が聞こえてくる中、僕はその声を聴きながら座り込んでいるのもきつくなってパタンと仰向けに倒れる。
『やっぱりその筋弛緩剤は流石の馬鹿力でもキツかったか……すまんそんなのを打ち込んで。それじゃ本題だが……そうだな、まずは意識がはっきりしてるなら2度瞬きしてくれ』
あっ、それってあの時の……
三浦先生のその真剣な声色の中にある楽しげな雰囲気を感じ、僕も笑顔を少し浮かべながら床に寝そべったままパチパチと2度瞬きをする。
『…………よし、大丈夫みたいだな。それじゃこれから幾つか質問をする、はいなら1度、いいえなら2度瞬きをしてくれ』
その後、僕は三浦先生に幾つかの質問をされた。途中とっても恥ずかしい質問なんかもされたが、恥を忍んでちゃんと正直に答えた。
そして僕は動かせない体とまだ残っていた眠気に負けて、何かを説明しようとした三浦先生の声を聞きながら暖かい暗闇へと落ちていった。
ーーーーーーーーーー
ぴちょん
水滴が落ちるような音、その音で僕が目を開くと見たことも勿論来たことも無い、ほんのりと水晶が光っている洞窟の風景がそこには広がっていた。
ここは……綺麗だけど……何処だろう………それになんだか……………………
幻想的な光景を前に僕は懐かしさ、そして気を失う前に感じたのと同じような安心感を覚えていた。
そんな不思議な安心感からか、僕は洞窟の奥へとゆっくり足を進め出した。
僕が何かに導かれるように迷いなく奥へと気がついた頃には進むと洞窟の岩壁は色とりどりの幾重にも重なった水晶へと、足元の石ころは透明な水晶の粒へと変わっていた。
そして導かれるまま僕が最後の下り坂を下り終えるとそこには────
…………………綺麗……
周りの色とりどりの水晶達によって飾られた静かな地底湖の中央に、他の水晶とは隔絶しているとでも言うようなうっすらと光を宿したとても大きい透明な水晶がそびえ立っていた。
キテ
僕はそんな想いを水晶から感じ、足をくすぐる水の感覚とつるりとした水晶の感触を感じながら浅い地底湖を進み、その水晶へと辿り着く。
そして僕は水晶へと自分の白く小さい、傷ひとつ無い手を伸ばす。
すると手は水面に入るかのように波紋を残して水晶へと入り、その中で目を閉じていた龍の鼻先に触れる。
僕の手が触れるとその龍はゆっくり目を開け、若葉色の瞳でこちらを見るとその大きな顔を手に擦り寄せてくる。
暫くして満足したのか龍が瞳の色を金色に変え、背中にある僕と全く同じ色と形の翼を大きく広げると水晶は澄んだ音を立てて砕け散る。
オキル
キラキラと砕け散った水晶が降り注ぐ中、目の前に居るその龍が僕へ声をかけてくる。その言葉を聞いた僕の視界はどんどんと白くなってきて……
イツモ────マモル
視界が真っ白に染まり切る直前、僕は龍からそんな言葉を聞いた。
ーーーーーーーーーー
「すーずーちゃん」
「んむぅ…………」
……ほっぺ…………やめて………………
「すーずちゃん」
「むにゅう…………」
…………突っつか…ないで………………
「えいっ」
「ひゃあんっ!?なっ、なにっ!?」
翼の付け根を触られ変な声を上げて跳ね起きた僕は、何事かと身構える。
しかしそこはさっきまでいた拘束台のある部屋では無くいつもの僕の部屋で、クスクスと笑ってるちー姉ちゃんが居るだけだった。
あっ!
「ちー姉ちゃん!」
「ごめんごめん♪」
まただよ!全くこの人は!
付け根は触んないでって毎度毎度言ってるのにー!
クスクスと笑うちー姉ちゃんを見て何をされたか分かった僕はぷくっと頬を膨らませ、軽い調子で謝るちー姉ちゃんを睨む。
するとひとしきり笑って満足したのか、ちー姉ちゃんは笑顔でこっちを見て一言。
「鈴ちゃん、おかえりなさい」
そう言ってくれた。
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