第50鱗目:防衛本能

注意

今回は鈴香自身が意識を失って暴走している状態です

その点に気をつけてお読みください


ーーーーーーーーーー


「ぐふぅあっ!?」


「田上様大丈夫ですか!?こちらから逃げれます!早くっ!谷口さん!」


「ひぃぃぃぃぃ!」


「了解です!A!田上様を運べ!他は隊列を!構えっ…てぇっ!」


 ダダダダダダダダダダダッ!


 全力で殴ることは出来なかったが逆鱗に触れた男を殴り飛ばすと、その男を逃がそうとしてるのか覆面達のリーダーと思われる男の指示で覆面達による銃弾の弾幕が貼られる。

 それを横に避けることで直撃を避ける、鱗や翼は弾を弾き返し、他の当たった箇所も腕や足など肌が露出している部分以外は特別性の布だったのだろう、弾を防いでくれていた。

 だが────


 イタイ───ケガ─アル──カイフク──────イル


 いくら馬鹿げた運動能力があったとしても銃弾を躱し切ることなどできるわけもなく、腕や足の鱗に覆われていない場所には幾つか被弾した後があり、そこからは血がドクドクと流れ出ていた。

 そして覆面達もそんな打ち取れる好機を逃さず、すぐさま追い討ちをかけてくる。

 しかし……


 カベ─ツクル


「第2射……てぇっ!」


 いち早く攻撃を察知したおかげで自身を包むように水晶を作る事が出来、それにより銃弾を全て防ぎ切る事に成功していた。


 チカラ──マワス────カイフク──────────オワリ


「障壁か……?対装甲弾用意!」


 覆面達はその指示に従い手早く対装甲弾の用意を進める、だがその頃には怪我は全て完治させることに成功していた。


 カベ─マトウ──────────オワリ───オソウ───サキ──イイ──カイシ


 奇襲する判断をして自身を守る為に作った水晶の壁を突き破り、廊下いっぱいに翼を広げ逃げ場を無くして猛スピードで覆面へ突っ込もうとする。

 だが覆面のリーダーも相当の手練だったようで。


「回避!」


 突進の直前にその指示を覆面のリーダーが飛ばした事で、回避行動でしゃがむ事を選択した覆面以外の覆面しか無力化出来なかった。

 そしてそのまま右の翼爪を地面へ突き刺し、突進の勢いを殺そうとした所へ…………


「てぇっ!」


 水晶を貫く為に装填されていた装甲弾が背中へと打ち込まれる、が、水晶を突き破って出てきたその体に鎧のように纏っていた水晶を貫くことは出来なかった。

 そして打ち込まれた弾はカランと虚しく音を立て床へ落ち、跳弾で灯りが壊された薄暗い廊下で金色に光る瞳とリーダーの男と目が合う。


「ははっ……80ミリの超硬なら貫ける弾と銃なんだぜ?これ」


 SHARURAAAAAAAAAA!!


 そう男が呟くと鈴のような、そして大きな生き物の咆哮のような声を上げて翼を大きく広げる。

 すると立っている場所を中心として床や壁、更には天井が廊下の先まで水晶で覆われる。


「お前らっ!こいつを打ち取れたら俺らは伝説だ!てぇっ!」


 SHURUAAAAAAAAAAAAA!!


 男の激励と咆哮、そして銃声と叩き壊される轟音が廊下に響き渡る。しかしそれは数十秒として続かず、薄暗い廊下は静寂に包まれた。


 ーーーーーーーーーー


 水晶で埋め尽くされた歩く足場もないような薄暗いが薄く水晶が光る幻想的な廊下を、男を見つけ出す為に瞳を金色に光らせ探し回っていた。


『落ち着け鈴香!く…ザザッ……BからD区画をへ……ザッ…鎖!睡眠ガスを投与!急げ!』


『でも!そんな……ザザッ…ら鈴香ちゃんが!』


『だからだ!鈴香の為にも今は何とし……ザッ…ザザッ…を稼ぐ!何か………ザッ…何か手は……』


 水晶が生成された際にコードがやられたのだろう、途切れ途切れだがスピーカーからそんな声が聞こえてきていた。

 そして────


「命令だ!ここから出せ!」


「離してください!私はあの子を探さないと!!鈴ちゃん!」


 曲がり角の先、そこからあの男の声と聞きなれた声が聞こえて来る。


 SHARURURurururuaaaaaa………


 鈴のような、そして生き物の唸り声のような声を上げつつ、曲がり角を曲がると、チカチカと光るあかりの下、女の後ろにあの男が隠れているのが見えた。


 テキ───タオス──ジャマモ──────タオス


 2人諸共倒してしまおうと勢いをつけて飛びかかるために強く1歩踏み出し、地面を蹴ろうとして──


 パチンッ


 そんな音が廊下に響き、視界の端に落ちていく若葉色のヘアピンが映る、そしてそのヘアピンからなぜか目をそらすことが出来ず────────


「っ────!?」


 首筋、丁度動脈のある位置へ針のような物を打ち込まれた。

 すぐさまその針を引き抜き、飛んできた方向へ振り向くとそこには異様な雰囲気を放つガスマスクを被った銃を持っている人がいて……


 ガクリとその場で膝をついてしまう。


 ドク───ケス─シッパイ──イジ───ム──リ


 立ち上がることが出来ずそのまま前のめりに床に倒れてしまった僕の頭の中でそんな声が聞こえた。

 そして僕の横に見慣れた人影が来たかと思うと、僕の体を優しく抱え上げてくれる。その瞬間、僕は安心感に包まれ……


「ちー………………姉…………?」


「鈴ちゃん!鈴ちゃんだよね!?鈴ちゃんなんだね!?…………よかった……鈴ちゃんが元に戻って………………よかったよぉ……!」


 ぽたぽたと暖かい雫が顔に当たるのを感じつつ、とても強い眠気が込み上げてきて僕は眠りに落ちた。

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