第45鱗目:自己紹介!龍娘!

「えーっと…………あの……その………………お菓子食べます?」


「あ、そんじゃありがたく」


「ならアタシもひとつ……」


 僕がこの気まずい雰囲気を何とかしようと恐る恐るお菓子の入った籠を2人に差し出すと、2人はぎこちなくながらも受け取ってくれた。

 僕と2人は暫くの間無言でもしゃもしゃとお菓子を食べていたがとうとうこの沈黙に耐えきれなくなって…………


「「何か話さない!?」か!?」


「あっ……えーっと…………」


「その……」


「はぁ…………全く、このままじゃいつまで経っても進まないわね…………とりあえず自己紹介でもしてみない?」


 耐え切れずに言ってしまった僕と男の子の言葉がハモってしまい、微妙な雰囲気になってしまった所で女の子がそんな提案して来る。


「おっ、それいいな」


「僕もいいと思います」


「じゃあアタシからやるわね」


 僕と男の子が賛同した所で女の子は咳をひとつして自己紹介を始めた。


「アタシは柊さなかって名前よ。歳は15、休みの日には趣味で読書とか編み物をよくしてるわ。んでこいつは」


「隆継って言うんだ。苗字は花桜、歳はさなかと同じ15で趣味は筋トレとゲーム、後スポーツだな。休みの日はだいたいどれかやってる、さなかとは幼馴染だ。よろしくな」


 へー!この2人幼馴染なのか!

 どちらかと言えば姉弟みたいな感じというか、クールでハイスペックな姉と元気でムードメーカーな弟みたいな感じ?

 ん?ちょっと待って。


「柊に花桜?ってもしかして……」


「はい、うちの叔父がお世話になっております」


「俺の母さんもな」


「やっぱり!2人は柊さんと花桜さんの関係ある人だったんですね!いやー僕こそいつもお世話になってます」


「いえいえ、叔父もこの所毎日楽しそうでアタシも見ていて嬉しいから。それじゃあ最後、お願いしていいかしら?」


「あっはいっ、僕は天霧鈴香です。歳は2人と同じで15歳、趣味は………掃除と料理…………かな?休みの日はお手伝いとかしてます」


 女の子、柊さなかさんに言われて僕も自己紹介をする。互いに自己紹介したからか僕達は少しだけ距離が近くなったような気がした。


「それじゃあ自己紹介も済んだし……なぁ2人共、タメ口で話さねぇか?」


「僕はそれでもいいけど」


「アタシも別に構わないわよ」


「んじゃ決まりだな。で早速で悪いんだけどよ……」


 わわっ!近い近い!

 顔に変なのでもついてたのかな?うぅ〜……じろじろ見ないでぇ………………


 隆継はそう言うと僕の方へずいっと顔を近づけてくる。

 いきなり近づいて来たから僕は驚いてしまうがそれ以上にじろじろと見られるのが恥ずかしくて、思わず手で顔を隠してしまう。


「こらっ、女の子にいきなり顔を近づけない」


「いでっ!つつっ……わりぃ、ちょっと気になってな」


「ううん、気にしないで…………ふぅ…それで何が気になったの?ゴミでもついてた?」


 さなかにチョップを叩き込まれた隆継は、頭を擦りながら僕に謝りつつそんな事を言ってきた。そんな隆継に大丈夫だと僕は伝えながら、何が気になったのかを聞いてみる。

 すると隆継はとんでもない一言を言ってきた。


「いや、元男だって聞いてたから本当に男だったのかと思ってな」


「だからっていきなり顔をマジマジと間近で見るのは流石に失礼よ」


「それは迂闊だった。本当にすまん」


「あははっ、だから気にしないでいいってば。それに2人共僕が元男だって知ってるなら…………え?2人共……僕が元男って知って」


 僕喋っちゃった!?絶対バレちゃダメだったのに!

 えーっと、えーっと、記憶を消す為には体の記憶を司る部分に強い衝撃を、つまり────


「…………脳に強い衝撃を?」


 混乱していた僕はボソリとそんな結論を呟き、グッと握り拳を作る。


「ちょっ!ちょっとまて!何をするつもりかしらんがお前が男だった事を俺達あの三浦って人から聞いたんだよ!」


「そう!だからストップ!落ち着いて、ゆっくり深呼吸して……お願いだから…………」


 三浦先生に…………?なら僕がばらした訳じゃないって事?


 ゆらりと立ち上がり近づく僕に部屋の隅に逃げて怯えた表情で2人は必死にそう言って来る、そして僕はそれを聞いてほにゃっと表情を緩める。


「なぁーんだ、あーよかった……!僕がバラしちゃったんじゃないかってすっごい焦ったよー」


 僕は安心したというように胸を撫で下ろして2人を引っ張って起き上がらせる。

 そして「焦ったのはこっちだ(よ)!」と2人が思っている事をあははと笑みを浮かべ、お菓子をまた食べ始めた僕が知ることはなかった。

 その後僕がそのお菓子を食べ終わる頃にはどんな事をやっているのか等で僕達は盛り上るくらいには仲良くなっていた。

 そして僕が3つ目のお菓子に手を伸ばそうとしたところで、三浦先生とちー姉ちゃんが帰ってきたのだった。

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