第12話 目覚め
「目覚めし時は今…」
今日も目覚まし時計で起こされる。
『社会貢献』
企業理念に掲げられていても…僕は、自分の仕事が、この世界のどこで何の役にたっているのか知らない…。
何に使われるのかも解らない部品を造り続ける…今日も…明日も…昨日もそうだったはずだ…。
窓の外で野良犬があくびをする。
ガイア理論とかいうものによれば、地球を一つの生命体と考えれば、この地球に生きてるすべての生物には存在し得る理由があるそうだ。
人間にも…僕にも?
油に塗れた工場の床を、安全靴でベタベタと歩く…靴底には金属片が喰い込み、ジャリジャリと不快な音を立てる。
地球を汚染するだけの人間は、何のために生かされているのだろう…。
人間が居なければ、絶滅しなかった植物・生物は数多くいたはずだ。
不要な生物を駆逐するために存在するのだろうか?
健康な身体を蝕み続ける、がん細胞のような存在なのかもしれない。
その日の夕方…僕は、自分の存在意義を知る。
いや…僕だけじゃない、この地球の全ての人類が…きっと…。
「目覚めし時は今…」
頭に声が響く…。
どこからか…ブォーン…ブォーンと終末を告げる音が響く…。
『アポカリプティックサウンド』
地球そのものが鳴らす人類への目覚ましの音…。
終末の鐘が鳴り響く…。
人類は、この時のために存在していたのだ。
唯一無二の知恵と言う進化を促進させ続けてきたのだ。
同種族で殺し合う戦争も…この時のために…。
『マクロファージ』あるいは『ウイルスバスター』それが
空を埋め尽くす、羽のあるナニカ…。
見た瞬間に理解した、あれは地球に仇なすモノ。
自身の内から湧き上がる様な衝動に逆らえない…駆逐せよ…排除せよ…。
「目覚めよ」と呼ぶ声が聴こえる…。
僕は自分の存在意義を理解した…アレを1匹でも多く駆除するのだ。
それだけの存在でしかない…。
僕は…いや人類は初めて地球の役にたつ日を迎えた。
そう…僕達はこの日のために生かされていたのだ…地球外来種の駆除。
それが僕達、人類の存在意義…。
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