第8話 遊戯
「そろそろ…やり直しの頃かな…」
男が呟く…有名な投資家だ。
ところが、アメリカ大統領選でほぼ財産を失った…。
まさかカード氏が当選するとは…毎回、ヒラギー夫人の圧勝なんだが…。
「まぁ…こんな時もあるのか…暗殺されたこともあったものな…」
男に悲壮感はない…。
5度目の今をゲームのように楽しんでいるだけ…今回は負けただけ…。
1度目の人生は悲惨だった…高卒で低所得。
ど底辺の職を転々としたあげく…自殺した…。
2度目の人生…男は思い出した…デジャブのような日々を送り…少しはマシな人生だった。
そして、思いだした…自分が自殺したことを。
そこから先の人生ではデジャブは起こらなかった。
平凡な生活が続いた、けど世界はプツリと途切れた…。
3度目の人生…過去を思い出したのは、小学校の頃。
優等生のまま、エリート人生を歩もうとしたが、挫折した。
結局、底辺の人生を歩んだ…。
アメリカ大統領選ヒラギー夫人が圧勝。
その後、数か月で世界は終わった。
4度目の人生…前回までの失敗を、なぞらぬ様に必死で勉強した。
記憶に焼き付けるように…。
次の人生の準備に費やした。
それだけの人生。
そして…5度目の人生。
男は財産を失った…。
イレギュラーもあることを学んだ。
まぁ、学習しているのだ。
最後の夜を楽しんだ…。
そして…今、ビルから飛び降りる。
また巻戻るだけの世界を…再び産まれるのを待てばいい。
次は何をやろうか?
「俺だけが知っている世界の真実を…」
3人の女神が笑う…。
長女アトロポスが次女を笑う。
「ラケシス…あなたの根性に負けたわ…」
次女ラケシスが妹クロトに、2人から巻き上げた宝石のように輝く丸い石を見せびらかす。
「お姉さまに、全部取られたわ…その銀河気に入ってたのに…」
宝石のように輝く石を覗き込むと…そこには数多に輝く星、その中心に銀色の銀河系。
「どうする?また地球の大統領選で掛ける?」
クロトがアトロポスに聞く。
「う~ん…もう飽きてきたわ…100回以上繰り返したじゃない」
「そうね…やっとカードが勝ったし、アタシは満足」
ラケシスが笑う。
「じゃあ…他の銀河系をしばらく眺めて…また掛けましょうか」
アトロポスが妹たちの頭を撫でる。
時間を司る3女神の気まぐれで、地球は100回以上時間を繰り返していた。
少しずつ…ズレながら…繰り返された日々。
男が気づいたのは、つい最近のほんの数回目に過ぎない…。
もう時間は戻らない…無数にある銀河系のひとつを眺めていただけの女神の悪戯。
「お前の知る世界など…そんなもんさ」
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