第2話 アナタへのオススメ

 便利な世の中になった。

 産まれた時に両親が基本情報を入力しておけば、我が子の成長をデザインしてくれるのだ。

 例えば、子供を建築士にしたいと思えば、そのために必要な学習プランを構築してくれる。

 もちろん、その経過を入力すれば、進捗状況から、可能性を判断して、場合によっては別の選択肢を勧めてくれる。


 僕の人生は、今までこういった最適なプランに基づいて歩かされてきたものだ。


 もちろん、両親が望んだ形では無いのだろうが…


 腕時計のような自分専用のコンシェルジュAIは日々、僕の行動から最適なプランを語りだす。


 そして今、AIが僕に薦めてきた、読むべき本のタイトル…

『自殺のススメ…光無き未来へ歩き出したアナタへ』


 どこで間違えたのだろう?


 僕の足元で呻く母親…すでに動かない父親…


 そういえば…昨日は?

『両親を殺しましょう…アナタを産んだ責任を取らねばなりません』

 AIは、そんなことを言っていた。


 母親のAIが少し前に

『息子に包丁を渡しましょう』

 と言っていた。


 いつものようにAIに従った朝食の風景。

 今日、やるべきことはAIが知っている。

 その通りに…その通りに…失敗しても、すぐに次のプランを教えてくれる。


(これでいいの?)


 これからどうなるの?

 とりあえず、僕は勧められた本を注文した。

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