ENIGMA
桜雪
第1話 迷宮入り
凄惨な事件現場。
目撃者の証言だと、侍のコスプレをした男が日本刀を振り回し、次々と人を斬り殺したらしい。
男は忽然と姿を消した。
その間、わずか30分足らず…
死傷者20名を超えた通り魔事件だ。
「ハロウィンでもないのにな…」
「どこかのイベントかもしれませんので、そのあたりも調べてるみたいですね」
刑事が2人、現場の血痕を見ながら話していた。
「日本刀だって?」
「はい…模造刀じゃなかったってことですよね…」
「コスプレ用の玩具じゃ、研いでも20人を斬りつける強度は保てないだろ…」
「ですよね」
「それにしても…そんな目立つ格好で、これだけの目撃者の中、急に見失うってなんだ?」
「どうも要を得ないんですよ…これだけの人ごみで忽然と姿を消す…怪盗みたいですね」
「バカ!! マンガじゃあるまいし…まぁ、それだけ混乱していたんだろう」
「通り魔事件…増えましたよね…」
「だからって慣れるもんじゃねぇだろ」
老刑事が手帳で若い刑事の額を軽く叩く。
「古田さん…昨今、こういうのパワハラって言うんですよ」
「嫌な時代になったな…相良よぅ」
「殺人犯にまで人権や名誉を求める風潮って…なんだか…ね」
「まったくだ、犯人を怒鳴って、蹴飛ばして、逮捕なんてドラマだけだ」
「下手すると釈放されちゃいますからね」
「だからだよ…せめてオマエのデコくらい叩かせろ、バカ野郎」
「だから…パワハラですよ」
野原で目覚めた侍
「心配したぞ、急に倒れたと思ったら…お主、どこへ行っておったのじゃ?」
「拙者…異国へ行っていたようでござる…」
「異国?」
「あぁ…信じられんでござろうが…まことでござる」
大名行列の最中、倒れた侍が1人、列を外れて、そのまま行方をくらませた。
一刻に満たない時間ではあったが、侍は消えた場所から、少し離れた野原で見つかった。
うるさくて、人が大勢いた…髪の色…服も目が痛いくらいに鮮やかでござった。
拙者を見て指さして笑うので、無礼討ちにしてやった…
夢かとも思ったが…ほれ、この通り刀に血が付いておる。
「古刀だってよ…刀の刃零れを分析したそうだ」
「古刀ですか…目撃証言によると小柄な男だったそうです」
「地味に足で探すしかなさそうだ…」
「手がかりは古刀の所持者…ですか」
「盗品もだ、視野は広くだ…相良」
「はい」
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