夜空


「ふふっ。可愛いね」


 葵は小さく笑いすみれのパジャマを見る。


 すみれは葵の視線が自分のパジャマに向いている事に気付き、少し顔を赤らめ弁明しようとするが上手く言葉は出なかった。


 その様子を見て葵はもう一度小さく笑う。


「今日は普通のベンチに座ろうか」


「うん」


 葵はそう言い木のベンチを指差した。


 すみれは小さく頷く。


 二人ともベンチに座り、口裏を合わせたと思うほど同じタイミングで空を見上げる。


 雲一つなく綺麗な夜空だ。星が乱雑に散りばめられてその一つ一つが存在を主張する様に輝いている。


 田舎特有の微妙な街頭の数だが、そんな綺麗な夜空を見ると不気味さなどは感じられなかった。


「綺麗だね」


「うん。そうだね」


「……ごめんね。私があんな事言っちゃったせいで辛い事を思い出させちゃって」


 葵がそう言うとすみれは夜空から隣に座る葵に視線を向けた。

 葵はその様子を横目で気付きすみれと同じ様に夜空から視線を外しすみれを見る。


「葵のせいじゃないよ。私がいつまでも引きずっているのも悪いしそろそろ区切らないと」


 すみれがそう言うと葵は一瞬暗い顔をするが隠す様に夜空に向き直す。


「すみれちゃんは強いね。憧れちゃうな」


 すみれは少し目を見開き驚きを露にするがすぐに失笑をして驚きの表情は消える。


 すみれも再度夜空を見る。


「強くなんかないよ。本当に……」


「強いよ。私なんかと比べたら」


「……じゃあお互い弱い者同士って事でいいんじゃない?」


「ははっ。そうだね」


 会話が終わり沈黙が流れる。


 風の音やセミの声などが聞こえるがそれは静けさをより一層際立たせるものだった。


 だがその沈黙は永遠ではなく破ったのは葵だった。



「私ね、言わなきゃいけない事があるんだ」


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