孤独

 私は逃げ出した。


 自分から迫り自分で突き放した。


 後悔や不安、責任を感じながらひたすら走ると家に着き、叔母さんに迎えはいらないと伝えて謝りそこから覚えていない。



 気づいたら今――朝の五時だった。


 体は少し怠いが思考は皮肉な程冴えていた。昨日のことを思い出し死にたくなる。


 外を見ると昨日の土砂降りの雨は嘘の様になくなり気持ちがいい綺麗な青空だ。私の様だった。


 時計の針の音を聞きながら天井を眺めているといつのまにか六時になっていた。


 叔母さんがいるキッチンに向かった。


「叔母さん。今日少し怠いから学校休んでもいい?」


「大丈夫?昨日あんだけ雨に当たったから熱も出ているんじゃない?」


「いや、熱はなかったんだけど吐き気が酷くて」


「大丈夫?学校には連絡しとくから安静にしてなさい」


 そう言われて自分の部屋に戻りベットに倒れる。少し罪悪感が襲ってくるが無視して私は眠りについた。







 意識が戻りベットから起き上がる。


 時計を見ると十九時でその時間を体のだるさで実感する。


 スマホを確認すると葵からの着信があった。少し戸惑いながらも勇気を出し葵にかける。


「もしもし。すみれちゃん大丈夫?」


「う、うん大丈夫。……というかズル休みなんだよね」


 直ぐに私の心配をしてくれる葵に罪悪感を持ち正直に話す。


 ここで逃げてはいけない。こんな身勝手な事で葵との繋がりは切ってはいけない。そう、私が話す事は決まっている。


「葵、その、昨日はごめんね」


「全然大丈夫だよ」


「その、実は、私が昨日あんな事をした理由は――女の子同士だからっていう綺麗な理由じゃないんだ」


「うん」


「ただ、私は昔お母さんとお父さんが死んじゃって、皆んなから腫れ物に触る様に扱われて寂しかったんだ」


「うん」


「でも成長していくに連れてその感覚も麻痺して感じなくなって、でも昨日思い出しちゃって、その、愛されるっていう感覚を思い出しちゃってさ」


「うん」


「寂しくなって、孤独感に襲われて不安になって」


「うん」


「それを埋める為に葵を利用したんだ」


「……うん」


「……葵に話しかけた時も多分、同じ理由で利用しちゃったんだ。……ごめんなさい」


「……すみれちゃん」


 名前を呼ばれると私は目を閉じて体が硬くなっていた事に気付いた。



「今からあの公園に来れる?」


 そう聞かれ腰を上げて立ち上がる。


「大丈夫!今行く」


「待ってるね」


 通話を切ってスマホをベットに投げ捨て、玄関に向かい靴を無理矢理履いて外に出る。


 自転車に乗り全速力で公園に向かう。


 何故か分からない。


 なんで葵はこんな時間に呼んだのか?


 行ったら何があるのか?


 許してもらえるのか?


 そんな当たり前の疑問は今の私にはどうでもよかった。


 ただ行かなきゃ、そう思った。



 公園に着くといつものガゼボの前で立っている葵がいた。


 私は自転車を適当に止め葵の元に向かうと

、葵は私に気付きいつもの綺麗な笑顔で私を迎えた。

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