変化
それからすみれは葵はよく話す様になり、学校が終わると決まって公園のガゼボに集まり談笑をする様になった。
すみれはまだ短い期間だが葵のことを沢山知った。
本が大好きで本の話題になると熱くなっちゃうところや、気配りが上手なところ。
猫舌なところや、朝は苦手というところなどお互いの事を段々と深く知って言った。
すみれの紹介で葵は沢山の友達が出来た。葵は少し緊張し戸惑いながらも順調に学校に馴染んでいき日常になった。
すみれはいつも通り家に帰ってリュックを置き水分補給を済ますと、制服のまま例の公園に向かう。
すみれが公園に着くとガゼボで本を読んでいる葵が自転車の音に気付き笑顔で出迎える。
そしていつもの様にたわいもない話で盛り上がる。
だが今日は少し違う事が起きた。
雨が降ったのだ。
最初は二人も雲がかかり少し気にしていたのだが、急に雨が降りまさに土砂降りの雨だった。
「どうする?」
「私は大丈夫だけどすみれちゃんはどうするの?」
すみれは少し考える。
「少し待って止まなかったら叔母さんを呼ぼうかな」
「叔母さん?」
葵は突っかかった事が思わず口に出てしまう。今のを取り消そうとしようとするがそれはもう遅かった。
「うん。両親は私が小さい頃にどっちも死んじゃったんだよね」
「そうなんだ……ごめんね、辛い事思い出させちゃって……」
「いや、いいよ。もう記憶にないしさ」
ばつが悪そうに葵が謝るとすみれは笑顔で許す。
だがその笑顔は誰が見ても作り物の笑顔だった。
雨が地面を打ち付け沢山の水溜りを作り出す。このまま雨が止まなく降り続けて世界を飲み込んでしまうほど永遠と思えるほど雨が降る。
「そっち……隣座っていい?」
「うん……」
すみれは席を立ち上がり葵の隣まで移動してゆっくりと腰を下ろす。
会話はなくただ土砂降りの雨を見続ける。
時間が過ぎ、すみれは雨が止む事を諦めてスマホを取り出し叔母に向かいに来る様に頼む。
叔母は了承してすみれは礼を言いスマホを切って机に置く。
葵からなのか、すみれからなのか、それとも二人ともなのかわからないがいつのまにか、すみれは左手、葵は右手の指が絡まり合い繋いでいた。
お互いがお互いの手の温もりに驚き安心して細い白い指が絡まり合う。
いつのまにか二人は見つめ合っていた。お互いの顔がどんな表情で何を思っているのか二人の沸騰した様な熱い脳では判断出来なかった。
すみれが顔を近づけると唇が近づいていく。葵は逃げようとせず迎い入れる様に動かない。
ただお互いの瞳が近づく。
「綺麗……」
ガラス玉を加工して瞳にした様な神々しさまである綺麗な葵の瞳に思わずすみれは声を漏らす。
言葉を発したからか分からないがすみれの脳は冷却され冷静になり、葵の肩を掴み突き離す様に遠ざける。
葵が短く驚きの声を上げた時にはテーブルのすみれのスマホは無くすみれは土砂降りの雨の中走っていた。
「すみれちゃん……」
お互いの顔はまだ熱かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます