転校生
「はい!皆さん。今日は転校生を紹介します」
先生が手を打ち鳴らし乾いた音が教室に響く。
クラスの全員が先生に注目しすみれも例外ではなかった。
そして先生が次に放った言葉でクラスは一気に色めき立った。
すみれも空を見るのをやめ、先生を見ていた。
「では宮本さん。どうぞー」
先生がそう言うと同時に教室の前のドアがガラガラと音を鳴らしながら開く。
転校生が入室してくる。
そしてその転校生の姿にクラスの全員が見惚れた。息を飲む様な音も鳴り、色めき立ち騒がしかった教室は一気に静まり返った。
単純な美少女というものではない。
姿勢良く堂々と教卓に歩き、その度に綺麗な輝きすらある長い黒髪は揺れ、横顔からでも分かる芸術品の様な整った顔立ちに透き通る様な白い肌。幽霊や芸術品の様な、人間では無い雰囲気を放っていた。
すみれは自分が彼女に見惚れている事に気付き、口がだらしなく空いている事にも気付いて急いで閉じる。
「じゃあ自己紹介して」
「宮本葵です。よろしくお願いします」
このクラスで唯一動揺していない人物がそう言うと、彼女は機械の様な無機質な声で自己紹介をし、お願いしますと同時に軽く頭を下げた。
「じゃあ、あそこの後ろが貴方の席ね」
「はい」
先生が指定した席はすみれの後ろの席だった。葵は視線を浴びながらも変わらず堂々とすみれに近づいてくる。
すみれは葵から目を離せず自分の後ろに行った所でようやく離すことが出来た。
その際すれ違った時に安心するいい匂いがしたが、すみれは表情に出さないように必死に耐えた。
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