三日目 振り返り

「なんか坊主とイイ感じじゃない?」


 大内おおちはウインナーの刺さったはしを私に向け、そう言った。

 にやにやと楽しそうに笑う大内に、私は真顔で返す。


「ハゲだよ?」

「どんだけハゲ嫌いなの?」


 大内はウインナーを口に放り込んだ。


「仕事ばっかより、そういうのもある方がいいでしょ?」

「まぁねー」


 でもハゲだ。


「今度はどこ行くの?」


 私がサボる事は、大内の中ではもう確定事項になっているらしい。……まぁ、またサボるだろうけど。


 私はB6ノートを差し出した。大内がぺらぺらとページをめくる。


那雲なぐもさん、字だけじゃなくて絵も下手とか、可愛い!」


 大内はハゲに寛容かんようだ。

 どう見ても、その絵は可愛くない。


「でも何の絵だろうね?」


 大内はノートを横へななめへと動かして、ネコ?タヌキ?と首をかしげていた。

 私には、楊枝ようじが刺さった饅頭まんじゅうにしか見えません。


「今度は北鎌倉なんだ?」

「うん、そっちで降りた方が近いんだって」


 那雲さんの言う事だから、信用は出来ないけど。


「いいなぁ~。私も那雲さんに癒されたい……。香坂こうさか、ホントに興味ないの?」


 大内が探るような目で見てくる。

 美人の上目遣いというのは、本当にすごい。だまされる人の気持ちがよく分かった。


「いいよ。会いに行っても」


 可愛いおねだりに、にやけながらそう返す。


「……私もサボっちゃおうかな」


 大内は寛容な美人である。

 本当にハゲでいいのか。

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