50.決戦・コイラ墳墓
敵の構成は、狼型死霊二体、武装した人型死霊二体、そして大型の死神型死霊一体。
シエラの知る限り、生物以外の形状を取った死霊系魔物は《エレビオニア》時代から強力な傾向がある。
特に死神型はその中でも特異な能力を持っていることが多く、大鎌による一撃も非常に強力である。
「ヤツは俺が持つ。先に数を減らせッ!」
そう叫びつつ、走り込んで死神霊に盾をぶつけるのはガレン。
聖別効果の加わった盾によるチャージは効果があったようで、死神霊を大きく吹き飛ばすことに成功する。
「イヴ、シエラ、やるぞ!」
「おうとも!」
エディンバラの声に応じて、シエラも駆ける。
イヴはギリアイルと同じ場所にとどまって、《イダテン》を構える。
事前に練っておいた雷矢は先ほどの連射で使用してしまったので、再び集中し魔法を練る。
「貴様らの相手は、この俺だァ!」
裂帛の気合とともにエディンバラが刀を抜き放つ。
キィンという甲高い残響とともに、狼型の頭部が身体と切り離される!
こうなってはいくら死霊といえどもひとたまりもなく、爆散し魔素へと還っていく。
その攻撃に危険を感じたのか、残りの狼型一体と人型二体がエディンバラを避けてシエラの元へと殺到する。
「少しはわしも役に立たねば、なっ!」
この世界で戦うことには未だに若干の恐怖心があるシエラだが、そうも言っていられない。
自分を奮い立たせると、三体同時に相手をする位置取りから身体をずらしつつ、人型の死霊へと大剣を振り下ろす!
死霊の持つ剣の攻撃が胴をかする感覚を覚えつつ、敵を真っ二つに両断することに成功した。
「もうひとつ……!」
振り下ろした動作の流れでもう一撃、大きく横薙ぎにして二体とも巻き込もうとするが――
ガッ、と鈍い音が走る。もう一体の人型死霊が防御に掲げた剣にまともにぶつかり、その剣と右腕を破壊することには成功したものの、死霊の撃破には失敗する。
「イヴ……!」
右腕を破壊された人型死霊は衝撃で怯んでいるが、無傷の狼型死霊がすり抜け、守りの薄いギリアイルとイヴのほうへと猛進する。
「――問題、ない」
しかし、エディンバラとシエラの稼いだ時間によってイヴは多重詠唱を完了。
次々に撃ち出される稲妻が死霊を捉える。
圧縮し貫通力を高めているとはいえ、流石に初級魔法の《
「ガレン、無事かや!?」
小型の死霊を素早く片付け、死神を受け持っているガレンのほうを確認する。
そのガレンと死神の戦いはかなり激化していた。
ガレンは基本的に防戦一方となっており、大鎌をふるい続ける死神をなんとか抑えているといった様子である。
その攻撃も全てを防げているわけではなく、ガードから漏れた攻撃によってガレンの鎧にはいくつも傷が生まれている。
「こっからが本番だ! ギリアイル、行けるか!?」
「行けるよ、エディンバラ! ――《聖なる束縛》、起動!」
エディンバラの要請で、ギリアイルが準備していた術式が起動する。
それは、対象の全身に強力な束縛を与える聖属性の魔法。
詠唱には長い時間が必要だが、その代わりにかなりの効力を発揮する強力な魔法である。
魔法が発動し、死神の足元から神聖な光の柱が発生。
その光に包まれた死神は、大鎌を振り抜きかけた姿勢のまま、時が止まったかのように静止する。
「効果時間は十秒――行けッ!」
エディンバラが叫び、シエラも死神へと突進する。
エディンバラが何度も斬撃を浴びせ、シエラも大振りの渾身の一撃を放つ。
その間にもイヴの稲妻が何本も走り、骸骨の身体に殺到する!
ボロ布は消し飛び、身体の骨も至るところが弾き飛ぶ。
シエラの二撃目が頭蓋骨に入り、確実に死神を倒した――そう確信した瞬間、死神の時が動き出す。
「――シエラ!」
叫んだのはイヴだっただろうか。
死神は、確実に致死量のダメージを受けて爆散しながら、最後の横薙ぎを道連れにするかのように放った!
「なっ――」
とっさに掲げた大剣の腹で大鎌を受けるも、悲しきかな、シエラは小柄で体重が軽い。
その一撃によって身体が浮き、そのまま吹き飛ばされる!
吹き飛ばされたシエラは、死神が真っ二つになった頭蓋骨でカタカタと笑った――ように見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます