第15話


「ウェルカ、このまま神殿へといってもいいか?」


 突然の伯父様の発言に首をかしげると、私の魔力を調べてしまおう、とのことだった。


「それは構わないのですが、魔力を調べるのは基礎教育科2年で行うと聞いたのですか?」


「普通はそうだな。

 だがその前に神殿に頼めば調べてくれるんだ」


 そうなのか、とは思いつつもなぜ今? という疑問が消えない。だが私としては特に断る理由はないのでついていくことにした。


「用事は終わったのかい、アゼリア?」


「ベ、ベルク様⁉」


 急にかかった声に驚いてそちらを見ると、なぜかそこには気まずそうな顔をしたベルク殿下がいらっしゃった。


「はい、滞りなくおわりました」


「それは何よりだ。

 そこでな、ジェラミアがアゼリアとウェルカとお茶をしたいと言っているんだが、この後予定はどうだ?」


 そんな殿下の誘いに思わずお姉様の方を見てしまう。お姉様は困った顔をしていた。


「大変ありがたいお申し出なのですが……。 

 この後神殿へ行きますので、本日は難しいですわ。

 ぜひまたお誘いくださると嬉しいです」


「神殿?」


「はい。

 ウェルカの魔力を調べてみるのです」


 それは大切だな、と殿下は納得したようにうなずいている。そしてどこかほっとしたような笑みを浮かべながら、ジェラミア様には自分から伝えておくと言って去っていってい閉まった。


「一体どうしたのだろうな?」


 困惑気味の伯父様に私もお姉様もついうなずいてしまう。本当に何だったのだろうか。

 だが伯父様はすぐにさて、と気持ちを切り替えると神殿へと歩き始めた。



「お待ちしておりました。

 本日はウェルカ様の魔力判定でよろしかったでしょうか?」


 王宮内の端の方、それに王宮の一角というわけではなく庭に神殿の入り口はあった。その入り口に近づいていくと、すぐに人が現れそう聞いてくる。対応はすべて伯父様がしてくださるから私はただついていくだけでよかった。


 こちらへどうぞ、と通されたのは祈りの間よりも奥に行った扉だ。そこを開けて中に入ると、上位神官と思われる装飾を身にまとった男性が椅子に座り待っていた。


「ようこそおいで下さいました。

 本日はそちらのお嬢様の魔力判定ですね」


 うなずくと、神官は自分の前にある机の上に少し大きめの水晶のようなものの玉と小刀を取り出した。


「こちらの小刀で指先を軽く切って、こちらの水晶の上に数滴血を垂らしてください。

 血には魔力が宿ると言われていますので、それで判定が出ます」


 促されるままに小刀で指先を切ってみる。ピリッとした痛みを感じたが、そのまま水晶へと血を垂らしていった。


 するとすぐに水晶は中で白い靄が渦を巻き始めた。その様子を見ていると、その靄が何やら大きくなり始めたのだ。


「こ、これは……。

 素晴らしいです! 

 これだけでは測れないほどの魔力を秘めていると出ています!」


 興奮したように伝えてくる神官に思わずぽかんとしてしまう。そんなに興奮するほどすごい結果なのだろうか。伯父様もお姉様も固まられているし……。


「こんな人材に出会えるとは思ってもいませんでした」


 なおも興奮してせまってくる神官に思わずあとずさりしてしまった。そこでようやくほかの神官が動いだしてくれた。


「あなたのこの魔力でしたら、神子になる資格がございます。

 何かございましたら、神殿にいらしてください」


 それだけ言うと、私たち三人を入り口までお送りしてくれた。そろそろ二人とも帰ってきて!


「お姉様、伯父様?」


「……す、すまない。

 驚きすぎてしまってな。

 ウェルカの才はすごいな」


 しみじみとしたように伯父様に言われてしまった。だが、魔力の基準というものがわからないせいで私はあまり反応できなかった。


「まさか、そこまでだったなんて……」


 お姉様も未だ茫然としたままだ。だが、先に歩き出してくれた伯父様に続いてお姉様も歩き出す。私は慌ててそれについていった。


「さて、これで君たちは正式に俺の娘になったわけだ。

 屋敷で俺の子を紹介しよう。

 二人には、ひとまず別宅で過ごしてもらおうと考えている。

 そして、ウェルカ、君は入学したら学園の寮に入ってもらう。

 何か足りないものなどがあったら遠慮なく言ってくれ。

 そうだ、ウェルカは本が好きだそうだな。

 本宅の図書室にある本も自由に読んでいいぞ」


「ありがとうございます、伯父様」


「ありがとうございます」


 そんな話をしていると馬車はすぐにチェルビース公爵家へと到着していた。さすが公爵家というべきだろうか、王城が近い。


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