第13話


「カルセッタ夫人、本日はお招きありがとうございます」


 当日、エスコートで馬車を降りるとワルクゥベ様はすでに待っていらした。お互いにいつもとは違う雰囲気で少し緊張してしまう。


「ようこそいらっしゃいました、ウェルカ様。

 どうぞ、庭園のほうへとご案内いたします」


 そうして庭に面したベランダへと案内をしてもらう。そこにはすでにきれいな花が描かれた皿に盛られたかわいらしいお菓子や、おそろいの絵柄のティーカップが置かれていた。

そしてーーー


「わぁ!

 とてもきれいですね」

 

 目のまえに広がるのは季節の花が咲き乱れる庭園があった。


「ありがとうございます。

 どうぞこちらのお席へ」


 ふふっと柔らかい笑みを浮かべたワルクゥベ様に席を勧められ、お礼を言いつつ席に着く。すると、自分が来た方向から人の声が聞こえていた。


「遅れてしまい、申し訳ございません。

 本日はお招きありがとうございます」


「お、お姉様⁉」


 思わず驚いた声を上げると、いたずらが成功したようにお姉様が微笑んでいる。全く気が付かなかった……。


「ようこそおいで下さいました。

 どうぞ、こちらの席へ」


「ありがとうございます」


 すっとお姉様は座る。なんとなく、ワルクゥベ様がお姉様も呼んだ意味が分かった気がした。


「ささやかなものではございますが、どうぞ楽しんでいってください」


 その言葉が合図だったように、侍女がやってきてからだったカップに紅茶を注いでいく。その瞬間にふわりと、紅茶の良い香りがしてくる。


「こちらの紅茶はとても良い香りね。

 どこの茶葉を使っていらっしゃるの?」


「こちらは……」


 お姉様の質問に、ワルクゥベ様はよどみなく答えていく。その品名も産地も確かに聞いたことがあるものだったが実際に口にするのは初めてだ。いろんなことに感動をしながらお茶会に参加していく。


 基本はお姉様とワルクゥベ様の会話を聞くだけになってしまったが、それでも楽しいお茶会になった。


「そうだ、ウェルカ。

 伯父様から養子に迎える準備が整ったと連絡があったわ」


 お茶会の帰りの馬車、思い出したようにお姉様がそうきりだした。とうとうあの家と縁が切る日がくるのだと、その実感はわかないながらも思わず緊張してしまう。それでも、ひとまず社交界シーズンに間に合ったことには安心した。


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