第4話
政府は深刻になった少子化を打開するために様々な政策を打ち立てて笛を吹いた。が、生活の多様化と、経済の先行き不透明さから出産を控えるようになり、不信の念を拭いきれなかった国民はその笛に踊らせられることはなかった。
結果、政府の思惑ははずれ、期待した人口の増加が望めなくなった。そうなると、もろに影響が出るのは年金給付金の問題だ。それまででも歳入不足によって財政が逼迫していた政府は頭を抱え、知恵を振り絞った挙句、考えついたのが精巧なヒュ―マノイドの開発であった。
方向が定まるとそれに向けて開発は急発進をした。国家予算の十パーセントという巨額の予算をつぎ込んだプロジェクトは、国内外を問わず有数な脳科学者、神経学者、ロボット工学者を動員し、日本のロボット製作会社数社と共同開発に臨んだ結果、発起から完成まで約七年という短期間で現在の形が整った。
それがいまから二十五年前のことである――。
ロボットが脚光を浴びたのは、それよりさらに四半世紀前に、愛知県で「愛・地球博」が開催されたとき、各企業が競うようにして多種多様な機種を発表した。それまで身近に感じることのなかった人々は、ほとんど人間と変わりない動作ができることに目を丸くした。
以来、国を挙げてのイベントが切っ掛けとなってあらゆる方面で開発されるようになったが、民間企業の予算の中で開発をするには限界があり、外観を重視するところまでは手が廻らなかった。そのあとを国が引き継ぐようにしてのヒューマノイド開発となった。
ヒューマノイドというのは広義の人造人間を指す言葉ではあるが、よく耳にするロボットとやサイボーグとはまったく異にするものである。ロボットというのは人間というよりは機械といったほうが正確で、もうひとつのサイボーグは、躰の一部を機械化した人間なのだ。だからここでいうヒューマノイドとはまった異質のものである。
政府が製作したヒューマノイドの種類は多種多様だった。それを大きく分類をすると、このようになる。(細部に渡って分類することは、あまりにもスペックが多すぎて不可能である)
N系(normal) …… 一般的な仕事に従事
E系(engineer)…… 技術職
D系(dirty) …… 危険度および汚染度の高い仕事
H系(help) …… 医療関係
P系(power) …… 警察(暴力団および危険物処理)・自衛隊・警備会社
A系(animal) …… ペット(主に犬・ネコ)
これらについて少し説明を加えると、N系、E系およびH系は普段の生活に密接な関わりがあるのであらためめて説明する必要がないが、D系というのは、簡単にいうと昔よくいわれた3K(きつい・汚い・危険)の仕事に就くヒューマノイドのことで、感覚器官を削除して主に人間の敬遠する作業に従事し、P系というのは暴力制圧あるいは爆発物の処理という危険が伴う作業を人間の代わりに遂行するのである。
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