第6話 middle phase2 〜side 荒夜~

『どうやら、任務は順調にこなしているようだな。“ジェヴォーダン”』

「……そのニックネーム、いい加減やめてもらえませんか。中佐」

 あまり見たくなかったし聞きたくもなかった上司の顔と自身の異名に、荒夜は携帯端末の画面越しに引き攣った笑みを見せる。


 その日の午後、荒夜は治療が終わったレネゲイドビーイングの少女と共に、山下公園を訪れていた。


『ニックネームではない。コードネームだ。これは、正式にテンペストに登録されている貴様の名前なのだぞ』

「じゃあそろそろコードネームを変えるのもアリかな~。今度は子犬ちゃんパピーとかどうッスか?」

 相変わらず減らず口しか叩かない自身の部下に、在日米軍テンペストの隊長――ディアス・マクレーン中佐は溜息しか出なかった。

『情報が欲しくはないのか。コウヤ・カミヌイ伍長――いや、“ジェヴォーダン”』

 情報を天秤にかけられた荒夜はぐ、と唸り声を上げる。

「……大変申し訳ありませんでした、マクレーン中佐。車内で救出した少女の情報を、小官めにいただけないでしょうか」

 画面越しに姿勢を正し敬礼する荒夜を見、マクレーンはやっと情報を荒夜に送信した。

「……この前の“アリー”と似たようなケースなんだ。またビーイングの少女が、ペットどころか家畜以下の扱いだ」

 改めて、荒夜は上司に今回の事件を説明する。


 アリーというのは、荒夜が保護した天候を自在に操るレネゲイドビーイングの少女の事で、彼女もFHに監禁されていたところを、先日UGNと協力して救出したばかりだった。


『昨晩、MM地区で貴様が保護したというレネゲイドビーイングの少女は、我々“テンペスト”の調査網にも引っかかっている少女と、同一人物とみて間違いないだろう』

 荒夜はマクレーンから受け取った情報をタップし、MM地区支部の情報と照らし合わせてみる。

『その少女は“マスターレギオン”ヴァシリオス・ガウラスに連れられ、世界の各地を回っているそうだ』

「世界各地? 一体何で。観光ってワケじゃなさそうだな」

『ふざけるのも大概にしろ。少女の能力については、未だ不明な点が多い。何のオリジンかも不明だ。だが、傷を癒す能力があるという事だけは調査がついている』


 それを聞き、車内での一件を思い出した荒夜は自身の手を見つめる。

 確かにあの時、荒夜は少女に治癒された。だが、傷を癒すだけではなく、スタミナさえも回復したのは驚きだった。


『貴様も治癒されたのだろう? 報告書にそう書いてある』

 本来ならば直ぐに提出すべき筈なのに一文字も書いてもいない報告書など知る筈もなく、明後日の方向に視線を逸らす荒夜に、マクレーン中佐はわざとらしく咳払いをした。

『貴様の任務を監視していた“同僚”が書いた報告書だ! 全く、貴様という奴は……!』

「な~るほど! それなら納得」

 全く反省の色を示さずにっかりと笑う荒夜に、マクレーンは再びため息をつく。

『少女の治癒能力の発動には、本人の強い感情が必要という事だ。彼女は数々の権力者の手に渡り、方々で暴行を受けていたようだ』

「成程ね」

 あの痣はその“権力者”たちから受けたものか、と荒夜は無意識にため息をつく。

『これは貴様も既に知っていると思うが、調査によると道具でしか扱われていなかったせいで、彼女に名前はない。また、生まれてから外界との接触を禁じられてきたせいか、感情が希薄で常識を知らないそうだ』

「だからあの子は、ハロウィンどころか親の概念すら知らなかったのか……」

 マクレーンからひとしきり情報を聞くと、荒夜の声がワントーン低くなる。

「皮肉な言い方をすると……“どこにでもありふれた話”だな」

 勿論皮肉である。少女の様な悲劇は、世界各地で起こっている。強者の食い物になるのは、いつだって弱者だ。

『あぁそうだ。こんな話は、世界中どこにでも転がっている』

 だがこの事態を看過すべきものではない。決して慣れて良い事ではない。少女が権力者たちから受けてきたものが、どれだけ尊厳と心を踏みにじる行為なのか。過去の経験から、荒夜はそれが身に沁みるほどよく分かっていた。

 先ほどまで軽口を叩いていた荒夜は、もういなかった。臙脂色の目がぞっとするほど冷え切ったものとなる。

『重要視すべき点は、どこまでこの世界に危機を及ぼすかという事だ』

「……? ただの治癒能力だろ? ソラリス系統ならそこまで珍しくねぇ能力じゃねェか。何でそこまで危険視するんだ」

『さぁな。だが、世界の権力者に次々と所有されてきたという点、そしてテロリストとして名高い“マスターレギオン”に付き従っている点から言って、癒すという能力……それが全てだと結論付けるにはまだ早い。我々はそう見込んでいる』

「……まだ何か、裏がありそうだな」

 荒夜は携帯端末越しに少女を一瞥する。荒夜の視線に気づかず、少女はベンチに大人しく腰掛けていた。

『コウヤ……テンペストとして、貴様に追加の任務を命ずる』

 視線を戻した荒夜は自然と背筋が伸びていた。

『その少女を監視し、能力を突き止めろ。そしてそれがこの世界にとって、我々アメリカにとって不利益なものとなるのなら……』

「“処分”しろ……ってか?」

 荒夜が口の端を吊り上げるように笑うと、マクレーンはこくりと頷く。

『国益のためには、他の何をも替えがたい。最悪の事態が起こってからでは、遅いのだからな。分かっているだろう』

「国益ねぇ……」

 真剣に話すマクレーンを他所に、荒夜はさも興味無さ気に耳の穴を穿っていた。

『それは、アメリカに住む我々を含めた人々の安寧を守るという事でもあるのだぞ』

「Yup! 取り敢えず頭の片隅にでも置いておくよ」

 爪の隙間に入った耳垢を吹いて飛ばす荒夜に、マクレーンは敢えて沈黙を貫いた。

「……何だ。いつものアンタらしくないな。自分の命よりも任務を最優先しろとか、いつも口酸っぱくして言うじゃねェか」

 荒夜が片眉を上げながら言うと、サングラスで隠された目が鋭く光る。

『……貴様がそう言って聞いた試しがあるか』

「ハハッ! 違ェねェ!」

 全く此奴は、とマクレーンは何度目かのため息をつく。

『だが、貴様もあの中東の地獄から生き延びた兵士(ソルジャー)だ。レネゲイドがこの世界に及ぼす影響は、誰よりも知っている筈。頼んだぞ、コウヤ・カミヌイ伍長』

 荒夜が敬礼すると、そこで通信が切れた。真っ暗になった画面を一瞥すると、荒夜は空を見上げる。

「国益最優先ねェ……目先の事ばっか優先して、それで世界がボロボロになってもいいのかね」

 いずれ世界滅ぶぞ、と吐き捨てるように空に向かって呟くと、荒夜は少女の座るベンチに戻っていった。



「お話、終わった?」

 銀髪の少女が小首を傾げながら尋ねると、荒夜はにっかりと笑う。

「おぉ終わった終わった! 待たせて悪かったな」

 少女の目線に合わせるように荒夜がベンチの前で膝を突くと、少女は困ったような表情を見せる。

「外に出たいって言っちゃって、ワガママだったかな……?」

 少女の問いに荒夜は一瞬目が点になるが、少女の不安を吹き飛ばすかのように荒夜は大声で笑ってみせた。

「迷惑なワケあるもんか! ずーっとビルの中にいて、俺も身体が鈍っちまってたトコだったんだ。むしろ声をかけてくれて助かったぜ」

 荒夜が人懐っこい笑みを浮かべながら少女に返事をすると、少女はやっとほっとした表情を見せた。

「……ねぇ。あの人たち、さっきから何してるの?」

 少女が指差した先には、フリスビーやバドミントン等の遊具で楽しそうに遊ぶ子供たちがいた。

「あ?……そりゃ、遊んでるんだろうな」

「何で?」

「何でときたか~……!」

 きょとんとした顔で少女が直ぐに尋ね返す。“遊ぶ”概念すら知らない彼女に、荒夜は素で頭を抱えてしまった。

――そっかァ……遊ぶという事すら今まで知らずに生きてきたのか……。こいつァ難儀だな。

 どうやったら少女に“遊ぶ”=“楽しい”と伝えられるのか。荒夜はいつになく真剣に考えてしまう。

 すると、茂みに挟まっているサッカーボールが荒夜の視界に飛び込んでくる。誰かの忘れ物だろう。荒夜はしめたと言わんばかりに茂みからボールを取り出すと、少女に向かって軽く蹴り上げた。

「ほい、パス!」

「へ、へ……へ⁉」

 しかし、少女はどうすればいいのか分からず、戸惑いながら転がってくるボールを手で受け止めた。

「あぁ、手じゃない手じゃない。足で受け止めるんだ」

「足で……?」

「ほら、こんな風に」

 少女からボールを受け取ると、荒夜は大道芸顔負けのリフティングを目の前でやってみせる。

 荒夜の足技でまるで意思を持ったように宙を舞うボールに、少女は目を輝かせた。

「……今度は、君がやってみな。足で思い切り蹴ってみるんだ」

 荒夜は少女の足元にそっとボールを置く。

「足で……えいっ!」

 少女は意を決したようにボールを蹴り上げると、勢いは弱いものの、ボールはコロコロと前へと転がっていった。

「あ……転がった!」

 蹴って転がったボールを目にし、自分でも出来たんだと少女の顔が明るくなる。自分の蹴ったボールが、前に進んだ。他人にとっては至極当然の事だったが、遊びを知らない少女にとって、それは大きな一歩だった。

「お~! 初めてにしちゃ上出来じゃねェか。すごいすごい! けどスカートじゃちょっと厳しいか……せっかくの可愛い服が汚れちまうしなぁ……」

 何か少女が思い切り楽しめるものはないものか。再び首を捻り始めた荒夜を他所に、少女はボールの転がった先に花壇があるのを見つけた。


 少女はてこてこと花壇の方へ歩いて行く。自身の好奇心の赴くままに行動する姿はまるで子猫か子犬のようで、荒夜は正直見ていて飽きなかった。

「花に興味があるのかい?」

 荒夜が尋ねると、少女はこくこくと何度も頷く。

「ねぇ。この綺麗なのは、何て言うの……?」

 少女に尋ねられ、荒夜は少女と一緒に花壇を覗き込む。

 そこには、一輪の青い花が風で小さく揺れていた。青い5枚の花弁は少しでも触れたら散ってしまいそうで、その儚さにまるで少女の様な印象を受けた。

「何だろうな。この花」

 植物の知識に乏しい荒夜は、携帯端末の植物専用のアプリをダウンロードし、その場で撮影してみせる。

「……お、出た出た。――“ネモフィラ”だそうだよ」

 写真を撮ったと同時に画面に出てきた名前を、荒夜が読み上げた。

「ネモフィラ……ネモフィラ……ふふっ」

 少女は花の名前を反芻すると、どこか嬉しそうな笑みを浮かべる。

「あぁ~! この前テレビの特集に出てた、千葉でめちゃくちゃ咲いてるヤツか」

「ちば?」

 少女が尋ねると、荒夜は海を指し示した。

「海のもっと向こうにある街の名前だ。春になると、その花が原っぱ一面に咲くんだ」

 少女は荒夜の指差した先をじっと見つめる。

「海の向こう……トルコよりも、近い?」

「トルコ? Turkyに行った事があるのかい?」

 尋ねられた少女はこくこくと頷いた。

「いいなぁ~。俺、トルコ行った事ないんだよ~。あっちの方面に行った事はあるけど、トルコは素通りしちまってな」

 そう言いながら、荒夜は戦争で中東に赴いた時の出来事を思い出していた。あの時は空の上からしかトルコを確認できないでいた。

「色んな国に、行った事があるのかい?」

 屈んだ荒夜に尋ねられ、少女は首を捻る。

「う~ん……多分」

 そりゃそうか、と少女の答えに荒夜は苦笑した。

「いいなぁ~、羨ましいな。そこの話も、良かったら聞かせてくれよ」

 荒夜がさり気なく“権力者”について探りを入れてみるが、今まで権力者たちにされてきた酷い事を思い出してしまい、少女の顔が見る見るうちに暗くなっていく。

「あ……嫌な、思い出だったか?」

 それに気がついた荒夜に、少女は遠慮がちだがゆっくりと頷いた。

「あ~、悪い事思い出させちまったな。デリカシーのない悪いお姉ちゃんだ」

 言うと、荒夜は少女の目の前で手を合わせ、頭を下げた。

「謝らせてくれ! 悪かった、この通りだ!」

 少女は、荒夜のどこが悪かったのかと目を瞬かせる。荒夜は別に少女を殴ってもいなければ蹴ってもいない。手すら上げていない荒夜はただ質問しただけで、少女の中では“悪い事”と判別できなかった。

「そうだ! お詫びに、クレープでも奢らせてくれ」

 突然出てきたクレープという聞き慣れない単語に、少女は小首を傾げる。

「くれーぷ……? それは何?」

 興味を示した少女に、荒夜はにんまりと笑ってみせた。

「ん? それはなぁ……」


 荒夜は少女と手を繋ぎながら街道に向かうと、そこには一台のワゴン車が停まっていた。ワゴン車の中から漂ってくる香ばしいほのかな甘い匂いに、何の匂いだろうと少女は鼻をひくつかせる。車の窓から顔を出した店員に何かを受け取った荒夜は、少女が見た事もないものを両手に持っていた。

 それは、肌色の紙のようなものだった。白い紙に包まれた肌色の紙には、ヨーグルトのような白い物や赤い果物が挟まっており、もう片方には黒いソースとスライスされた薄黄色の果実が詰まっていた。

 ほんわりと優しく漂う甘い匂いに食欲を刺激され、少女はごくりと喉を鳴らす。

「ほら、どっちがいい? きっとどっちも美味しいけどな」

「美味しい……?」

 少女はしばらく悩み、赤い果実が入っている方を受け取る。赤い方を受け取ったのは、赤い果実が荒夜の目の色と、昨晩助けてくれた少女のマントの色に似ていたからだった。

 しかし、受け取ったはいいもののどうすれば良いのか分からず、少女はまだ温かい肌色の巻き紙と荒夜の顔を交互に見比べる。

 少女の視線に気付いた荒夜は少女の目の前で大きな口を開け、がぶりと食いついてみせた。

「……ん! 美味しいな。食べてみな」

にんまりと笑う荒夜に倣って、少女は大きな口を開けながらそれを頬張ってみる。瞬間、蕩けるような甘さと清涼感のある甘味と微かな酸味が、口の中いっぱいに広がっていった。

 薄い肌色の紙もほんのりと甘くモチモチして食べられる事に驚くが、何よりこの白くて柔らかい物が、言葉に出来ないほどひたすら美味で甘いのだ。多分幸せというものが形になって食べられるのなら、きっとこんな形をしている筈だ。少女は心の底からそう思った。

「美味しい……美味しい!」

 また一つ新しい言葉と世界を知り、少女の青い瞳がきらりと輝く。少女に新しい世界の扉を教えた張本人は、少女の反応を見て微笑んでみせた。

「そう! これが“美味しい”だ」

 そう言いつつ、荒夜も生地から溢れたクリームを掬って舐めていた。

――アリーには悪いなァ……仕事中にこんな美味いもの食っちまって。

 荒夜は苦笑しながら脳裏に浮かぶ同居人の少女アリーに心の中で謝罪する。仕事が立て込んでいるせいで、ここ数日まともに自宅に帰れていない。一仕事終わったら、このクレープをアリーにも奢ってやろうと誓った荒夜だった。

「こんな美味しいものを食べて……いいの?」

 余程気に入ったのだろう。少女が惜しむようにゆっくりとクレープを食べるが、荒夜は気にもせずぱくぱくと口の中に放り込んでいく。

「ん? うん……いいんじゃね?」

 あっという間にクレープを平らげてしまった荒夜は、手についた生クリームを舐め取っていた。

「代わりに……何かした方がいいの?」

「おいちょっと待て。どんな壮絶な人生送って来たんだ」

 こんなに美味しい物を無料で食べていいのだろうか。酷く不安げな顔をする少女に、荒夜はついツッコミを入れてしまう。

「ん~、いいんだよ。俺がさっき昔の嫌な事を思い出させるなんて悪い事したんだから、それでオアイコだ」

 それのどこが悪い事なのだろうか。少女はきょとんとした顔で荒夜の顔をまじまじと見る。


「荒夜は……変な人」

 それが荒夜の第一印象だった。見た目も口調も男のようなのに、姉のように少女にとても優しくしてくれる。少女の心について、首を捻りながら一生懸命考えてくれる。自分の主張を押し付けてくる大人たちとは全然違う。少女が今まで会った事のない“変な人”だった。

「へへっ。よく言われる」

 失礼な事を言われたにも関わらず、嫌な顔一つせずににっかりと笑う荒夜はむしろ嬉しそうだった。やっぱり変な人だ。


 やっとクレープを食べ終えた少女は、ポケットから一冊の赤い手帳を取り出し、何かを熱心に書き込み出した。荒夜は興味本位でそれを覗き込もうとするが、はっと思いとどまり視線を上に逸らす。先日、アリーの手帳を覗き込んでこってり怒られたばかりだったのだ。

 荒夜が夕闇に染まっていく空を見ていると、少女は書き終えた手帳をポケットにしまった。

「ありがとう、荒夜」

 背の高い荒夜を見上げながら、少女はぺこりと頭を下げる。

「It’s my pleasure」

 荒夜がウィンクをしながら言った言葉に、少女はきょとんとした顔で首を傾げた。

「“それは私の喜びです”って言ったのさ。お嬢ちゃんが喜んでくれるのが、今の俺には一番の喜びだ」

「何で? 私が喜んでるだけで、荒夜の喜びじゃないのに」

 少女が聞くと、荒夜は少女の前で膝を突く。

「もし俺がお嬢ちゃんの立場だったら、きっとこんな事をやってもらったら嬉しいと思ったからな。良い事をすると気持ちがいいってモンさ」

 むしろありがとな、と荒夜は少女の頭を優しく撫でた。

「そんな考え方あるんだ……知らなかった」

 少女が目を瞬かせていると、荒夜が自分の腹を撫で始める。

「あ~何か喋ってたら腹減ってきたな。もう一個クレープ食わね?」

 困ったように腹を擦る荒夜に、少女は思わず吹き出してしまう。

「私はもう……お腹いっぱい」

「そっか。じゃあ今度はアイス食うか!」

 全く懲りてない荒夜に、流石に食べ過ぎだと少女はふふっと笑う。

「ありがとう、荒夜。すごく楽しい」

 少女は屈託のない笑みでそう告げると、荒夜はにっかりと笑ってみせた。


「そりゃ何よりの喜びだ」

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