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 リアムとレオンがバタバタと行動を始め、ルシウスは国王の元へ行こうと踵を返す。


 その時会場の隅から怒号が上がった。


「ーっまたあの魔女か!!!!」


 ーあの魔女?


 ルシウスは進行方向を変え怒号を上げた人物を目指す。


 ルシウスの顔を見たローブを纏った人物は顔を一気に青ざめさせた。


「こっこれは殿下、今宵はお招き頂き」


「挨拶はいらない。

 揺れの原因を知っているのか?」


 ルシウスが問うとローブの集団は視線を泳がせ口をぱくぱくと金魚の様に動かした後、諦めた様に項垂れた。


「…はい殿下。

 我々魔術師会の者による揺れでございます。」


「一体誰なんだ?」


 ローブを着た人物はルシウスの問いに答える前に耳に手を当てた。


 耳に通信機を付けているらしい。


 暫く黙って通信機の音を聞いた後、深深と頭を下げた。


「…原因は我々魔術師会所属キャロル・ワインストでございます。

 今捕らえたとの報告がございました。

 この度は大変申し訳ございません。」


「キャロル・ワインスト?

 その者に合わせてくれるかい。

 王家主催の夜会をぶち壊したんだ。

 こちらで事情を伺いたい。」


「はっかしこまりました。

 …そのままホールに連れて来てくれ。

 魔封じはいい。

 特大の物は教会にしかないから後程取りに行かせる。」


 特大の魔封じが必要な人物など王家にしかいないはずだがとルシウスは首を傾げる。


 そしてルシウスはキャロル・ワインストという名前にも引っかかった。


 どこかで見た名前だ。


 一体どこだったかと必死で記憶を探る。


 頭を回転させるルシウスの元へバタバタとレオンが戻って来た。


「殿下、原因はまだ分かんないけどとりあえず他国からの攻撃やクーデターの形跡はない。」


「ありがとうレオン。

 今犯人は分かったから大丈夫だよ。」


「えっ誰なんだ?」


「魔術師会のキャロル・ワインストらしい。

 何処かで名前を見た気がするんだけど…。」


「キャロル・ワインスト?

 それならこの前見合いをすっぽかした令嬢だな。」


 レオンに言われルシウスは頷いた。


 確かに見たはずだ。


 結局見合いさえ嫌なら会わなくて良いだろうと会わなかった令嬢の名前ではないか。


 しかし何故こんな事件を起こしたのかさっぱり分からないが。


「今捕まえてこちらに連れて来て貰ってるからリアムにも誘導が終わり次第戻る様伝えてくれるかい?」


「分かった!

 しかし幻影の塔の魔女に会えるとかワクワクするな!」

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