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 5人とダンスを終え令嬢達に囲まれ言葉を交わす。


 笑顔で会話をしながらルシウスは冷め切った頭でぼんやりと考えていた。


 ー別にダンスが上手くなくて良い。


 ー別に社交界で一目置かれていなくて良い。


 ー別に流行の最先端などでなくて良い。


 ー別に顔が綺麗でなくても良い。


 ー別に豊満な身体でなくても良い。


 ただ話していて興味が湧く相手が良いだけだ。


 なのに何故こうも皆の会話がつまらないと感じてしまうのだろう。


 当たり前の会話だからだろうか?


 ドレスの色や形など正直どうでも良い。


 最近社交界を賑わせている令嬢の新しい恋人の噂もどうでも良い。


 じゃあどんな会話なら興味を持てるのかと言われると困ってしまうが。


 ルシウスは令嬢達の視線が一瞬逸れた隙に苦笑を浮かべる。


 自分の予想外の行動をしてくれる令嬢が良いと言ったらリアムやレオンは何と言うだろうか。


 多分呆れた様な顔で正気かと言われるだろう。


 そんな奴に王妃などとんでもないと自分でも分かっているのだ。


「…分かってるんだけどね。」


「殿下?

 何か仰いました?」


「いや、ごめんね。

 何でもないよ。」


 令嬢に訝しげな顔をされルシウスはニコリと笑顔を貼り付けた。


 ルシウスの笑顔に令嬢達は皆頬を紅く染める。


 皆同じだ。


 同じじゃない物が欲しいと思う自分が異常なのだ。


 ルシウスは心の中で自虐的に笑った。


「えっとそれで何だっけ?

 その令嬢の新しい恋人が公爵家の」


 そう会話を続けようとした時。


 ホールを地鳴りと共に物凄い揺れが襲った。


 ガラスが割れシャンデリアが大きく揺れる。


 ルシウスは慌てて目の前で転びかけた令嬢を支えた。


 並んでいた料理や酒がテーブルから落ち散乱する。


 地震と言う単語が浮かぶがマリアヌ国は地震が起こる国ではない。


 ならば一体何だと必死で頭を巡らせる。


 揺れの中リアムがルシウスの頭を庇うように覆い被さってきた。


 2分程続いた揺れが漸く収まる。


「殿下!

 ご無事ですか?!」


「あぁ、リアムも大丈夫だった?

 えぇっとフワリー嬢も怪我はないかい?」


「はっはい!」


 ルシウスに支えられていたフワリー嬢が頬を染めて頷く。


 ルシウスはフワリー嬢から手を離し立ち上がった。


「リアム、とりあえず客人達を誘導して帰してくれるかい?」


「かしこまりました。」


「レオンは揺れの原因を調べてくれる?

 攻撃なら軍に指示を出すから。」


「分かった!」

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