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 キャロルは目を見開いた。


 ハリー第二王子の継承権剥奪は予想内だが幽閉となるなんて。


 キャロルはばっとハリーに視線を向けるがハリーは微動だにしていない。


 分かっていたと言うのだろうか。


 生涯幽閉と理解していて協力してくれたのか。


「後は聖女様も聖女の名を返し平民へ下る事になるのが妥当となるかと。」


 キャロルは歯をギリッと食いしばる。


 自分がした事の影響を甘く見ていたのかもしれない。


 申し訳なさで顔が上げられない。


 宰相の答えに国王は頷いた。


「法に照らし合わせればそうなるであろうな。」


「陛下!

 私の申し開きも聞かず判断なさると仰るのですか!?

 こんな子供1人の言葉を信じ私を疑うと!?

 長年陛下をお慕いし仕えた私よりもこの悪評高い子供を信用なさるのですか?!」


 王妃が激昂し国王に縋り付く。


 だが国王は掌を組み顎を乗せ無言で目を閉じている。


 国王は何を考えているのだろう。


 ふてぶてしいハリーと考え込む国王、ヒステリックに叫ぶ王妃で王族席は中々カオスだ。


 その時幻覚魔術にかかっているはずの貴族席から1本手が上がった。


 ガタンと音を立てて男性が立ち上がる。


「…ワインスト侯爵家当主ジルグ・ワインストです。

 発言をお許し願いたい。」


「…お…父様…?」


 キャロルは思わず漏れた声に慌てて自分の口を塞ぐ。


 数年ぶりに見た父親は年齢よりも老けて見え相変わらず恐ろしい程眼光が冷たく鋭い。


 何年も聞いてなかった父親の声にキャロルは体が固まるのが分かった。


 何を言われるのだろう。


 アンジェリカに言われた父親は成人したらキャロルをワインスト家から除籍するつもりだという言葉が蘇る。


 また否定されるのだろうか。


「構わん。

 発言を許可しよう。」


「ありがとうございます陛下。」


 父親は深々と頭を下げ口を開く。


「お尋ね申し上げたいのですがいつ私の娘はワインスト侯爵家より外れたのでございましょうか。

 深夜陛下からの文は受け取りましたが私は娘と話してからでないと了承しかねると返答したはずにございますが。」


 キャロルは目を見開いたまま父親から国王に視線を移した。


 一体どういう事なのだろう。


 国王が唸りながら言葉を返す。


「キャロル嬢本人の希望とあり訴えを聞いて除籍を願い出た理由も貴殿とて分かったであろう。

 安心するが良い。

 貴殿の返答をふまえまだ正式に除籍は受理されておらぬ。」


「えっ?」


 国王の返事も意味が分からない。

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