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今の発言を聞く限りキャロルはまだワインスト家から抜けていないという事になる。
まずい。
被害が一族郎党に及んでしまう。
キャロルは顔を青ざめさせるが父親は国王を鋭く睨み付けていた。
いや睨んでいるわけではなく元々目付きが悪いだけかもしれないが傍目には睨んでいる様にしか見えない。
「…ならば娘はまだワインスト侯爵家に籍があるという事でございますね?」
「ああその通りだ。」
「であれば娘は未成人であり父親である私の教育不足及び管理不行き届きとし、ジルグ・ワインストの処刑と引き換えに娘の減刑をお願い致します。」
父親はそう言うと頭を深々と下げた。
キャロルの思考が真っ白になる。
何故だ。
彼こそ自分を除籍する程憎んでいたはずだろう。
なのに何故除籍を拒否し自分の首まで差し出すと言うのだ。
父親は頭を下げたまま続ける。
「……私は妻亡き後大人や男を恐怖する様になってしまった娘から離れる事しか出来なかった親でございます。
娘が母親を殺したと憎む息子を戒める事も出来ぬ親でございます。
娘の悪評は全て私の責任にございます。
娘自身が魔術師として実力で得た爵位を名乗りたいのであれば成人後除籍も構わぬ所存でありました。
だがそれが私共に迷惑をかけぬ為であるのならば、私は妻さえ守れない男でありますが、最期位父親らしく娘の未来を守りたいのでございます。
…どうか恩情をお願い致します。」
父親は顔を上げない。
キャロルも俯いた顔を上げられなかった。
馬鹿だ。
本当に馬鹿だ。
なんでこんなにみんな馬鹿なんだ。
唇がブルブルと震える。
みんななんで自分を犠牲にしようとするのだ。
そんな物いらないのに。
もっとみんなが汚ければ素直に憎めるのに。
何故憎めなくするのだ。
何故愛情を伝えてくるのだ。
ずっと自分にはそんな物無縁だと思っていたのに。
死を覚悟して護りたいと思っているのにどうして素直に護られてくれないのだ。
しばらく黙っていた国王が背もたれに凭れかかる。
「……ワインスト侯、貴殿の願いは分かった。
だがそれは聞き入れられぬ。」
「何故ですか!!?」
父親が勢い良く顔を上げ噛み付きそうな顔で国王に食ってかかる。
そんな父親に国王は笑みを返した。
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