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 ルシウスが羊皮紙を机に置き手を口に当て悩み込んでいる。


 眉間のシワが谷底レベルに深い。


 キャロルは机に置かれた羊皮紙を手に取った。


 それは王妃に当てて書かれたと思われる伝言の様な物だった。


「『本日エバンネ王妃様の願われた時渡りの準備整う也。

 日時の指定と渡る者のお選びをされたし。 』

 …エバンネ?」


「お嬢さん王妃様のお名前も知らないんすか?

 あと突っ込む所間違いすぎっす。」


「いや分かってんだけどね。

 時渡りって何だっけ?」


「…シャルドネ王国に古くから伝わる禁術だよ。

 過去に渡る事が出来る魔術だったはずだ。

 伝説みたいな物だと思ってたけどね。

 これに当てた返事は見つかってないのかい?

 それかこの伝言の書かれた日付けは?」


「両方見つかってないんすよね。

 だからいつ、何をしに時渡りを行って何を変えたのかは分かってないっす。

 でもこれが見つかった事に王妃様が気付いてまた時渡りをされて無かった事にされると困るんでとりあえず持って来たんすよ。

 まっ時渡りをされたら多分これを見つけた記憶もなくなると思うんで悪あがきかもしれないんすけどね。」


「…いや、ありがとう。

 本当に助かるよ。

 これは受け取っておいて良いの?」


「ええ。

 ではまた来週。

 突然失礼してすいませんしたー。」


 赤がひらりと窓から消えるがルシウスは前を見据えたまま見ようとしない。


 考え込んでいるのだろう。


「過去に渡って何をしたんですかね。」


「…さあ。

 それが分かれば苦労しないんだけどね。」


「でも何か引っかかるんですよね。」


「何が引っかかるんだい?」


 キャロルは羊皮紙を取り出しペンを走らせる。


「えっとですね、時渡りを行った王妃をAとしてですよ?

 この伝言を見る限り渡ったのはAではなく別の誰かなわけですよね。

 そんで別の誰かがAの希望通り過去を変えたとしてです。

 変わった過去の世界の王妃をBとするとBは変える必要がないのだから時渡りをする事はないと思うんですよ。」


「…確かにそうだね。

 言いたい事はなんとなく分かるよ。」


「でもこの羊皮紙には時渡りをしたいと王妃が願ったとあります。

 変わったはずの過去のBまで時渡りをしようとしてるっておかしくないですか?」


「…Aが過去を変えたけどBにとって変わった事でまた不都合が起きたか。

 もしくは時渡りを失敗したか。」

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