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 ルシウスが髪をぐしゃぐしゃとかきながらブツブツと呟いている。


「それとも時渡り自体は成功したけれど王妃にとって不都合な過去が変えられなかった?

 …ダメだ。

 全然分からない。」


 キャロルも浮かんでいる月を見ながら考える。


 過去に渡って好きな様に変えたのならば未来も変わり王妃は時渡りをしないだろう。


 なのに時渡りをした跡が残っている。


 一体何故だ。


 結局時渡りをしなかったのか?


 いや、未確定ではあるが前王妃を殺害したり聖女や自分に禁術を使う位だ。


 性格的に踏みとどまったりしないだろう。


 むしろ成功するまでしつこく行いそうな物だが。


 失敗したとしても即もう1回と言ってもおかしくない気がする。


 自分の望む未来になるまで何度だって繰り返すんじゃないだろうか。


「…何で望む未来になる前に諦めたんですかね?」


「もしかしたら諦めざるを得なかったのかもしれない。

 ほら、ここを見て。」


 ルシウスが赤の渡した書物を開いてキャロルに見せる。


『 時渡りを行えるのは時を見渡せる白き聖者のみである。

 ただその白き聖者であれど1度しか使う事は出来ないとされている。』


「もう1度渡りたくても渡れなくて諦めた可能性があるよね。

 アルビノを隣国が欲しがってるのは知ってたけどまさかこの為に…?」


「船で言ってた人身売買ですか?」


 キャロルの問いにルシウスは頷く。


「…だとしたらまずいな。」


「え?」


「いまうちの国には純白の巫女がいる。」


 ルシウスの言葉にキャロルはひゅっと息を呑む。


 渡る条件を王妃は満たせてしまう可能性があるではないか。


「でもそれなら王妃様なら既に行っているんじゃ?」


「…この禁術はシャルドネ王国古来の物だ。

 うちの魔術師でやり方を知る者はいない。

 シャルドネ王国から魔術師を呼び寄せようにも王宮内のしかも教会に入れるのは一苦労だ。

 …あともし王妃が召喚術を行ったのなら『聖女降臨 』を告げた純白の巫女に時を見る事は出来ないと思ったとも考えられる。」


「あっそっか。

 王妃様は聖女が偽物だって知ってるんですもんね。」


 自分が聖女の偽物を召喚したからこそ時を見る力がないと判断したのだろう。


 本当に時が見渡せるならば王妃様が召喚した偽物だと分からなければおかしい。


 ならば危ない橋を渡ってまで時渡りをしたりはするまい。


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