218

 今夜もルシウスは塔にいた。


 3日に1度の塔で寝る日である。


 キャロルも何となく把握している為扉を開ける音がしても構わず魔道具開発に勤しんでいた。


「今度は何を作ってるんだい?」


「殿下が考案された王都に魔力供給をして街灯や蝋燭の変わりになる灯りを通すって言う事業の試作品です。」


「あっキャロルが担当してくれてるんだ。

 ありがとう。

 出来そうかい?」


「まあボチボチですね。

 街全体に魔法陣を敷く事で住民から少しずつ魔力を提供して貰う事でエネルギー自体は確保出来そうなんですが、調整が難しいです。

 というか魔力球って灯り作った人もびっくりしてましたよ。

 発明したばかりなのに即王都中で使うのかって。」


「なかなか良い物だったからね。

 それに灯りによる火事も減るだろうし。」


「その即断即決は嫌いじゃないですよ。

 ただ事業がデカすぎて手に持て余し気味ですが。」


「キャロルなら出来るって判断されたんでしょう?

 魔道列車の時もキャロルも携わってたって言ってたし凄いよね。」


「私が選ばれるのは魔力量が多い分失敗を繰り返しても魔力切れを起こしにくいからですけどね。」


「それも一種の才能でしょ?」


 そう言いつつルシウスはローテーブルに書類を置きレオンのクッションに座る。


 奴が執務を始めるのもいつもの事だ。


「才能も実力だよ。

 誇れば良い。」


「私より多い殿下に誇れって言われても微妙ですけどね。」


「まっその通りっすね。」


「…ん?」


 キャロルが顔を上げると窓に赤が座っていた。


 いつからいた。


 というか約束は来週のはずだ。


 こんな事今まで1度もない。


「あれ?

 赤じゃん。

 どうしたの?」


「ちょっと伝えたい事が見つかったんすよね。

 んで覗いて見たら二人ともいたんでちょうど良いかと思いまして。」


「伝えたい事?」


 キャロルが首を傾げると赤が懐から羊皮紙と書物を取り出した。


「ご依頼人は殿下なんでこれは殿下にお渡ししますね。

 ちょっと出てきた物が物なんで変わる前に渡したいと思ったんすよ。

 杞憂だといいんすけど。」


「変わる前?

 どういう事?」


 ルシウスが受け取った羊皮紙に目を通す。


 一瞬目を見開いたかと思うと今度は眉間に深過ぎる皺を刻んでいた。


 羊皮紙を握る手に力が入っているのかどんどん皺になってしまっている。


 一体何だと言うのだ。


 気になって仕方がない。

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