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 笑いの止まらないルシウスを横目にキャロルは麦酒を煽る。


 いい加減笑い過ぎじゃないだろうか。


「はー笑った笑った。

 そう言えばさキャロル。

 私キャロルにずっと聞きたかった事があるんだ。」


「なんです?」


「もし呪いが消えて筆頭魔術師になったら何がしたいの?」


「…そうですねえ。」


 キャロルは麦酒をグイッと煽った。


 酔わなきゃ話せそうもない。


「私呪いが消えたら筆頭魔術師を目指さなくても良くなるんですよね。」


「…え?」


「私が魔術師会にいるのは正直そうするしかなかったからと言いますか。

 魔力の暴走を起こし禁術をかけられた言わば爆弾扱いなんですよね。

 だから監視も兼ねて魔術師会に最初入れられたんです。

 塔に住んでいるのも似たような理由ですが。

 筆頭魔術師候補というのも魔術師会にいて実力があるから絶対なれもしないのに毎回魔道具だけ出品させられてるんです。

 別に本当は筆頭魔術師になんてなりたくはないんですよ。」


「…でもきっと呪いが解ければ筆頭魔術師になると思うよ。

 それはいいのかい?」


 キャロルは面倒になり瓶に口を付けて飲み始める。


 良い感じだ。


 程よい位に酔いが回る。


「まあなって悪い物じゃないですからね。

 筆頭魔術師になると年に1回の招集や非常時以外は自由に研究に打ち込めるんです。

 研究をする場所も自由。

 筆頭魔術師の名前があればどんなダンジョンや遺跡にだって入れる。

 私は色んな所に行ってみたいんです。

 今は私爆弾みたいな物なんで国外には行けないんですが呪いが解けたらどこへでも行ける。

 だから別に筆頭魔術師になろうがなるまいが私はこの塔じゃないどこかへ行って暮らしてみたいんだと思います。

 …それが私の夢ですね。」


「そうなんだ…。」


「でも殿下達のお陰で塔に住んでいても国外に出られなくても楽しい場所や綺麗な物は沢山あるって知れましたから、最近は正直この塔の暮らしも気に入ってるんですよ。

 だから正直呪いが解けたらどうしたいって希望があまりなくなってきてるんですよね。

 今のままで十分楽しいんだと思います。

 癪ですけどね。」


 ルシウスが困った様な笑顔でキャロルの頭を撫でる。


「…呪いが解けたらみんなで国外の色んな所に行ってみようか。

 色んな物食べて色んな景色を見て。

 ただお手付きになってるから塔には帰らなきゃだけどね。」


「そうですね。

 …それはとても楽しそうです。」







 未来の事を話すなんて今まで絶対にしなかったのに何故してしまったのかキャロルには分からない。


 でも想像した未来は暖かくて優しくて。


 今まで見たどんな夢よりも輝いていた。


 ルシウスの行った海外の話を聞き思いを馳せる。


 いつか行こうと言うルシウスの言葉に素直に頷いていた。


 きっと酔いのせいだったのだ。


 そんな想像や言葉は自分を苦しめるだけだと嫌と言う程知っていたはずなのに。


 この時のキャロルは忘れてしまっていた。

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